第二十三話 究極の手抜き
ワシとダイドロットは同時に地面を蹴り出す。
それと同時に二人の武器、剣と盾が交錯する。
「.......その盾、さっきの盾とは違うな。
その溢れ出る神気、一体どこで調達した?」
「さっき知人からもらったわ。
お前さん、意外と記憶力が良いのかのう?」
「良いも何もない。
違和感に気づけない武人は二流なり、だ......!」
石の剣王の闘気の宿った剣の強打がワシを襲う。
ワシは深層の盾『ファルアド』で早速それらを凌ぐと、盾によるカウンターを決める。
「反打盾!!!」
ワシの盾の反射が直接、石の剣王の腕に乗る。
が......石の剣王はカウンターの威力を空中回転で受け流すと、すぐさま二連撃をワシの頭上から叩き入れる。
「二読剣」
「点速」
ワシは瞬間移動の如き点と点を繋ぐ高速移動を実行。
剣技の直撃をギリギリで交わし、少しずつ間合いを見極める作業を実行する。
「はーっはっはっは.......!
速いな、盾狂い.......!
お前、まだまだ実力を隠してるな?」
「お前さんこそ、遊ぶのが下手くそすぎじゃ。
おかげで手加減してるのが手に取るように丸分かりになっておるがのう」
「......流石だ。
やはり俺の目に狂いはなかった......!
盾狂い、お前の盾、俺が打ち破りたくなった......!」
ワシは防御を固める。
次の攻撃、もしくは例の石化に備えるためだ。
「そう構えるな。
今回石化の能力は使わん。
正々堂々、お前と勝負するために来た.......!」
「ならば、それを証明してみい......!」
ワシは再度『点速』を使い、転々と高速移動を実行する。
この能力は歩法による消耗が大きいのと小回りが利きにくいという弱点を秘めている。
そのため見切られれば致命打を受けるリスクはあるのだが.......。
「......盾が邪魔だな。
おかげで付け入る隙が見当たらん」
そう、そのリスクを補うための盾なのだ。
盾とはつまり、王道から外れた守りの武器。
剣や槍、それらとは比べ物にならないほどの『日陰の武器』。
だが、ワシはこの盾にこそ、武道の真髄を極める足掛かりがあるのではないかと考えていた。
「亀戦法はつまらんな。
まずはそのリズムを破壊してやろう......!」
ワシの考える答え。
それは『盾という縛りでいかに相手に勝つか』。
守りしかないこの武器でいかにして攻撃を相手に通すか。
そこに、ワシの求める答えがきっとあるのだと、ワシは信じていた。
いや、運命の盾に出会った時から、ワシはそれを信じざるを得なくなった。
ワシの運命は、とある盾によって変えられた。
『賢者の神盾』。
世界のどこかにあるという、神域の物質で形成された秘宝。
その運命とも言える武器の存在、その憧れと浪漫が僕の武人の人生への足掛かりとなった。
今や憧れは捨てている。
だが、それでもワシは盾という武器への魅力に取り憑かれ、自身の武道を補うためありとあらゆる武術に手を出し、会得した。
それが、ワシの盾道、人生だ。
「誘いじゃよ?」
ワシは中距離を保持し飛び込んでくるダイドロットに拳を構えた。
「なッ!?
なんだその反射速度は!?」
「盾の奥義は全ての武道の集約点......!!!
つまり、究極の手抜き、その真髄なんだよ.......!」
ワシは拳をギュッと握り地底領の地面を殴る。
その瞬間、地面からモンズの拳越しに注入された闘気が波動となって出現する。
「まさか、お前の言う真髄って......!」
「最強の定義じゃ。
今回は一撃で蹴りをつけるぞ.......!」
闘気の揺らぎ、強烈な衝撃波がダイドロットの足元をぐらつかせる。
その瞬間をモンズは打ち抜いた。
「究極の手抜き!!!」
ワシの拳、最強を目指す拳がダイドロットに炸裂する。
無論、一撃による気絶だった。




