第三十四話 闇の胃袋
「が、が........」
「悪くない体だ。
この出来損ないの王の体よりかはマシか。
ようやく、居心地の良い器を手にできた......!」
「何やってんだ......判断が遅いぞ、モンズ!!!」」
「えっ......?
ワシなんかやらかしたか!?」
「マークしろって言っただろ!!!
見ろ、新たな器に魔が乗り移ってる......!
君が彼の行動を抑止する係だろ!!!」
「係ってなんじゃ......!!!
お前さんの言うマークは見張りじゃろ!!!
なぜそうも飛躍しとるんじゃ......!」
「違う、彼の行動を止めろって意味だ!!!
クソッ、こんな時に......なんで意思疎通ができないんだ......!」
「それはワシに言ってるのか?」
「君以外にどこにいる?」
ルマはワシの鈍感さに苛立ち、ワシはルマの理不尽なブチギレに腹を立てる。
そんな時、魔に乗っ取られた暗殺者は殺意剥き出しでこちらを凝視する。
「ウェザウ......なるほど、この暗殺者の名がそれか。
これからはウェザウとして、まず手始めにポロピラスに潜入し乗っ取るとしよう。
その後は乗っ取った勢力を思いのままに拡大し、太陽軍、強いては神界をも制圧する。
そして悲願の闇の帝王へ成り上がる.......!!
ふっふっふ、我ながら完璧な計画......!」
「計画?
いや、そうか!
彼の正体、婆さんを殺したのは殺し屋『ウェザウ・フレーメロ』か......!」
「ウェザウ?
初めて聞く名じゃな?」
「鈍い君が知るはずもないだろ?
そいつは指名手配中の殺し屋だ」
「なんじゃと?
お前さん、ワシと喧嘩したいのか?」
「してる場合か......!
見ろ、憎悪からくる闇が、更に膨れ上がってる......!
アイツは闇の化身、人から命を吸い、貪る、『衝動悪魔』の一種だ......!」
殺し屋『ウェザウ』の中でとてつもない量の闇が生成される。
ワシとルマはハッと我に返る。
しかし、魔に乗っ取られたウェザウは既に玉座の間を闇で覆い尽くし始めている。
「闇の胃袋」
ウェザウの体外に放出されたものは、さしずめ闇で作られた布地、絨毯。
人や物、物質などを隅から隅まで取り込む異形のブラックホールであった。
「まずい、僕らを取り込む気だ、あの衝動悪魔!!!」
ワシとルマは置き場のない闇の絨毯の上に足を置き、呑まれるサマを観察する。
こんな時に冷静になるのもどうかとは思うが、ワシとしてはこれをなんとかすることは不可能ではないような予感がしてならない。
そう、直感がワシに呟いている。
「不思議じゃのう。
悪魔ってのは随分と便利そうな力を使う。
しかし案外、なんとか乗り切れる予感がする。
お前さんもそうは思わんか、ルマ?」
「同感だ。
というより、僕は対処法を知っている。
けど、君への心配は杞憂だったようだね。
流石だ」
ワシは直感的に全身に流れる何かを体外に放出。
それはルマもまた同様で、ワシらは気づくと神気で構成された衣のような鎧をその身に纏っていた。
「厄介な輝きだ。
その光、忌々しい偶像神のものだな?」
ワシらの足元を覆っていた漆黒の布地がまるで引き潮のように引いていく。
どうやらこの黒い布は神気に当てられると萎縮する、もしくは似たような性質を持っていることが窺える。
「いいや?
僕の場合は生まれつきだ。
モンズがどうかは知らないが、君たち悪魔の時代はもうすでに終わっている」
「そうじゃ。
もうお前さんではワシらの試練にはなり得んぞ......悪魔よ!」
「......輝かしい時代だった。
たしかに、我々悪魔はお前たち人間と偶像神に敗北した。
しかしだ、お前たち人間に限れば、体内に保有できる神気に必ず限界があるはず。
偶像神と違って、お前たちは貧弱で出来損ないだ。
そんなヤツらにこの俺が負けるものか......!
衝動悪魔として、お前たちを血肉に変えてやる......!
俺たち悪魔が、再び世界を席巻するのさ......!」
悪魔は闇の胃袋をそこら中に広げ、ありとあらゆるものをエネルギーへと変換していく。
ルマとワシはそれに負けじと臨戦態勢を取る。
無論、ワシの相棒は深層の盾『ファルアド』だ。




