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失敗作Ⅱ  作者: 一鸞一
第二章〜ユメール王国のラウム
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第二十五話 しがない武人、ルマ


ワシは祈りを捧げる。

地上へ帰還できたことへの喜び、そして深層の書神への感謝の意を込めて。


仕組みはよく分からないが、偶像神への感謝の念や祈りは発した脳波が空を通じて偶像神に伝達されるよう作られているらしい。


まったく意味不明だが、ワシは約束を守るため日々の祈りを忘れないよう心がける。


「仮にも約束したからのう。

ワシ自身、習慣になさすぎて不慣れじゃが、少しは許してくれよ......深層の書神よ」


ワシは深層の書神への礼を済ませ、少年を再度担ぎ上げる。

血液坑道、そのうちの静脈坑道と書かれていた地下空洞を歩いてきたワシは、なんとかして峠を越え森の中央付近で腰を下ろす。


ワシとしても悪魔騎士や恐怖の怪物(モリド・バーク)、深層の書神に石の剣王と連戦続きだったため、少しばかり気疲れしている。


ワシはドサっとその場に少年を寝かせると、そのまま仰向けに呑気に昼寝を開始した。



ーーー

ーー



目を覚ます。

気がつくと、隣でガサガサと気配がする。

ワシは物音への警戒心を高め、薄目のまま真横を睨む。


「ここどこだ?」


「起きたか、少年」


「......!?

......ああ、アンタか」


ワシは少年の起床に合わせひょいっと体を起こし立ち上がる。

少年の方はというと、どうやら少し考え事をしているようだ。


「冷静じゃのう。

もっと、取り乱すと思っておったが」


「質問に答えてくれ。

ここはどこだ?」


「ここは悪魔の森かのう。

もしくは隣接してるどこかの森じゃ。

細かいことは分からん」


「分からないはないだろ。

僕をこの場所に運んだのって君じゃないのか?

それなら、ここに辿り着くまでの経緯を知っているはずだ」


「知っているも何ものう......。

悪魔の森から智慧の神窟、そして地底領ルドガリアを潜ってここにきたからのう。


ほれ、つい先程あそこの出口から地上に出たんじゃ。

じゃから現在地などワシには分からんよ」


「なるほど、経緯は分かった。

それならおそらく、悪魔の森か近接する森の類だろう。

地底領を通ったとなると、辿り着くのはせいぜい西側くらいか?」


「ほう、地理に詳しいのか?」


「仲間から聞いたんだよ。

僕の友人に悪魔の友達がいただろ?

ほら、悪魔の森で死んださ......」


「死んだって......。

お前さん、何とも思っておらんのか......?」


「そんなわけない。

僕だって思うところはある。

ただ、こうなることくらいは戦争になる以上は覚悟していたよ。


太陽軍の侵略、太陽戦争が始まったこの地上に本当の逃げ場なんかない。

僕らはなんとしても太陽軍を滅ぼさなくちゃあいけない」


「たしかに、太陽軍侵略による地上の被害は凄まじい。

先の太陽戦争における被害者の総数も、たしか九十万人。

地上の人口の約半数じゃ。


そんな連中をますます見逃すわけにはいかんのう」


「アンタ、太陽軍に恨みが?」


「恨みも何もない。

地上を滅茶苦茶にされて、挙げ句の果てに多くの被害者を出しておる。


それ以上の理由が必要になるのか?」


「いや、不要だ。

君は正しいよ。

僕の仲間だってそうさ、太陽軍に殺された......!


そういう点では僕も太陽軍には恨みがある。

つまり、手を組める間柄だってことだ」


「手を、組むのか?」


「君が良ければ、ね。

最悪一人で立ち向かうけど、できれば心強い味方が欲しいかなって」


「つまりワシをご所望ということじゃな?

だったらお安いご用じゃ!!!

ワシでよければ喜んで力を貸してやるわい......!!!」


「......ありがとう!

君、名前は?」


「ワシはモンズ。

お前さんは?」


「僕はルマ。

しがない武人さ。

君の協力、非常に心強いよ......!」


「ワシもじゃ。

ワシにとっても太陽軍と戦える戦士が増えるのは好ましい!」


「これからよろしく、モンズ......!」


ワシとルマはがっしりと握手を交わす。

どうやら、ワシらは仲良くなれそうな予感がする。

同じ武人であり、新たな同胞。


そして悪魔の森で見せられた太陽の王を撃ち落とした一撃は頼りになる。

間違いなく大戦力級の男だ。


「ところで、君一人称『ワシ』だけど、その割には若そうだよね?

一体いくつ?」


「ワシか?

ワシは十九歳じゃ」


「十九!?

僕とほぼ同年代じゃないか!!!

ハハッ、これも運命だね。


僕は十八だ。

君、若い割に性格が濃いんだね!」


「ま、この口調は師匠の影響が大きいじゃろうの。

ワシとしても改善すべきならするが、今のところそれで不自由してるわけでもない。


だから口癖は気にするな」


「不思議なんだね、君は。

それはそうと、今は太陽軍の動向を警戒するべきじゃないか?」


場の空気が一気に引き締まる。

そうだ、今は太陽軍の動向に注意を向けるべきなんだ。


「そうじゃのう。

太陽軍......さっきまでは悪魔の森の精霊の街の場所にいたはず。


大陸の大きさからしても、もしかするとワシらを追い森の西側にまで踏み込んでおるかもしれん。

ここもぼちぼち危ないかもじゃのう」


「太陽軍の追っ手......いや、それより恐ろしいのは森を知り尽くしている悪魔騎士だろう。


ドゥートス曰く、悪魔の森の悪魔たちは人の肉体を依代に新たな悪魔を現界させるとかなんとか。

つまり、この森で最も脅威と言えるのは悪魔だ。


アイツらから逃げない限り、僕らは永遠に厄介な森の猛者たちに追い続けられることになる」


「そうじゃのう。

悪魔か......とんだ食わせ者じゃったな。

奴らのおさ霊陽神アメトスとやらからも結局財宝とやらを貰ってないしのう。


願いを叶えるというのは一体なんだったのじゃ?」


「うーん。

けど、アメトスが太陽の王にやられたのは不幸中の幸だったかもしれないね。


彼ら、人間なら無条件で呪い殺せるから」


「呪い殺す......?」


「知らないのか?

悪魔は神気を帯びない動物ならば無条件で服従させたり、あわよくば即死させたりできる呪いのスペシャリストだぞ?


それを知らずによく生きてられたな、モンズ......!」


「そ、そうじゃったのか.......!

へ、へぇ〜......し、しし、知らんかったわい.......!」


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