第三十五話 英雄ユメール
「悪玉」
魔の宿ったウェザウは黒の綿毛を撒き散らす。
だが......。
「闘神波!!!」
鮮血の如き赤を放つ闘気の砲弾が迫り来る綿毛を無力化する。
「モンズ、注意すべきはあの黒い綿毛だ。
あれはこの世の物質を分解する成分で構成されている。
触れれば触れた部位から消滅するぞ!!!」
「ルマ、それは承知じゃが、一体どうやってあの悪魔を倒すんじゃ......!?
弱点を知らねば、攻撃を組み立てられんわい......!」
「よく聞いて、モンズ。
悪魔の弱点は心臓と、致死量の神気、いうなれば猛毒だ。
僕は大量の神気で毒殺を狙う......!
モンズは隙を伺い、弱点たる心臓に一撃を入れる準備をしていてくれ......!」
「了解......!」
「丸聞こえだ......!
そんな露骨な悪巧みをみすみす見逃すと思うか.....!」
闇の胃袋が再始動する。
ワシらの足元を覆っていたさっきの布地は気がつく下半身にまとわりついている。
今度は無理矢理に僕らを捕縛しにきているのだろう。
だが......。
「それも、神気は有効だよね?」
ルマは下半身にへばりつくその布地に高密度の神気を放射する。
その瞬間、うねうねと揺り動く布地は黄金色の炎に包まれ、燃え上がる。
「アッツ......!」
「やっぱりね。
いくら高名な悪魔でも神気への明確な対策法は確立できてないようだね。
これじゃ、いくら巧妙な手を使っても勝てる見込みはないんじゃない?
ねえ、闇の悪魔さん?」
「ぐっ.....おのれェッ!!!」
「ルマ、畳み掛けるぞ!!!」
「了解。
君は援護に回って......!」
ワシとルマは闇の絨毯の引き潮の流れに沿いながら悪魔めがけて突撃する。
ルマは神気と闘気をミックスして作り出した弾丸で先制かつ牽制の攻撃を繰り出す。
そしてワシはその弾丸の後を追うように、点速を使い、悪魔の一瞬の隙を狙う。
「小癪なぁああ!!!」
悪魔は自身の前方を闇で塗り固める。
ワシらと悪魔との間には黒の障壁が生まれ、視界が完全に断絶される。
だが......。
「転移眼」
ルマが一瞬でその場から消える。
途端、ルマは障壁の空いている端に向かい転移を試みる。
悪魔の後方を取るための策だろう。
そして......。
「最大圧縮、闘神槍!」
闘気と神気を混ぜた最大威力の細い棒が悪魔の背中に炸裂する。
「がっ......!」
「今度は正面がお留守じゃよ......!」
背後から致死量寸前の神気を浴びた悪魔は反射的に正面の障壁を解除する。
それをワシが見逃すはずもなく、ワシは一切躊躇うことなく容赦のない渾身の殴打を、悪魔の心臓に叩き込んだ。
「ぐあっ!!!」
「ここが弱点なんじゃろ?
だったら話が早いわい」
悶絶しその場にのたうち回る悪魔。
どうやら、もう一押しといったところのようだ。
「お前さん、随分と悪さをしてきたのじゃろう?
拳越しに嫌な感触が伝わってきたわい」
「モンズ、こいつは神界の偶像神らが定めた『危険概念駆除法』に当てはまる。
こいつは僕が処理するから、モンズは休んでてくれ」
「処理?
お前さん、まさかこれの駆除を自分でやるつもりなのか?」
「ああ、できるよ。
なるべく偶像神を敵にしたくはないし、何よりこの悪魔という生き物は害悪だ。
人間に限らず、多くの災いを振り撒きかねない。
だからここで僕がトドメを刺すんだ」
「ハァ、ハァ.....させるものか。
こうなったら、最後の手だ......!
アイツを召喚して、お前たちを殺してやる......!」
悪魔は最後の抵抗を見せる。
腹を大きく膨らませ、口から闇に包まれた何かを吐き出す。
その時だった。
異様な殺気がワシらの肌を刺したのは。
「強硬手段に出たか......!
しかし、あれは一体何じゃ!?」
「何かを吐き出したね。
まるで何かの生き物みたいだ」
「ハッハッ......生み出す代償はデカいが、お前たちはこいつに手こずることになる......!
この国における最強と呼ばれた戦士、国と城の由来にもなった男だ......!」
「まさか、英雄ユメール!?
悪魔の群れを殺した、伝説の悪魔崇拝者か......!」
「お前たちは知らない、この異常な男の強さを......!
さぁ、行け!!
俺の命を守れ、ユメール!!!」




