第三十一話 ユメール城へ
「遅いよ、坊や。
ほら、城へ行くよ?」
「城?
ユメールに城なんてあるのか!?」
「あるに決まってんだろう?
一体今まで何を見てきたんだい?
ユメールで城と言えば一つを除いて他にあるかい?」
「モンズ、ユメール城だ。
英雄ユメールにちなんだ名前の城。
君は聞いたことないかい?」
「さあ......初めて聞いたのう」
「頭の悪い坊やだね。
この年になってそんなことも知らない世間知らずとは。
そんなんじゃ、悪どい詐欺集団に喰い物にされるのは時間の問題さね」
ワシは婆さんに激しく叱責される。
一体ワシが何をしたというんじゃ。
そんなモヤモヤを抱えたまま、ワシらはユメール王国の西部に位置するユメール城を目指す。
「ミヨ婆さん。
ちなみに聞くけど、そのユメール城には一体何の用があるんだい?
僕らは仮にも太陽軍とは関わらないようにしたいんだが、太陽軍の幹部とかいたりしないよね?」
「幹部......?
イーッヒッヒ!!!
そりゃあアタシャに言ってんのかい?
アタシャを笑わせるなよ、腰を痛めちまうだろ?」
「実際、鉢合わせたら面倒じゃしのう。
下手すると顔も割れとる。
婆さんは太陽軍の事情をどこまで知っておる?
ワシとしては婆さんを危険に晒すことは不本意じゃから、なるべく別行動した方が良いと思うが」
「自分の前にアタシャの心配かい?
そんなものは不要だよ、若人よ。
アタシャがこれから行くのは、ユメール王の診察だ。
太陽軍に一任され、特別に許可を得て王の容態を見に行くんだよ」
「婆さん、医者でもあるのか!?
だったら尚更、ワシらを不用意に城に連れ込むのは避けるべきではないかの」
「イッヒッヒ.......なんだ、後ろめたいことでもあるのかえ?」
「いや、そんなつもりは......!」
「冗談さ。
ま、心配せずとも幹部どもがこの城を訪れることはない。
太陽兵の見張りをアタシャがなんとかするし、最悪人払いくらいできる。
安心してついてきな、若人ども......!
イーッヒッヒ......!」
「ミヨ婆さん......頼りにしてるからね?」
ワシらはユメール王国の中央に位置する街を西へ西へと横断し、ユメール城へ一歩、また一歩と近づいていく。
街並みは思った以上に清潔感があるが、よく見ると太陽兵たちが掃除をしているのが窺える。
「意外じゃ
あの太陽兵が掃除するなんて夢にも思わんかった......!」
「昔から属国の扱いには思うところがあったからね。
アタシャとしてはせめて、国にゴミを散乱させるのはないようにしたかったんだ。
それで色々頑張って軍の上層部と取引したんだよ」
ワシは婆さんのその大胆な行動と発言に思いもよらず感銘を受ける。
「なぁ、ルマ。
もしかして婆さんって結構凄い人か?
いくら軍の関係者といえど、普通ここまでやるものかのう?」
「やらないね。
無論、普通は怯えてゴミ掃除なんて提案はできないよね。
ミヨ婆さんはきっと、かなり稀な考えを持っている人なんだよ」
「さあ、着いたよ。
あれがユメール城だ......!」
ワシは衝撃を受ける。
ユメール城、そう形容されたその圧巻の広さの建物に。
「これ全部城か!?
なんつう広さじゃ!!!」
「驚いた......!
流石はユメール王国領土の七分の一を占めるだけはあるね」
「七分の一じゃと!?
そんなに広いのか、この城は......!?」
「あの敷地の真ん中にあるのがユメール城の本丸だよ。
さ、行くよ。
先に言っておくけど、この城の玉座には大きな危険が潜んでる。
被害に遭いたくなければアタシャの言うことを素直に聞くことだね」
「危険?
ただの診察に危険なんてあるものかのう?」
「ただの診察じゃないんだよ、モンズ。
ミヨ婆さんが言ってた本丸、どうも危険な雰囲気を醸し出しているよ......!」
ワシはルマの発言に驚き、ユメール城の本丸を凝視する。
しかし危険の雰囲気というのをまったく感じることはなかった。
「......???」
「ミヨ婆さん、もしかして僕らの役割って、ミヨ婆さんのボディーガードか何かかい?」
「察しがいいねえ、お前は。
あんまり察しが良すぎるのも敵を作る理由になりかねないよ?」
ワシらはユメール城の敷地から本丸に突入していく。
しかしこの時、ワシとルマは妙な違和感を感じてならなかった。
「ルマ、これは......?」
「もしかすると本丸に潜む例の危険のものかもしれない。
もしくはミヨ婆さんの魔術か......!」
「魔術?
婆さんは薬師だろ?」
「違った、言い間違いだよ。
勘違いさせてしまったね」
「勘違い.......?」
ルマとワシ、そしてミヨ婆さんは注意深く本丸を突き進んでいく。
「婆さん、これからどこに向かうんじゃ?」
「玉座だよ。
用があるのはユメール王だ。
考えれば分かることだろ?」
「ミヨ婆さん、妙な気配は上の階層にあるよね?
もしかして、例の危険は玉座と関係していたりするかい?」
「ご名答だ。
こういうところの察しの良さは流石だよ。
思わず舌を巻くほどにね」
「ルマ、お前さん探偵になれるんじゃないかの」




