明日香
その日、明日香は、電車に乗ってお姉さんのお家に向かった。
昨日は、先日海人のお母さんの会社の社員になることを勧められて、思わず躊躇した自分に驚いた。
海人が好きだし、ずっと一緒に居たいとは思っていたけど、周りから勧められると不安になってしまった。
何が不安なんだろう?高校時代は、2年以上も離れていたけど全然不安じゃなかった。
目的が有ったから?でも、それなら今はその目的に対して何も考えずに進めばいいじゃん。
そう思ったけど、進めない自分がいた。
駅からバスに乗り換え、しばらく行くと教えて持ったバス停のアナウンスが流れた。
降車ボタンを押す。
バスが、完全に止まる前に立ちあがったので思わずよろけてしまった。
そのまま、バスから降りて、発車するバスを見送り、同じ方向に歩き出した。
最初の交差点を左に曲がって後はまっすぐ。
「このあたりからもう潮の香りがするんだ。」そう思いながら進んでいくと見覚えのあるあるお家が見てて来た。
庭から、そのまま玄関の扉まで向かって、呼び鈴を鳴らした。
「いらっしゃい。」
後から、声がした。振り返るとそこにウエットスーツの姉がいた。
濡れるのも気にせずそのまま抱き付いてしまった。
「明日香どうしたの?服濡れるよ。」
「ごめんね、朝からサーフィンしてて、そろそろ来るころかな?と思って、帰ってきた。」
「今日は、優香は、実家にかえってるから、二人だけだから遠慮しなくていいわよ。」
「お姉さんの胸で、思いっきり泣いてみる?」
「でも、その前に着替えさせてね。」
「ごめんなさい。」
思わず、姉の顔を見て、泣いてしまった。
そのまま、扉を開けて、リビングのソファーに座って、周りを見渡した。
外で、シャワーを使う音。それから、お風呂の扉を開ける音が聞こえてきた。
暫くして、バスタオルで髪を拭きながら、着替えを済ませた姉がリビングに入ってきた。
「何か飲む?」
「じゃ、オレンジジュース。」
姉は、冷蔵庫を開けるとオレンジジュースをコップに入れて持って来てくれた。
「ありがとう。」
「今晩は、泊まっていくでしょ。」
「うん。」
「一軒家は、一人だとちょっと寂しいのよね。」
「二人の方が、うれしい。」
「それに、泣き顔の妹をひとりにできない。」
「ありがとう。」
「今晩、お酒でも飲む?」
「まだ、未成年だからやめとく。」
「そう、残念。一人で飲むか?」
「お姉さん、私、海人と別れるかもしれない。」
「そう。」
「先日、海人のお母さんから、社員にならないって言われて、思わず躊躇した。」
「そうなんだ、それで。」
「海人は、社員になって、新しい研究所と大学で色々勉強したいって、でも私、大学に入ったばっかりだし、もう少しゆっくりしたいと思って断ったの。」
「大学に入ったのも、海人の病気を治したいからと思っていたのに、違う行動をした自分にびっくりした。」
「人間て、そんなものよ。」
「色々道が有って、こっちを選んだ方がいいってわかっていると選べるけど、2つしか選択肢がなくて、こっちにして!って言われると思わずひるんじゃうのよね。」
「おねさんも、そんなことあるんだ。」
「あるわよ。」そう言って、お姉さんは、抱き付いてきた。
あったかい。そのぬくもりに、しばらくじっとしていた。
「まあ、しばらくここにいたら。部屋も空いてるし。」
「大学は、遠くなるけど、海人君とわだかまりがあるなら、毎日顔を見るのもつらいでしょ。」
「うん。」
「気持ちが、はっきりしたら、その時に決めればいいよ。」
「それでは、大学生活楽しみなさい。」
「家賃は、払ってあげるけど、食費は、自分で払いなさいよ。」
「えェー。」
「いつまでも、甘えるんじゃない。」
「でも、今日は、甘えてもいいでしょ?」
「わかったわよ。」
それから、夕方まで、大学の話とかで盛り上がった。




