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ローカル  作者: 不機猫
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別離

 翌週、明日香は、お姉さんが住んでる海岸近くの平屋に引っ越していった。

僕は、勉強が忙しいと言って、見送りだけした。

事実、学校の授業と、図書館での調べもの、さらには、玲子さんの会社の社員になるための勉強と色々やることが有った。

 今までなら、明日香優先で対応していたけど、先々週からのすれ違いから、さらにおかしくなっていた。

研究所から帰った後も、一方的に研究所のことを話してしまって、明日香とお姉さんの話は、何も聞いてあげられなかった。

それを、ほほ笑みながら聞いてくれていた明日香の気持ちまで、考えられなかった。

 そして、日曜日。

明日香から、突然、引っ越しの話を一方的にされた。

そもそも、その話をするためにお姉さんの所に行ったのだから、当たり前の結果といえば結果だった。

それに、新学期には、ここと研究所と大学を行ったり来たりするから、どうしようもないことはわかっていた。

 明日香の話に、頷くことしかできなかった。

せめて、引っ越しの手伝いとも思ったが、体調がすぐれないと嘘をついて、ボスにすべて任せてしまった。

 もしかしたら、僕の体調を気遣ってもう少しここに残ると言ってもらえないだろうかという、甘えた気持ちを見透かされたように、明日香は、出て行った。

 明日香が、でて行ってからしばらくは、学校へも行かずにベットに横たわってうつろな日々を過ごした。

 そんなこんなで、1週間程度無駄に過ごしたが、その日は、朝から、ボスが迎えに来て、玲子さんの会社に連れていかれた。

「海人、大丈夫?」

「顔色が悪いけど。」

「大丈夫。ありがとう。」

「今日、連れ出してもらえなかったら、このまま、世の中に出れなかったかも。」

暫くして、玲子さんの会社に着いた。

「とりあえず、入社試験は、合格よ。」

「おはよう、海人。今日は、朝からで申し訳ないけど、会社の人に顔見せをしてもらうわ。」

「後、必要書類は持って帰って、記入したら郵送で送ってね。」

「わかりました。社長。これからは、よろしくお願いします。精一杯、頑張ります。」

そう言ったとたん、自分の嘘に気分が悪くなって口を押えて、トイレに駆け込んだ。

 胃の中のものをすべて吐き出した後、再び、玲子さんの所に戻ろうとしたが、彼女は、すでに朝からの会議に出かけた後だった。

書類を持って帰ろうとすると、ボスの

「坊ちゃん、送っていきますよ。ちょっとだけ待っててもらえますか?」

の言葉に頷いた。

 ボスが、別室に消えていくのを見届けると、僕はそのまま自分の存在をかき消すかのように、会社から抜け出した。

 どこへ行く当てもなく電車に乗っている、と見慣れた風景の駅が出てきたので体が自然と動き出し、その駅に降りた。

改札を出て歩いていると、そこは、高校生の時に明日香と一緒に歩いた秋葉原の駅前だった。

 今は、平日の昼間だけど、もしかしたら恵がいるかもと思って、メイドカフェの扉を開けた。

ちょうど、店長が、お店を開ける準備をしていた。

「ああ、海人、いらっしゃい。久しぶりね。」

「恵、います?」

「今日は、大学があるから、夕方にならないと来ないわよ。」

「そうですか?じゃ、また来ます。」

「今度は、また、明日香さんと来てね。」

 その言葉に、力なく笑うと僕は、そのお店を後にした。

そのまま、ふらふらと歩いていた。気づいたら、上の動物園のベンチに座って、じっと動かないサイを見ていた。

「君も、僕と一緒で、自分の居場所が分からなくなったのかい。」

「それで、悲しそうな眼をして、じっとしているんだよね。」

何時間そこにいたかわからなかったが、周りが暗くなったので家に帰ることにした。

家に帰ると、抱えていた書類が、左手から消えているのに気づいた。

そう思ったときには、熱を出して、再びベッドに寝込んでしまった。

 何日も寝込んでしまった。やっと、熱が下がって、起き上がると机の上に亡くしたはずの書類が乗っていた。その書類の上に、メイド服で笑顔の恵の写真が載っていた。

写真をひっくり返すと、『お店の扉の前に落ちていたので持ってきました。熱下がったら連絡下さい。』とピンクの蛍光マジックで書いてあった。

やっぱり、友達っていいよね。恋人は、別れると2度と会わないけど、友達は、そんなことないよね。

 今、何月何日の何時何分なんだ?そんなことを思いながら、僕は、その書類と恵の写真を持って、ふらつく足で食堂に向かった。







 














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