東日本
二人はどれほど電車に乗っていただろうか?
どちらも興奮剤の副作用で眠ったしまっていた。
「起きてくださーい。」
「んー、嫌な気持ちで起きるの今日二回目、参っちゃうわな。」
目を覚まし、窓を不意に見た22012は言葉も出なかった。そこはきっと、描くとしたらクレヨンを使うだろう。荒々しく、雑然としている風景によく似合っている。
「おっと、グロテスクなんだろうけど原型がなさ過ぎてわかんないね、あとここどこ?大分なんも建物ないけど?」
「ここ、新宿です。」
「は?これはものすごいねえ。」
二人は車両から降り、大勢の軍人の背中をじっと眺めながら、お互い言ってはいないがとてつもない恐怖心を持っているのだろうと察していた。二人は興奮剤のせいか、すでに謎の高揚感も同時に兼ね備えていた。
2,3分歩くと大きな穴が出てきた。が、それは穴ではない。周りがあまりにも雑然としていて、大勢の光栄兵たちが努力してきれいにした空間がとてつもなく異質に見えた。そしてその地面には、見慣れたものだった、そこには明らかに弾丸の痕がある。二人はここで殺し合いでも起きたのかと考えたが、あまりにも弾丸の痕が多すぎる。そんなに多くの日本人が銃を持っているわけがない。テロか?とも考えたが、結果西日本大日本軍の上層部が導き出した答えは、東日本大日本軍による大規模な発砲であった。またそれはその場にいた人間が数分考えて導き出した全員共通の考えであることは間違いなかった。
「これはまあ、もちろん緊急事態なんですが、まったく理由がわかんないですね。こんな大都会のど真ん中で数キロ先の地面が見えるほどの大規模な建物の破壊。そしてその破壊された建物の原型すらもなく瓦礫のようなものばかり。そして生臭い、人間が確実にそこで死んだというのはわかりますがもはやそれが実感できないほどのめちゃくちゃ具合。」
「ほんとなんなんだこれ。」
二人が疑問を投げあう中、一番注目されやすい高い瓦礫の上に、一人の男性と横に座っている女性がいた。
「なにごとかねえ」
そういった次の瞬間、耳に半端ない大きな音が入ってきた。それは銃声だった。間違いなく。
ただそれは、人間の銃から出る音ではない、そう直感した。
その音が鳴り、焦りだしてガヤガヤしだした軍人たちに対し上に立っていた男が喋り始めた。
「皆、静かに。かなり恐怖心が心を蝕んできている、私もね。ただ、今起きていることで、今時点でわかっていることを説明する。まず、この弾丸の痕は、東日本大日本軍の発砲による物ではないということが判明した。静かに!そう判断した根拠としては今確認した痕すべてが大日本軍が利用している弾丸ではないものであった。そして、その弾丸の痕をつけたもの、弾丸本体だが、今のところ一つも確認できていない。そしてそれ以外に具体的にわかっていることはない。」