フォルクス
横浜帰宅21:40
私は信じている
この苦しみが 永遠でないことを
今は大きな 喜びへ向けた
過渡期である ということを
痛みを声にしたい
商業にもならない メディアにも出ない
カッコつけることもせず
情けないほどに たった一つの人間として
過去にすがっている
栄光は自尊心として 傷は言い訳として
みじめだ、未練がましい、身の程を知る
身体は いちばんラクなほうへ
それは罪か?
(2ページ目)
生きててよかった! と、その次の日には
死んどきゃよかった、
俺の魂は 死と生を
ぐるぐると さまよっている
パンを忘れた ヘンゼルとグレーテルのようだ
のほほんと 愛されるヤツが嫌いだ
俺は隣で這いつくばって 靴をなめているのに
のほほんと生きて 愛される
「術」を知っているヤツが嫌いだ
(3ページ目)
不幸は 慢性的で
幸せは くしゃみする間に
この病気は いつ治るのですか
周期的に 絶望
性の匂いのする女に 憧れている
性の匂いのする女に なってみたい どうしようもなく
性の匂いのする女は 生きる価値が高い
完璧主義者の私が どうしても
できないことがある
自殺ってのは完璧にやろうとすると
これは中々 難しいんだな
試してみる?
僕の気分を知りたいならば
首吊って 腕切って
顎が垂れるまで 無表情でいろ
フォルクス
人は1つのことにしか集中できない、というのは
なるほど その通りなんだな
私が湧き上がるこの思いを 書き留めようと
ノートを吟味していると
その端から みるみるほつれて
やがて跡かたもなく 消え失せてしまった
思いは瞬間に生きている
私はその声を とがらせた神経で
傾聴せねばなるまい
宙に舞う蛍を この手の内に
そっと優しく 包み込むように
(2ページ目)
遠く 電車の音に
ハッとして 首の縄を解いた
己の手は まるで無意識で
眼の奥で ちろちろと明滅する
赤い小さな 粒子が
やがて根をはり 散開して
繊維の如く
顎は 淋巴液を吐き出すように
四肢は 血流を忘れたように
歯茎は 奥歯から抜け落つように
世界で一番 冷静だった
耳に 電車を残したまま
(3ページ目)
「才能」とよばれて 得意げになって
中途半端の オチコボレがいる
(4ページ目)(5ページ目)
他人の願いを叶える前に
自分の願いを聞いて
そうでなければ
互いの為にも ならない
荒れ果てた 自己犠牲
その先にあるのは
呆れ返る程の 自己弁護
行き過ぎた罪悪感は 欺瞞に飾られた 自己愛
情けは人の為ならず
自分に優しくない、ということは
他者に迷惑をかける
傷つけるのと同様
人に優しく、自分に厳しく
そんなことは 神でも不可能だ
「優しい」と「厳しい」の天秤に
「自己」と「他者」の 区別は無い
他者と一体になってはならない
人は誰しもが“孤独である”という
共通点によって つながった
別個の存在
それを嘆くのさえ 自由
恐れることが 愚かだと
言える程 円熟した者を
見たことがない