第二十二話 契約と追跡者
勝負は一撃で、血液坑道は崩れワシが脱出する頃には崩壊している。
ワシは完膚なきまでのリベンジを血液坑道で果たすと、再度少年の石像を担ぎ、地底領にいる深層の書神の元へと進んで行った。
さっきまでワシがいたはずの地底領の闘技場は綺麗さっぱり解体されており、深層の書神は再度新たな建築を開始していた。
「お帰り、盾の人。
闘技場は飽きたから、次は書斎を作ってるわ」
「相変わらず、凄まじい精密さじゃな、その物質操作。
一体どうなっとるんじゃ......?」
ワシは深層の書神の織りなす魔法のような物質の解体と構築の技能に度肝を抜かれる。
次に作っているのは書斎.......じゃが、その前に。
「建築に夢中なのは構わんが、少年の石化のことを忘れんで欲しいのう」
「忘れてないわよ。
今、独房で石化を解くための融解液の作成中。
これが終われば、私たちは晴れて他人同士になるわけね」
「そういえばこの盾、お前さんに返さねばならんのう。
ほれ、なかなかの使い心地じゃった。
感謝するぞ」
「......それはあなたに贈ったものよ。
別に返さなくて結構よ」
「本当か!?
そりゃ素直に嬉しいわい!!!
しかし、これだけ良い物を貰っておいて何のお返しも無しとなると、流石に気が引けるのう。
何か、お返しはできんかのう?」
「なら、書斎の建築中に契約を交わしましょう。
私たちが交わすのは『基本契約』.......そのうちの一つ、『武器契約』よ」
「武器契約?」
「月に一度、もしくは年に一度、偶像神から契約者に武器を贈るの。
あなたの場合、月に一回ペースでも足りないかもしれないし、特別に月一の契約にしてあげるわ」
「よ、良いのか!?」
「その代わり、私に逆らうことはできないし、忠誠を誓うという形で最低三日に一回は祈ることになるから、それを忘れないでね?」
「三日に一回の祈りじゃな?
じゃが、それを忘れた場合は?」
「当然、お仕置きよ。
祈りを忘れるなんて不届な契約者は罰を受けるわ」
「ば、罰!?
わ、分かった......!
誠心誠意、お前さんに尽くそう!!!」
「分かればよろしい......!
じゃ、書斎も完成したから、そこで待ってて。
彼の石化、解いてくるから」
「ワシが同行しちゃあならんのか?」
「ダーメ。
君はここに居残り。
君の因縁の敵が、必ずここに来るから、あなたは書斎を守ってて」
「要は警備ってことかの?
しかし、こんな地底などに一体誰が来るというのじゃ......?」
そう、ワシは完全に油断していたその時、頭上から物凄い地鳴りのような音が響き渡った。
「な、なんじゃ!?」
地底領の真上、地上と地底の繋ぎ目から巨大な岩が降ってくる。
それは、明らかに誰かの手でくり抜かれたものだった。
「守れってこういうことかい!!!
無茶をさせるのう!!!」
ワシは上から降ってくる巨大な岩から書斎を守るべく地面を蹴り、そして岩を蹴り飛ばす。
その時だった。
「いた......!
我が主の仇、やはり地底に逃げ込んでたか!!!」
岩の上から現れたのは、少年を石化させた張本人、石の剣王ダイドロットだった。
「ダイドロット!?
お前さん、まさか地上から飛び降りてきたのか!?」
「当たり前だ。
俺の嗅覚を舐めるんじゃない。
たとえどこにいようが、俺の鼻から逃げられるヤツなんざいやしない.......!」
「厄介な能力じゃのう......それに加えてあの石化能力まで。
なるほど、お前さんが太陽軍の追跡者というわけか.......!」
「そうだ。
石の剣王......そして太陽軍きっての追跡能力を持つ追跡のスペシャリスト.......!
それが俺だ.......!」
「なんじゃ、ただのストーカーじゃないか」
「誰がストーカーだ!!!
追跡者の役割を果たしているだけだ!!!」
「ま、どちらでも良い。
ワシはここで用心棒を頼まれたんじゃ。
悪いが、ここを通すわけにはいかん.......!」
「我が主を屠ったあの男もそうだが.......なぜかな。
お前と相対すると、なぜか心が高揚してくる......!」
「強者との戦いに飢えておるのか?
まったく、類は友を呼ぶというのは本当じゃな。
ワシらはかつてないほど、強敵を欲しているのじゃ......!」
「戦の神、そして剣の神よ......この男との戦いは、おそらく宿命だ。
間違いなく、歴代最高の好敵手になる.......!」
「剣対盾......リマッチじゃ.......!」




