表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ローカル  作者: 不機猫
68/71

好きな人

 昨日は、徹夜で始発の電車で、海のそばにある実家に戻ってきた。そして、倒れこむように眠っていた。

波の音、そして潮の香りが気持ちよかった。

 昔のようなサーフィンはできないけど、波の静かな時には、時折りロングボードを持ち出して波と戯れるのが最近の僕の楽しみになっていた。

気持ちよく眠っていると夢を見た。

 僕は、家の前の海岸から海に沈む夕日を見ていた。そうしていたら、髪の長い女性のシルエットが海の中から近づいてきた。

それが、女神さまだと夢の中の僕はすぐに気づいた。

「海人。」と彼女は、僕の名前を呼んでくれた。なんども何度も。

そして、抱きしめられた。なんて、幸せな夢なんだろうと思ったら目が覚めた。

眠いながらも僕の部屋の中に誰かが座っている気配がした。

おばあちゃんかな?起きてこないのを心配して見に来てくれたのかな?そんなことが、今まで数回あった。

ゆっくり目を開けると、そこには、明日香さんが座っていた。

「海人。やっと起きた。何度呼んでも起きてくれないから心配した。」

「えっ、何しに来たの?」

「あなたの手紙の通り、好きな人と幸せになりに来ました。」

「それとも、私のこと嫌い?」

「嫌いでもいいわ。絶対好きになるようにしてあげる。」

そう言って、彼女は僕を抱きしめた。

僕も、彼女を抱きしめた。

そうか、話し合わなくても彼女を抱きしめればよかったんだ。

そんな勇気がなかった。そして、嫌われてもいいから、自分の気持ちを素直に言えなかった。

「やっぱり、明日香の方が強いな。小学校の時から変わってない。」

「そうよ、私の方が強いんだから、海人は、私の言う通りにしてればいいのよ。」

「わかった。」

僕たちは、お互いを見つめ合って、それからキスをした。

それから、手をつないで二人で下に降りて行った。

「おじいちゃん、おばあちゃん、ちょっと、明日香と散歩に行ってくる。」

そう言って、僕たちは、家の前の海岸を二人で歩いた。

今まで、自分で悩んでいたこと、研究で分かったことを明日香に話した。

そして、明日香は、恵と一緒にメイドカフェでバイトしてること、それと、京香さんと優香さんと楽しく暮らしていること、それと、大学での生活を話してくれた。そして、いつも僕のことで悩んでいたこと。

手紙をもらったら、いてもたってもいられなくと来てしまったことを話してくれた。

「僕は、これからは、なんでも隠さずに話すことにします。このことを信じてもらうために、今から、僕の研究室に来てもらってもいいですか?」

「いいわ。ここから近いんでしょ?」

「一回、実家のお父さんとお母さんの顔を見てから、行くわ。」

「じゃ、僕も着替えてから、明日香のお家に迎えに行くよ。」

そう言って、二人は別れた。

僕は、家に戻って、簡単に食事して、シャワーを浴びて、服を着替えて、明日香の家に向かった。

明日香の家に付いて、呼び鈴を鳴らした。

明日香が、すぐに出てきてくれた。

その後から、お父さんとお母さんも出てきてくれた。

「ご無沙汰してます。ちょっと明日香さんと僕の研究所を紹介したくて出かけてきます。夕方には、戻ってきます。」

そう伝えて、僕と明日香は駅に向かった。

 研究所に着くと、守衛所に明日香学年証を見せて、パスをもらった。

「結構、大きいでしょう。僕の研究室は、ここの5階」

そう言って、エレベーターのボタンを押した。

上っていく透明なエレベータのガラスから、外を二人で眺めた。

「海が、綺麗ね。」

「みんな、最初これに感動するんだよね。僕も、ここからの景色が見たくて研究所に来たくなる。」

「わかる。」

「わたしも、玲子さんに言われた通りにすればよかったかな。」

「ううん、まだ早いよ。明日香には、今後のためにもっといろんなことを経験してほしい。」

「ここには、いつでも来てもらっていいようにしてあるから。」

「そのパスちゃんと見て。明日香の名前が入ってるでしょ。」

「あっ、ほんとだ。」

「君のパスだよ。ボスが、気を利かせて作ってた。」

「そうなんだ。」

5階に着いた。そのまま、僕の研究所に案内した。

今日は、日曜日だから、他の研究室は閉まっていた。

一番奥の部屋の前まで来た。

「君のパスを当ててごらん。」

明日香は、不安そうにパスをリーダーにあてた。

ドアのロックが、空く音がした。

「この部屋だけだよ。他の部屋は、セキュリティが掛かってるから入れない。」

「逆にこの部屋は、僕と明日香と他数名の人しか入れない。」

「中に入って。」

 そこには、いつもの光景が有った。電子顕微鏡に試験官、ビーカーに生理食塩水、そして専門書。

「そこの椅子に座ってて。コーヒーいれるね。」

そう言って、僕は、お湯を沸かしてコーヒーを入れた。

「ここからも、海が見えるのね。」

「うん。ボスが、気を利かしてくれた。」

「今日僕が、見せたいのはこれ。」

それは、僕が自分で調べた僕の血液検査のデーターだった。

 それを見た明日香の顔色がみるみる変わっていくのが分かった。

「僕の見立てだと、持って後1年かな?」

「それまでに、薬ができてもあと数年ってところかな?」

「このことは、誰も知らない。今なら、お互い離れているから、誰も君のことを悪く言わないよ。きっぱり別れようと思って、手紙を書いた。」

「でも、駄目みたい。明日香、死ぬまで一緒にいてください。」

「最初から、そのつもりよ。」

「でも、数値が悪すぎるわね。私も、専門的な知識は無いけど。」

「一緒に、頑張りましょう。」

「そういってくれると嬉しい。」

「後、とりあえず、玲子さんには、話をしましょう。」

「私も、海人と一緒に頑張りたいから、玲子さんの力を借りるわ。」

「そうしよう。来週、東京の祖父の家で会うことになってるけど、来れる?」

「大丈夫。絶対に行くわ。」

「ありがとう。なんか、何とかなりそうな気がしてきた。」

「話してくれてありがとう。私も、こっちに来たい。」

「それも、玲子さんに頼んでみるよ。」

 僕は、今までの研究内容を一通り明日香に説明そた。

 気付いたら、研究室に夕日が差し込んできた。

「そろそろ、帰らなきゃ。」

「勤務体制が、厳しくて。昨日徹夜したから、そろそろ帰らないと。」

「後、明日香とキスしたいけど、監視カメラが見てるからダメ。」

「残念。」

そう言って、二人で笑った。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ