第一話 拳と剣技の交錯
地上の歴史を揺るがす一撃が太陽の王テナウドリストに炸裂する。
ルマの放った拳はテナウドリストの顎から脳まで伝わると、テナウドリストに再起不能の衝撃をもたらす。
間違いなく、後遺症が残ってもおかしくない倒れ方をしたぞ.......!
テナウドリストが地に落ち、ルマは腕を掴みながら地面でもがく。
あの一撃、やはり相当な反動があったようだ。
「ルマ.......!
お前さん、なんて一撃じゃ!!!
見ろ、あれでは太陽の王はもう立てまい.......!」
「まだだ.......!
僕は最後まで油断しない.......!
最後まで、仕留めるまでが全てだ......!」
「無理をするな、馬鹿者。
お前さん、自分の攻撃が信じられんのか?
見ろ、あれを。
お前さんの攻撃は、間違いなくヤツの人生を
狂わせる決定打になっている.......!
ワシの勘がそう告げておる.......!
だから心配するな。
あとの奴らはワシが片付けてやる.......!」
ワシはルマを庇うように太陽兵らの前に立ち、太陽兵らと交戦する。
この時のワシは少しばかり冷静さに欠けていたのかもしれない。
ワシは本能の赴くままに、拳と足で太陽兵を豪快に吹き飛ばし蹂躙する。
その様子を見ていた石の剣王ダイドロットはワシを止めるべく剣を抜くが、それをルマが回し蹴りで阻止する。
「ナイスキックじゃ......!」
「アンタだけに任せられるか。
一人で戦うなんて、死ぬ気なのか?」
「ワシは死なんよ。
お前さんと共に生きてやる.......!
だからお前さん、お前さんは休んで力を温存しておくんじゃ」
「ルマ.......!
この出来事は、必ず世界を駆け巡る.......!
その前に、お前だけは必ず俺が討ち取る.......!」
「させんよ。
ワシがお前さんを倒すからのう」
ワシは太陽兵が地面に落とした剣を拾い、ルマが後退すると同時にダイドロットと剣を交える連携を見せる。
「どけ、盾狂い.......!
その男はここで逃がしてはならない者だ!!!」
「だったら尚更引けんじゃろ。
この少年のポテンシャルはしかと見た。
ならばワシが彼を新たな時代に送り届ける!!!
太陽軍、お前さんらは散々暴れたじゃろ?
もう、幕引きの時じゃよ」
「黙れ.......!
まだ、太陽軍は終わっちゃいない.......!
これから、また新たなる時代を迎えるはずだ!」
「曖昧じゃな。
そんな不確定な未来などないわい。
未来とは運命の分岐点の延長線上じゃ。
太陽の王が倒れた今、新たな時代が必ず訪れる.......!
この戦いの終わりによって、のう」
「......それで、俺にどうしろと?」
「戦っても構わんぞ?
お前さんも筋はいい。
新たな時代に乗り遅れるほどヤワではあるまい」
「......そうだな。
盾狂い、お前は賢い男だ。
だが、あの男だけは逃がさん.......!」
石の剣王はルマに視点の照準を合わせ能力を発動する。
「石の怪物」
その時、ピカッと灰色のフラッシュがその場を包む。
途端、ルマの体は徐々に石化に見舞われていった。
「な、がっ.......!」
「ハァ、ハァ.......この能力を使いたくはなかったが.......。
流石に手土産なしで帰るわけにもいくまい?」
「ダイドロット......!
お前さん、やりよったな.......!」
「さあ、続きだ、盾狂い.......!
その男はじきに動けなくなる。
太陽兵は優秀なリーダーを失っている。
今まともに動けるのは、残念ながら俺だけだ」
「だったら引導を渡してやるわい.......!
石の剣王、お前さんはワシの逆鱗に触れたぞ!!!」
すさまじい闘気が全身にみなぎってくる。
ダイドロットもまた、ワシを倒さんと全身全霊の力を剣に込める。
ここで雌雄を決する以外に選択肢はないのやもしれん。
ワシは拳に闘気を流すと、全力の拳をヤツの剣に見舞う。
闘気の熱が層となり、ワシの皮膚を刃から守ってくれる。
ワシは闘気の層に身を委ね、剣などお構いなしに武技を振るい続ける。
「気の密度が高いな。
それほど熟練した闘気を操る男ははじめて見たよ」
「奇遇じゃな、ワシもお前さんほどの
剣士にははじめて会ったぞ?
少なくとも、ワシの生まれの村のやつらよりは厄介じゃ」
闘気の拳と達人の剣技が交錯する。
お互いに高い威力を持っており、急所に入れば即死は免れられないものだ。
「ハァ、ハァ......なんて強さだ.......!
盾狂い、お前の底が見えない.......!」
「うむ、おそらく場数の違いじゃな。
ワシは修羅場という修羅場なら何度も越えてきたからのう。
お前さんにはちと厳しいようじゃな」
ワシは闘気をヤツの腹めがけて流す。
その瞬間、ダイドロットの腹部に火傷がもたらされる。
「があっ!!!」
「悪いのう、勝負ありじゃ」
ワシは畳み掛けるように剣を蹴り弾き、拳の連打をお見舞いした。
「熱闘拳!」
闘神の如し熱気の連打がダイドロットに炸裂する。
ワシの渾身の攻撃はダイドロットの意識を遥か遠方まで葬り去っていた。