第三十七話 未来の予見
「ルマ、お前さん正気か?
話くらいは耳にするべきではないか?」
「君は知らないようだね、召喚者の性質を。
召喚者は基本、主人には絶対服従だ。
決して逆らえない。
この男の話も、全ては悪魔の指示に他ならないんだ......!」
ということはまさか、あの口から吐き出された黒いのが召喚者というやつなのか?
だとしたら、ワシのイメージとは少しかけ離れている。
「ルマ......」
「俺みたいな例外がいるから話はややこしくなるんだがな。
まあよかろう。
仕方ないから、お前たちを殺して行こう。
話を聞く気は無いようだしな」
「やっぱり殺す気じゃ無いか、君」
「しくじるよりはマシだ」
ルマはいつもの表情にはない、明確な敵意を抱いた顔を見せる。
そのせいもあってか場の空気が大きくヒリつく。
正直、この時ルマが何を考えているのか、自分にはさっぱり分からなかった。
ルマは英雄ユメールに突撃すると、不慣れな拳をユメールの剣に叩きつける。
「刃を恐れぬとは、並の神経ではないな」
「こう見えて僕は鍛えてるんだよ。
刃物程度じゃ話にならないよ?」
「恐れいる。
それでこそ戦士の矜持だ......!」
ユメールとルマの剣対拳の激闘が始まる。
ルマは剣の刃に一切躊躇いなく攻撃を打ち込む。
逆にユメールはというと、完全に守勢に回っている。
「モンズ、早く加勢を!!」
ワシはルマの言葉に従い攻撃に加わろうと試みる。
が、ここで妙な違和感に気づく。
なんだ、この異様な動きは。
ルマは戦い慣れしていらからか、対人戦のセオリーである重心を細かに変える基本の動きはできている。
不完全だが、違和感はない。
しかし、ユメールの方はなんだ?
ノーモーションからセオリーから明らかに外れた剣の振るい方をしている。
だが問題はそこじゃない。
セオリーから外れている動きの割に、ルマの動きを完全に把握しているところだ。
ルマは一手一手、相手の重心や手数を崩す攻撃を仕掛けている。
そして実際、英雄ユメールは何度も何度も崩されている。
攻撃や攻めの手際の良さは明らかにルマに分があるのだ。
それなのにも関わらず攻撃が一切当たっていない。
むしろルマが危ない攻撃をもらいかけているのだ。
なんだ、この奇妙な感じは?
まるで、ルマの攻撃の未来だけを見ているかのような.......。
いや、まさか......!
「モンズ、何をしている!!
コイツ、かなり手強いぞ!」
「ルマ、そいつの動きはやっぱり変じゃ!!!
お前さんの動きを把握されておる!!!
相手の間合いから外れながら自分の攻撃だけを当ててみるんじゃ!!」
「ヒットアンドアウェイか?
了解だ......!」
ワシの助言に従い、ルマは打ち合いから打って打たれないスタイルにチェンジする。
しかし......。
「ぐあっ!!」
ルマの方はというとワシの想像を超えるレベルの大苦戦を強いられる。
その時点でワシは違和感の正体に概ね察しがついた。
「なるほど、読めた......!
あの男の秘密、違和感の正体.......!」
ワシはそれを検証すべく崩れた瓦礫の破片を拾い始める。
ワシは石ころ状の瓦礫を抱え、点速を使用すると、英雄ユメールめがけてありとあらゆる角度から瓦礫の投擲を始める。
それも死角から、より悟られないようなタイミングで。
しかし、ユメールはそれらの攻撃をルマとの激戦の最中でも的確に回避し、途中途中その瓦礫を弾き返す動作も見せる。
そう、ヤツの視線はルマに集中してるはずなのに、死角からくる礫の攻撃をまるで分かっていたかのように全て対応して見せたのだ。
そこから導き出される結論は、おそらく一つだけだろう。
「どうやら、そこの盾の男は俺の能力に気づいたらしいな」
「それは、お前さんが見た未来のワシか?」
ユメールはルマの腹に一撃を入れ、ルマを悶絶させる。
そして......。
「その通り。
俺には未来を予見する力が備わっている。
いわゆる特異体質だ」




