第四十九話 最強の逸話を持つ格闘家
エウロンは起爆の力を使い、攻撃を更に加速させていく。
ワシはその様子を見ながら、爆風で阻まれる視界の中で赤き闘神の狙いや癖を探す。
このエウロンという男、起爆の力でほぼ強引に主導権を奪いにきている。
なかなか厄介な攻めだ。
しかし、攻撃を見ていると自ずと弱点も見えてくる。
「どうした、モンズ!!!
攻撃の手が緩んでないか!?」
明確に何かを狙っている。
おそらく、ワシの攻撃を誘導した上で有効打となる何かを当てたいのだろう。
おそらく、十中八九の確率でカウンターだ。
なら、ワシのカウンターにカウンターを合わせてくるかもしれん。
誘いが上手い男だ、このエウロンというのは。
「露骨に手数が減っとるのう?
お前さん、何を警戒しとるんじゃ?」
「それはこっちのセリフだ。
モンズ、お前言ったよな?
かかってこいと......!
大口を叩いておいてそれか?」
「何、今に分かる。
お前さんがやりたいこと、ワシが封じてやるのさ......!」
エウロンはちっと舌打ちをし、攻撃のプランを変える。
モンズが自分の狙いに気づいたのだと読んだ上で、モンズに主導権を渡さない狙いか、ヒットアンドアウェイを心掛ける。
「すごい、攻撃と守備が織り混ざってる.......!
なんて綺麗な出入りなんだ......!」
ウリムもまた、エウロンの技術に心を打たれる。
エウロンの戦闘技術はすさまじい。
状況に応じて的確かつ瞬時に戦術を変えている。
高い知能と戦闘技能により、一手一手の読み合いが高次元のものへと変貌している。
久々に心が躍る攻防だ。
「なかなか崩れないな。
モンズ、本当にどうした?
それがアンタの戦い方か、モンズ?」
「挑発は無駄じゃよ?
ワシはお前さんの出方を見ておる。
いくら爆風を重ねたところでワシへの有効打にはならん。
お前さんの内面はジリジリ削られるだけじゃよ......!」
実際、エウロンはワシの大剣、そのパワーと速度、間合いを警戒し近接を徹底的に避けている傾向がある。
無論、打ち合う時は打ち合うようだが、近接を嫌がってるのは明白だ。
ならば、一気にプレッシャーをかけにいくのが本流、ヤツの根幹を崩す主流だ.......!
ワシはエウロンの右肩が下がるタイミングを見計らい、一気に間合いを詰める。
エウロンはタイミングよく切り出されたワシめがけて爆風をお見舞いする。
ワシは真正面から爆風に直撃。
エウロンは焦りからか防御の構えを取り、ディフェンスに徹する姿勢を取る。
が.......すでに正面にはワシの姿はなく、エウロンはワシの居場所を血眼になって探した。
「消えた......!?
一体どこに!?」
その時だった。
ワシの剣がエウロンの真上から降ってきたのは。
「うおっと!?」
ワシは罠を仕掛けていた。
大剣を上空から放り投げることで、相手の回避、もしくは起爆による視界の遮断を狙ったのだ。
エウロンはしまったという表情で周りを見渡す。
背後には拳を握り打ち込む準備を整えていたワシがすでに待機している状況だった。
ワシはこれまで培ってきた拳の真髄をエウロンにお見舞いする。
「暗殺拳......!」
穿たれるエウロンの上半身。
エウロンは悶絶する痛みを受け、森の中央に倒れ込んでしまう。
「勝負あり。
手負いとは思えん動きじゃった」
ワシはエウロンは素直に賞賛する。
そしてウリムもまた、ワシとエウロンの攻防にとてつもないほどの関心を寄せた。
「な、なんて戦い......なんて高レベルなものなんだ......!
あの赤き闘神が敗れるなんて、モンズさんって一体.......」
「さあ、約束じゃエウロン。
エリィ・スケラーについて、ワシらに話してくれ......!」
エウロンは少しの回復時間を設け、木の幹に背中を預けて休みを取る。
そんな最中、エウロンはとある一つの疑惑について脳裏によぎったことをワシはと伝えた。
「モンズ、アンタもしや、結構名のある武人なのか?
その戦闘力、技術、パワー、何もかもが超一流だ。
アンタみたいな戦士、今まで戦ったことがないよ」
「お前さんこそ、手負いとは思えんレベルの攻防じゃ。
もし次があれば、完全な状態のお前さんと戦いたいわい」
「いいから、答えてくれ。
アンタ、ナニモンだ?
どう考えても、アンタの強さは普通じゃない。
何か、特別な武道をやってたとか、
そうじゃないと説明がつかない、その強さ......!」
「ワシのことが知りたいのか?」
「ああ。
無理にとは言わないが、エリィ・スケラーの話とは別件で教えてくれ。
アンタがなぜそんなに強いか、同じ武人として知らないわけにはいかない」
「ワシの生い立ちは異常じゃぞ?
生まれながらに落ちこぼれのようなものだったワシは、村で迫害を受けて育った。
そんな時、ワシを拾ってくれた師匠がワシを強くしてくれた。
それがワシの第二の人生の始まりのようなものじゃ......」
「村で迫害.......?
どうしてアンタが迫害に?」
「ワシは国を追われた村人にとって忌み嫌われるような存在だったからじゃよ。
ワシは捨て子として師匠に拾われたが、あろうことかその拾われた村は最悪じゃった。
デンロット真国にあるヨギンの村というところなのじゃが.......」
「ヨギンの村.......?
まさか、アンタもしや.......!」
エウロンの顔色が変わる。
この時エウロンはワシの正体に驚いたに違いなかった。
「エウロンさん、この人って......!」
「ああ、間違いねえ.......!
道理で見たことのない盾を持ってると思ったら......!
世界最強の民族の住まう村でただの人間が生きていけるわけがない......!
この男は間違いない.......俺の知るハグウ民族を倒した男、『盾狂い』と呼ばれた最強の逸話を持つ格闘家だ.......!」




