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ローカル  作者: 不機猫
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事件

 翌日から、僕たちは、いつもの時間にいつもの電車に乗っていつもの学校に向かっていた。

本当に昨日まで、ハワイに居たのだろうか?でも、この日に焼けた肌が、それを証明してくれる。

だって、学校に着くと11月後半なのに、2年生だけ、日サロに行ったみたいに真っ黒だった。

ただ一人を除いて。

 しばらくは、みんな修学旅行の余韻を楽しんでいたが、期末試験が近づくにつれ、授業にも緊張感が出てきた。

そして、いつもの学生生活に完全に戻った。これも、ただひとりを除いて。

「恵、ごめん。お父さんに連絡してるけど、会議とかで、動けないみたい。昨日も連絡取れてない。」

「もう少し、待ってね。」

「どうしよう、今週末のバイトの時に、みんなにお土産渡す約束してるんだ。」

「あした?ごめん、今日届かないと駄目だね。」

お昼休みに、恵とそんな会話をしてから、午後の授業を受けた。

やっと、6時間目が終わって、ふと窓の外を見ると、ボスのピンクの車が、学校の中に入ってくるのが見えた。」

「あっ、ボスだ。どうしたんだろうこんな時間に。」

「恵、ボスの車が来たから、星野さんと図書館に行くついでに会ってくるね。恵も、一緒にいかない?」

「ぼくは、いいや。お父さんに、荷物いつになるか聞いておいてね。」

恵は、そのまま、下を向いて帰っていった。

 僕は、2年1組の星野さんのところに行って、ボスが来たことを伝えた。

『学校に、ボスが来たみたい。』

『何か用事かな?』

『いつもと、違う時間よね?』

『とりあえず、図書館に行くついでに声を掛けてみる。』

『わかった。』

星野さんは、クラスのみんなと元彼の彼女にも挨拶して、僕と一緒に教室を出た。

 図書館までの並木道に、ボスの車が止まっていた。

僕の前を歩いていた星野さんが、急に立ち止まったので危うくぶつかるところだった。

どうしたのかな?と思って、星野さんの視線の方向を見た。

ここにいるはずのない人が、そこに立っていた。

「港、どうしてここにいるの?」

『「海人、星野さんこんにちわ。」』

「海人、手話合ってる?」

「合ってる、合ってる。すごい。」

「でもできるのは、これだけね。」

「実は、今日、恵の荷物届けに来た。ハワイから。」

「海人のお父さん、ほんとうに忙しくて荷物送れそうになかったから、それに、前から、日本には行きたいと思ってた。だから、パスポートは、取ってあった。」

「おじさんに、もし、荷物送れないなら、僕、日本まで、持っていきます。ついでに海人の所に行って、観光したい。って言ったら、その場で、玲子さんに連絡してくれて、飛行機も手配してくれた。」

「それで、今朝、成田に着いたら、このおじさんが迎えに来てくれた。」

「ボス、ありがとう。」

 何故か、星野さんは、僕の後ろに隠れてしまった。

ボスに港なんて、星野さんにとっては、最高の1日なのに。

『どうしたの?』

『日焼けして、顔が黒いから恥ずかしい。』

『健康的で、素敵だよ。それに、ボスも港も僕も日焼けで黒いよ。』

そう言うと、星野さんは、僕の後ろから出てきた。

「星野さん、お久しぶりです。その後、いかがですか?」

『星野さん、その後大丈夫ですか?って』

『ボスのおかげで、楽しくやってます。ハワイで日焼けした。』

そして、おもむろにカバンの中から、ゴリラのぬいぐるみを出すと、『ボスにお土産。』って差し出した。

「ボスのおかげで楽しくやってますって。それ、お土産だって。」

「僕には、無いの?」と港。

『僕には、ないの?だって。』

『あっ、すみません。今度買ってきます。』

「今度、買ってきます。だって。港。」

「じゃ、僕から、星野さんに。」と言って、港は、ポケットから、貝殻のネックレスを取り出して星野さんの首にかけて、星野さんの右の頬と自分の右の頬をくっつけた。

 おいおい、そのネックレスいくつ仕込んでんだ?それに、ここ学校なんだけど。

明日香が、違う学校でよかった。

「ボス、何か言ってやって。」と言おうと思ったけど、星野さんの顔を見ると、もう遅いことが分かった。

「海人、恵は?」

「さっき、荷物が、今日届かないと思って、下を向いてさっき駅の方に帰っていったけど。」

「駅は、どっち?」

「向こうの正門を出て、まっすぐだけど。」

そう、伝えた途端、港は、駆け出した。

「港、恵、携帯持ってるから、今から電話・・・」と言おうとしたら、もう見えなくなっていた。

 さすが、野球少年は、動きも足も速い。

どうしよう、恵に電話しようか?それとも、恵をびっくりさせようか?って考えてる場合じゃない。

早く、恵に電話しなくちゃ。

5回目のコールでやっと恵が出てくれた。

「海人、何?」

「今、そっちに猛ダッシュで港が走っていったから、捕まえてくれる。」

「港って誰?」

「ハワイで、サーフィンコーチをしてくれた港だよ。」

「うそ?     わー、ほんとだ、走ってる。    こっちに向かってくる。」

「わー。    捕まった。僕、ハワイで何か悪いことしました?助けてください。」

はあはあと、息の声だけ恵の携帯から聞こえる。

「違うよ、恵、きみの荷物、ハワイから持って来てくれた。それで、今、学校から帰ったところって、言ったら走っていった。」

 おびえてる恵の携帯から僕の声を聴きながら、港は、大きく頷いた。

「ありがとう。」恵の大きな声が、こんどは、僕の携帯から聞こえた。

「恵、悪いけどここまで、港連れて来てくれない。校舎から、図書館につながる街路樹なんだけど。ボスの車のそばにいるから。」

「多分、猪突猛進だから、帰り道わからないと思う。」

だから、港は、いつも野球は、サードを守っていた。

 どんなボールも怖がらずに向かって行って、キャッチしてすぐに投げるスーパースター。でも、後先考えてないんだよな。

 しばらくして、恵と港が帰ってきた。

『「おかえり。」』

『おかえり。』

「恵くん、荷物は、トランクに入ってるから、確認して。」そう言って、ボスは、トランクを開けた。

二抱えもありそうな荷物が、そこにあった。

「間違いありません。僕の荷物です。」

「じゃ、このまま、家まで送っていくよ。」

「ぼっちゃ、いや、海人、今日から、港くんは、海人の家に月曜まで泊まる予定だから、先にお送りしておきます。」

「ボス、ありがとう。お願いします。」

「星野さんは、どうされます?」

さっきから、夢の中の星野さんを起こすと、顔を赤くして、

『自分は、海人と図書館で頭を冷やして、いえ、少し勉強してから帰ります。』

『「勉強、してから帰るって。」』

「かしこまりました。では、お先に失礼します。」

恵は、嬉しそうに港と一緒にボスの車の後部座席に乗り込んだ。

「では、失礼します。」

そう言って、ボスも車に乗り込んだ。

僕と、星野さんは、その車を見送って、図書館の方に向かった。

「一緒にいったほうが、・・・、いえ、まずはいったん落ち着いて・・・」

最近、星野さんは、独り言を声を出して言うようになった。多分、本人は、気付いてないと思うけど。

それから、僕と星野さんは、図書館で勉強して、いつものように電車で帰った。








      













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