第四十八話 タイミング
「す、すごい......!
大剣が見たこともない動きをしている!
なんて凄い剣なんだ.......!」
「聞いてないぜ、アンタ......!
まるでハグウ族を目の当たりにしているみたいだ......!」
エウロンは強く刀を握る。
そして覚悟を決めた表情で、ワシに先制攻撃を仕掛けてきた。
「まずはお前の余裕を奪おう......!」
エウロンはぐるっと木々の周りを迂回するように姿を眩まし、颯爽と大地を駆け抜ける。
その様はまるで風に同化しているかのような目にも止まらぬ速さであった。
「は、速い!!!
エウロンさんもなんてスピードだ!!!」
ワシはエウロンの気配を目で追う。
あの男、どうも足の速さは一級らしい。
ワシの故郷にもあれほどの速度を持つ戦士はそうはいなかった。
「瞬閃!!」
鮮烈な攻撃がワシの重剣にスマッシュされる。
この剣技、スピードもさながら威力も中々のものを持っている。
侮れない。
「瞬閃乱!!」
さっきの速度と威力を宿した剣技の連撃がワシを襲う。
この攻撃と練度、おそらく相当剣技を磨いてきたのだろう。
しかし......。
ワシは大剣を彼の喉元に突き刺す。
剣先は喉を貫いたわけではなく、あくまで皮膚を掠める程度だ。
「なっ!?」
エウロンは思わず反射的に大剣から遠ざかる。
どうやら、スピード勝負ならワシに勝てると踏んでいたのだろう。
「誤算だ。
ますますハグウ族を思い出す.......!
アンタ、何族だ.......!」
「知りたいかのう?
なるほど、じゃあ一つ条件を出そう」
「また条件か?
要求が多い男だな」
「何、簡単なことじゃよ。
ワシに勝てばいい。
お前さんが知りたいこと、その血族云々について、ワシが知り得る限りを教える権利をくれてやるわい」
「そんなもの毛ほども興味ないが.......。
なんとなく、それらについてアンタが話したくなさそうだなということは分かったよ。
おかげで余計に興味が湧いてきた......!」
「かかってこい、エウロン。
本気のお前を見せてみろ.......!」
「なら、遠慮なくやらせてもらうよ......!」
エウロンは刀を手でなぞり、赤色の何かを塗装する。
よく見ると、刀身からはバチバチッと赤い何かが飛び散っているようだ。
「赤火花」
温められた剣先がワシの大剣めがけ放たれる。
その瞬間、ワシはその破壊力を思い知ることとなる。
ボンッ!!!
赤い火花が巨大な爆風を引き起こす。
どうやらこの男にはとてつもない能力が宿っているようだ。
「モンズさん......!!!」
「心配するな。
このくらいじゃ死にはしない。
この男は、特に......!」
ウリムは唖然とした顔でワシの方向を見つめる。
どうやら想定外も想定外だったようだ。
「やれやれ、なかなか面白い能力を持っておる。
お前さん、もしや起爆因子を持っているな?」
「ご明察だ。
起爆因子は俺の特異体質。
これからは本気でアンタの首を狩りに行く。
覚悟しな、本気の俺は、少々手に負えないんだ」
「起爆因子......数百年に一人いるかどうかと言われる特異体質。
まさか、その一人に生涯で巡り合うハメになるとはのう」
起爆因子の保有者は身体中どこからでも発火・起爆ができる。
つまりこれからは、ヤツの全身が凶器になり襲いかかってくるということだ。
油断などカケラもできない。
「では、行くぞ.......!
青燃焼」
赤の闘神の全身が青い炎に包まれる。
しかし肝心のエウロンの肉体は急激な熱量により赤く皮膚が変色している。
なるほど、とワシは冷静に分析する。
「赤の闘神.......その起爆体質が作り出す皮膚の変色が名前の由来か?」
エウロンは青い炎を刀身に集約させ、ワシに切りつける。
大剣アブラドーズによる防御でそれらを凌ぐが、明らかに彼の生き物としての危険度は跳ね上がっている。
エウロンは瞬時にその場から離れ、防御の姿勢を固める。
よく見ると、ワシの大剣の刀身に青い炎が付着しているのが分かる。
「起爆......!」
その瞬間、青い炎が爆風を作り出す。
なるほど、これは厄介な能力だな。
ワシは爆風を大剣で切り裂き視界を晴らす。
しかしそこにはエウロンの姿はない。
と、その時、エウロンの右足がワシの太ももにヒットする。
「吹っ飛べ!!!」
エウロンの蹴りが猛烈な爆風を引き起こす。
ワシは森の中でありながら木々をいくつか貫通する勢いで吹き飛ばされ、そして煙の中に消えた。
「......なんて強さなんだ.......!
これが赤き闘神エウロン.......!
武人連合一位の実力.......!」
ウリムはエウロンの強さに思わず感銘を受ける。
が、ワシはそんなのはお構いなしにエウロンに間合いを詰め飛びかかった。
「無謀な。
近接戦のリスクが分からないか、モンズ......!」
エウロンは武人としてのプライドを誇示するためか、真正面から打ち合いに応じる。
大剣と刀ではその攻撃の重みに違いがあるのにも関わらず、だ。
それを踏まえた上でモンズの剣技に挑み、あろうことかそれらを高い技量で捌ききっている。
その姿はまさに、武人連合のトップ層の一人に相応しい、確かな実力を兼ね備えたものだった。
「この場面で打ち合いに応じるとは、勝負所は外さんようじゃな、エウロン......!」
「勝負とは何よりタイミングを重視するものだ。
モンズ......アンタの力、ここで見せてもらうよ!」




