第三十八話 アンモス・テルノ
「よくぞ見破った、俺の体質を......!」
「当たり前じゃ。
通常、人の予測には限界がある。
たとえどんなに相手の動きを読む力に長けていても、予測の範疇である限りは必ずどこかで明確な綻びが生まれるもの。
だが、お前さんにはそれがなかった。
過去の英雄が未来の武術に精通しているとは思わんしのう。
そこでお前さんがその手の未来を読む特異体質だと考えたんじゃ。
そして思った通り、お前さんはルマを圧倒した。
予知が交錯しやすい接近戦ではなく、距離を保ち明確な読み合いを必要とする打って打たれない中距離戦でな。
その手の読み合いでは未来予知はめっぽう強いんじゃ」
「それで俺の能力を見抜いたのか」
「お前さんが倒したその男はな、この世で数少ない太陽の王を丸腰で倒せる者の一人なんじゃよ。
そんなヤツを何の能力もない、武術にも秀でてない英雄が相手にできるわけがないことをワシは知っておるからのう。
お前さんはただの英雄じゃなかったわけじゃ」
「ただの英雄じゃなかった、ねえ?
ちなみに聞くが、お前の言うただの英雄ってのは何なんだ?
俺がただの英雄じゃないのなら、それ以外の英雄は凡人か何かか?」
「そうじゃのう、英雄にも格の違いが存在するのは事実。
しかしワシはそんな歴代の英雄たちの逸話をも超えうる存在、それこそがルマなのだと思っておるのじゃよ。
だからこそ、お前さんがヤツを圧倒したのには目を丸くした。
お前さんは身体能力任せな割に相手の癖を見るわけでもなく、ただ相手の出しゆく未来に攻撃と防御を重ねていたのじゃ。
それが逆に不自然さを暴くきっかけにもなったのじゃ」
「なるほど、そういうことか、モンズ......。
だから君はすぐに戦闘に加わらず、見に徹していたのか.......!」
ルマは満身創痍で起き上がる。
さっきのボディーブローが相当効いたようだ。
「さっきのは効いただろう?
お前、鍛えてる割に貧弱だからな、体が」
「なぜ、気がついたんだ?」
「見れば分かる。
だが一番確信したのは、お前を殴った時だ。
腹を殴って、明確に臓器系に弱みのある反応を見せた。
分かるんだよ、これまでの経験と俺の嗅覚によって。
お前は今、何か切り札を出そうとしているな?
とっておき、だがそれは無駄な抵抗だ。
俺にはそれは通用しない」
「戯言を言うな!!!
お前に僕の何が分かる!?」
「分かるさ。
なぜならお前たちは俺には勝てないからな。
今からそれを見せてあげよう......!」
英雄ユメールは突如空中にふわりと浮かぶ。
そして、この城一帯を覆うように膨大な量の闘気でワシらを追い詰める。
「これは、まさか......!」
「英雄からの冥土の土産だ。
さあ、持っていくがいい!!!
英雄の鼓動!!!」
まるで火山の如し熱量を帯びた闘気が城を襲う。
その威力はまさに隕石の如し、城を粉々に破壊しワシらに深い火傷を負わせた。
.......瓦礫が崩れ、ワシは意識を取り戻す。
どうやら、なんとか生き残れたようじゃ。
「......待て、ルマはどうした!?」
ワシは埋もれた瓦礫の中からルマを探す。
すると瓦礫の上に不思議なオーラを放つ、緑色の神気を帯びた男が立っていた。
「......ラウム!
生きておったのか、ユメール王......!」
ワシは目を疑う。
そこにいたのは満身創痍で窮地に立たされた英雄ユメールと、それを追い詰める緑色の戦士の姿だった。
「.......ラウム。
お前が俺を阻むのか?
愚かな......」
「英雄ユメール、お前の生きる時代はもう過ぎた。
私を乗っ取っていたあの悪魔はどこにいった?」
「悪いな、今は教えられない。
また会おう」
英雄ユメールは黒い泥になって焼け落ちるように地面に溶け、消えてゆく。
あの一瞬で一体何が起きたのか、それを知るのは目の前のこの男だろう。
「迷惑をかけたね、盾の人。
君の友人なら無事だよ。
アイツらは僕が駆除するから」
その後、ワシらとラウムは共に旅をすることになるのだが、それは別のお話.......。




