第二十九話 寝言のモンズ
「ミヨ婆さん。
少し、話をいいか?」
「ダメだと言ったら?」
婆さんは意地悪な声で問いを返す。
僕としては一刻も早く、この国の現状と太陽軍の動向を知りたいものだ。
「......やはり、お前は見どころがあるね。
アタシャの試練を難なく突破して見せた。
アタシャの魔術に一切干渉されなかったのはお前が初めてだよ」
「やっぱりそうか。
この妙にヒリつく感触は、アンタの魔術だったわけだな?
太陽軍に在籍する激毒の魔女、太陽十三天聖の魔術師、『マミヨ・イヴァイリオン』.......!
かつて砂漠の魔女と呼ばれ、国を追われた国賊......!」
気づくとモンズはどこか夢現のまま直立している。
目が虚で意識が半分消えかかってる。
この婆さん、やはり僕らを罠にかけるつもりでいたようだ。
「軍では『ミヨ』の名で通している。
その名に良い思い出はないからね。
できれば、もう二度とその名を使わないでおくれ?」
「ミヨ婆さん、アンタと取り引きがしたい。
僕はとある計画を進めるため、成り行きでここまできている。
できれば多くの協力者が欲しいんだ」
「へえ?
それで一体、どんな取り引きをするんだい?」
「ーーーーーーーー。
ーーーーーーー、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
ーーーーーーーーーーーーーー」
「ーーー。
ーー、ーーーーーーー?
ーーーーーーーーーー、ーーー?」
ーー
ー
「お前、正気の沙汰じゃないね?」
「当たり前だ、正気じゃないからね、僕。
それにーーーーーーはもうすぐ政権を交代しなければならなくなる。
必死なんだよ、彼も、僕も。
できれば賢明な判断をしてくれると助かるよ」
「一つ聞かせておくれ。
その神の粛清者とやらは、一体どれくらい強いのかえ?」
「今は発展途上だけど、真の意味で覚醒すれば単独でーーーーーーーくらいにはーーよ?
それは歴史が証明している.......!」
「太陽軍の分裂、もといーーーーーーはお前だね?
まさか、そんな事態になっていようとは思わなかったよ。
まったくどうしたものかね」
◇◆◇◆◇◆
「モンズ......!
モンズ......!」
ワシを呼ぶ声が聞こえる。
ああ、この声は......英雄ルマ......!
ワシの希望、そして巨大な敵を討ち滅ぼす者......!
「......何言ってんの?
ここ、婆さんの家だよ?
ほんと面白い、それ」
.......?
面白い?
なぜ、ワシは笑われている.......?
ワシは重く閉じる瞳を無理矢理こじ開け、現実世界を直視する。
よく見ると、ワシの顔の前でルマがニヤニヤコチラを見ながら笑みを溢していた。
「よく眠れたかい?
寝言のモンズくん」
「寝言の、モンズ.......?」
ワシはばっと飛び起き、完全に開ききらないその瞳で家の中を見渡す。
気づくとワシの全身は大量の汗が噴き出ていた。
「変な夢を見ていた.......ルマ、お前さんがワシの夢に出とったぞ?」
「うん、知ってる。
寝言で言ってたからね、英雄ルマって。
誰が英雄だよ、誰が......ぶっはは」
「笑うなルマ。
というか、ワシはなぜこんなところで寝とるんじゃ?
ここはユメールじゃないのか?」
「ユメールだよ。
というか、君が急に倒れたんじゃないか。
婆さんの家に着いた途端、バタッてさ。
驚いたよ。
相当疲れがたまってたんだね」
「疲れる?
ワシがか?
不可解じゃのう、これしきのことでワシが疲れることなどあったかのう.......?」
「疲れってのは必ずしも肉体の疲労だけじゃないよ。
これまでの旅できっと相当気疲れすることがあったんじゃないかな?
おそらく、君の疲労はその気疲れが原因だと思うよ?」




