第三十九話 情勢の分岐点
あの出来事から二日が経ち、ワシとルマは魔のウェザウが放った熱波がもたらした火傷、その治療を受けることとなった。
場所はユメール王国最西端の宿屋で、ラウム王はワシらを匿うようにその宿にワシらを預け、当のラウム王はというとワシらが治療を受ける間で街の復興や王国内に潜む太陽軍の残党たちの駆除に取り掛かっていた。
そして更に二日後、ワシとルマの元に一人の遣いが送られることになる。
遣いはラウム王から派遣された者で、ワシらにこの国の真相を書き記した手紙を手渡した。
ーーー
その手紙からワシらが知った真実は驚愕のものだった。
ワシらが訪れた時点でユメール王国はすでに太陽軍の傀儡になっていたこと、その主犯がミヨと名乗る『猛毒の魔女マミヨ』の仕業であること、彼女が『洗脳毒』と呼ばれる毒でユメールの民らを無力化したことや、ワシらが相対した悪魔アーヌ・ルメトスが太陽軍の人間の手によって王国内の封印から勝手に解放されたことなど、その手紙にはワシらが想像していたことの更に斜め上を行くような内容が綴られていた。
ーーー
そして更に翌日、ワシらの元にまた新たなる情報が舞い込んできた。
それは新聞に掲載されたものであった。
ルマがユメールの街に出向き、新聞を購入してワシの部屋に読みかけを届けにきたのだ。
そこに記された内容はワシらにとって思いもよらないものだった。
「見たか、この記事。
僕らにとっての朗報だ」
「......まさか!
この記事......!」
太陽の王テナウドリストの退位、そして新王エリィ・スケラーの即位。
今まで数多くの国を陥落させた『太陽の名君』テナウドリストが、自身の怪我を理由に王座を退いたのだ。
その怪我という言葉に、ワシは心当たりしか浮かばなかった。
「僕の一撃が効いたんだ。
ようやく、地上の情勢が動き始める......!」
ルマは自分の一撃が効いたことに喜び、思わずガッツポーズを取る。
これまで太陽軍が絶対王者として地上を支配して回った時代、その風向きが大きく変わる節目ができ始めていた。
「しかし、ラウム王も判断が早いのう。
ワシらを魔女の関係者として矢面に立たせないよう、ワシらを王国の中心地から遠ざけ、匿うとは。
思った以上に、あの王もやり手かもしれんな」
「やり手なんかじゃないさ。
ユメール王国の情勢に少しでも足しになるよう、僕らを利用したいんだろうさ。
それより、もう一つ大きなニュースだ。
ユメール王国の隣国、ゴイガック帝国で太陽軍の新王の即位式の開催が決まったらしい」
「即位式じゃと......?」
「その際、新王の初陣としてユメール王国を取り戻す算段という噂だよ。
ま、もっぱら間違いじゃないと僕は見てるけどね。
でも儀式をする理由はなんなんだろう、それが分からないんだよね......」
「要は初陣を華々しく飾る、そのためにユメールを踏み台にしようという魂胆か。
思わず怒りが込み上げてくるのう......」
新王即位の記事が新聞に出たのはちょうど二日前頃。
そのあたりから、ワシらの泊まる宿の周辺が騒がしくなっているのは薄々感じていた。
「この街が戦場になる日は近いな。
モンズ、戦争に備えて武器を幾つか調達してきてくれないか?」
「それは構わんが、ワシは今、無一文じゃぞ?
資金は船に置いてきてしまったしのう」
「資金なら僕が出す。
僕は食料を中心に調達してくるから、君は君自身が使えそうな武器を中心に見繕ってきてくれ。
できるだろ、武器の目利きは?」
「任せい......!
目利きならそれなりに経験があるからのう。
お前さんの期待には応えられるかもしれん......!」
「是非、そうしてくれ」
「分かった......!」




