第6話
「今日は楽しかったね。また、今度、会おうね」
あの日の夜、美咲から送られてきたメッセージに私は「うん。また、あのカフェで会おう」と返した。だけど美咲からの返事は返ってこなかった。その時の私はただ、私との約束は美咲の中で霞のように消えてしまったのだと思いこんでいた。そして毎日の生活と仕事の喧騒の中で、私はいつの間にか美咲との約束は忘れていった。霞のように消えてしまっていたのは私の方だった。
私と美咲の共通の友人に、村田真里という女性がいた。
真里も私たちと同じ大学に通っていたので、大学時代の友人ということになる。美咲と真里は同じ学科に通っていたこともあって仲が良かったが、私は真里とはそれほど仲が良いという訳でもなかった。私と美咲と一緒にいる中で、ときどき真里もその輪に加わった。大学時代の私と真里は、友達の振りをして美咲の前に立っていた。
その真里から突然、連絡が入ったのだ。
大学時代も滅多に連絡を取ることもなかったし、大学を卒業してからもなかった。だから、突然舞い込んだ真里からの連絡に私は驚いた。そしてその連絡の内容に、私はそれ以上に驚くことになる。
「美咲、亡くなったって知ってる?」
電話口の真里は、突然そのようなことを言った。
私は一瞬、真里が何を言っているのかわからなかった。そして次の瞬間には、真里が悪い冗談を言っているのだと思った。だけど、電話口の真里の沈黙が、それが嘘でも冗談でもないことを物語っていた。
「亡くなった……?」
私は呟いていた。
そのつぶやきで魔法が解けたかのように、真里はどこか冷たい口調で話しだした。
「一ヶ月前に、美咲、亡くなったんだよ」
一ヶ月前……。
ちょうど、下北沢の街角で美咲と偶然出会った頃だ。
「美咲の通夜に、由貴、来なかったから……。だからもしかしたら、まだ知らないのかと思って……」
行けるわけがない。だって、知らなかったのだから。
でも、私はそれを誰に言い訳すればいいのだろう。わからなかった。
「なんで……? なんで、美咲は亡くなったの?」
ただ、その言葉だけを吐き出していた。




