第四十四話 新生ユメール軍、発足へ
「神界の利権......神々のいる地のってことだね?」
ルマは顎に手を置き、頭に考えを巡らせていく。
彼の中で何か思うところがあるらしい。
「今の神界からはあまりいい噂は聞かない。
突如太陽軍が地上に侵攻してきたのも、神界の長『主神』が政権交代により入れ替わった影響が少なからずある。
ならば、太陽の王テナウドリストが敗北したのを機に、神界の連中がこぞって太陽軍の支配権を強奪した可能性だって考えられる」
「利権絡みの話など聞くに堪えん。
いつだってロクなもんじゃないじゃろ、それ」
「しかし、目を背けるわけにはいかない。
次の話題に行こう。
太陽軍の背後に偶像神の後ろ盾がいると仮定した場合、太陽の王の立場は協力者兼神々にとって不都合な邪魔者だ。
おそらく、彼の領土を大切にするそのやり口のせいで都合が合わなくなったとか、そんなところだろう」
「たしかに、それなら辻褄は合うのう。
即位式と神の爆弾の関連性も、それらが背景にある前提ならたしかに見えてくる」
ルマは相変わらず鋭い洞察力で盤面を引っ張ってくれる。
心強い限りだ。
「そしたらまずは情報収集ための密偵の派遣だ。
ゴイガック帝国から今の情報もしくは性格の真実に基づいたものの裏付けとなる情報を見つけ出すんだ。
その後、密偵の合図をもとに進軍か防衛か、はたまた暗殺か、それとも別の手段かを考えればいい」
「良い案だな。
ルマ、お前の案を採用しよう。
そして俺からお前たちに要望がある」
「ゴイガック帝国との戦いが終わるまで、臨時でユメール軍に加わって欲しい。
名前は、そうだな......。
新生ユメール軍だ」
「新生ユメール軍......?」
「お前たちには後に報酬を支払おう。
モディヌ金貨二千枚。
その代わり、契約条件として神の爆弾の無力化、ゴイガック帝国在住の太陽軍の撲滅、ゴイガック帝国の武器庫の確保、その全てが終わり次第契約終了だ。
どうだ?」
「僕たちにもリスクを負えと?」
「当たり前だ。
リスクなしで大金をせしめられるとは思うなよ?
お前たちは恩人だが、俺が背負うのはこの国の命、ユメールの民の未来だ」
「別にその条件を飲んでもいいけど、僕たちも随分と甘く見られたものだ。
ねえ、モンズ?」
「そうじゃのう。
ワシらは元より太陽軍を倒すためにここにおる。
大金は貰っておくが、それでもワシらはあくまで同胞。
あまり侮らんで欲しいのう」
「......失礼した。
我々はこれより同志、まさしくその通りだ。
発言を撤回しよう。
我々は新生ユメール軍の一員として、全力で太陽軍と戦うことを誓う。
どうか信じてくれ」
この時ワシはラウム王のその胡散臭い演説のような発言に疑念を抱いていた。
が、ここはグッと堪えて共に戦うための同志を増やすべきだ。
こっちも後には引けない立場だ。
「分かった、信じよう。
その代わり、裏切ったなら承知せんぞ、ラウム王よ......」
「ああ、約束する」
こうしてワシらを基軸に据えた新たなる組織、新生ユメール軍がこの地で発足した。
ー
新生ユメール軍発足後、ワシらは例の会議で以下のことを可決した。
・五つの密偵チームの潜入
・爆発物処理班との提携
・海上と西部地方の警戒、防衛ラインの構築
・ゴイガック帝国進出への備え
この四つを主軸にした作戦を実行するために、ルマは密偵チームに、ワシは西部地方の防衛ラインに加わることとなった。
「モンズ、少し耳を貸して」
「......?
なんじゃ?」
「ラウム王はおそらく、太陽の王の暗殺も狙っているはずだ。
だけど、その流れ弾が僕らに来ない保証はない。
もしかすると僕らに報酬を渡すのを渋って、用が住み次第殺しにくる可能性だってある。
その可能性は重々承知しておいてくれ」
「心配症じゃな、ルマよ。
お前さん、結構用心深いんじゃな?」
「当たり前だ。
ユメール王国だって一枚岩じゃないんだ。
権力者たちの気分を害しないためにも僕らを切り捨てる選択肢を取らないとは限らない......!
まあ、彼に関しては太陽軍への対抗策として僕らを起用する狙いがあるだろうから簡単には殺さないだろうけど、万が一のこともあるからね」
「忠告は頭の片隅に置いておく。
しかしルマよ、あれだけ同胞だとワシが言い張った以上は、太陽軍を倒す同志としてワシは何がなんでも協力するつもりじゃぞ?
お前さんも、少しは肩の力を抜けい。
味方を疑い始めれば気が休まらなくなるぞ」
「杞憂ならいいんだ。
頼んだぞ、モンズ.......!」
「任せい。
太陽軍はワシが必ず撲滅するわい.......!」




