第四十二話 赤き戦士エウロン
「もしこれが地上に落とされたなら、地上は終わりを迎える......!
一人漏れなく、ね?」
「全滅ってことか!!!
そりゃあ笑い事じゃあ済まされん話じゃぞ......!」
「笑うわけないさ。
この件は地上の存続がかかっている。
ラウム王に急ぎ取り次ぐ他ないな」
ワシらの間に極度の緊張が漂う中、とある男がこの宿屋の個室のドアをノックした。
「ルマはいるか?
例の脱走者について話をしたい」
「ラウム王だね?
ゴイガック帝国からの脱走者はここにいるよ」
ルマはドアを開ける。
するとそこにはユメール軍きっての精鋭騎士たちが集まっており、僕らを逃がすまいと取り囲むように列をなして部屋に踏み入ってきた。
「脅すようで悪いな、ルマ。
お前たちは恩人だが、その男はスパイ容疑がある。
すまないが迅速に身柄を引き渡してはくれないか?」
「監視下に置きたいんだね?
それは分かった。
けど、一つ気がかりな発言を彼は残している」
「気がかりな、発言?」
「ラウム王、今回のゴイガックでの即位式、神の爆弾を警戒するべきかもしれない」
ラウム王はルマの発言に思わず目を丸くし、垢が抜けていくように少しずつ正気を取り戻していった。
「驚いた。
その言葉は真か、ルマ?」
「真実だ。
彼はね、即位式の後に神の爆弾を使うんだと言っていた。
言葉の真偽はともかくとして、この情報は無碍にできるようなものじゃない。
できれば今からでも緊急会議を開かなければならない事態だ」
「それは俺への忠告か?
しかし、実際に喋っているところを見なければ判別はつけられないが......」
「喋ればいいんだろ.......?」
ベッドに横たわった彼は満身創痍の状態で上体を起こす。
どうやら何かをラウム王に伝えたいようだ。
「おい、無理をするな.......!」
「時間が惜しいんだ......!
一人でも多く、地上の民を救えるのなら、俺は死を厭わない......!」
「陛下......!」
「よせ、話だけは聞こう」
「聞いてくれ、俺は元武人連合所属のエウロン......。
赤き戦士、エウロン。
俺は太陽軍に囚われた後、自らの手で脱走してここにきた......!
太陽軍が即位式をやるのは、新王エリィ・スケラーの意向だ。
先代の王者と違い、地上の制圧から破壊に方針をシフトしている......!
このままではユメールはおろか地上全てがこの世から消え去ってしまう.......!」
先代の王者は地上の侵攻を目標としていたが、新王に代わって本格的に地上の破壊を実行するつもりなんだ......!
「落ち着け、エウロン。
なるほど、お前がかの赤き戦士エウロンか。
ならば話が早い。
率直に言って、お前は俺たちに何をさせたいんだ......?
目的を言ってくれ。
その言葉で真偽を見定めたい......!」
王は真剣な眼差しでエウロンの瞳を見つめる。
エウロンは一切躊躇うことなく、迷いのない言葉を口から発した。
「神の爆弾を止めてくれ......!
あの爆弾は、人を星から消し去る爆弾だ.......!
あんなものが使われたら、地上の民はおしまいになる.......!
だから、頼む.......!
力を貸してくれないか.......!
俺は、見捨てたくないんだ.......地上と、人を......!」
「......一人の王として、決断を下すべきか。
赤き戦士、エウロンよ。
俺はお前のことを知らないが、もし仮にそれが真実だとするならばお前はどうやってそれを証明する?
自身がスパイじゃないことを指し示せる?」
「命を絶ってもいい......!
それで多くの人を救えるのなら安いもんだ.......!
必要ならば、俺を処刑してくれ.......!」
「なるほど、嘘はついていないな......」
「陛下......!
僭越ながら、発言の許可を......!
良いのですか、このような男の発言を鵜呑みにするなど.......!」
「ヤツが嘘つきじゃないことなど一目で分かる。
嘘つきはな、自身の本音を巧妙に隠すものだ。
しかし、彼が打ち明けた言葉は全て本物の言葉、本音そのものだ。
彼は嘘には長けていない。
ならば、その言葉を信じようではないか......!」
「信ずるに値すると......?」
「無論だ......!」
「ありがとう.......ありがとう......!
ラウム王、どうか力を貸してくれ......!
太陽軍の暴挙は、俺が必ず食い止める......!」
「いい王様だね、ラウム王.......!」
「お前に言われるまでもない、ルマ。
兵士たちに伝えよ、ユメール軍による緊急会議を
始めると.......!」
「陛下、よろしいのですね?」
「全面戦争だ。
腹を括るしかなかろう......!
この戦いは国の勝利か滅亡か、二つに一つしかあり得ないのだ......!」




