帰郷
翌日、僕たちは、朝食を食べたあと、各部屋で、帰り支度を始めた。
お土産と洗濯物そしてすぐに使いそうにないものは、スーツケースに入れて、飛行機から降りて日本で着るものは、すぐに出せるように手提げバッグにつめこんだ。
これで良し、と。
ふと、恵の方を見ると、荷物がいっぱいでスーツケースが閉まらない上に、手提げバッグは、2つも3つもある。
「恵、そんなにいっぱいだと、飛行機に積んでもらえないよ。」
「どうしよう?」
珍しく、恵が泣きそうな顔をしていた。
「どうしようもないかも。」
「ちょっと高いけど、ハワイから、宅急便で日本まで送ってもらうという手もあるけど。」
「お土産買ったから、そんなお金残ってない。」
「先生に相談してみる?」
「多分、置いていけ!って、言われると思うけど。」
「後は、腐らないものなら、僕の家で預かってもいいけど、また、取りに来ないといけないよ。」
「家族で、ハワイに来る予定ある?」
「・・・」
「とりあえず、待って帰りたいものと、置いて行っても、いいものと選別して。」
「わかった。」
自分の所も、明日香の女神の衣装を置いていけば、少しは入るけど、あれは絶対持って帰りたいし。
って、税関大丈夫かな?
ホテルのロビーに集まる時間になった。
恵も、渋々大きな荷物を持って、ロビーに降りることにした。
星野さんも、彼も恵の荷物の多さを見て、寄ってきた。
『大丈夫?』
『「駄目かも」』
『「しかし、よくもこんなにいっぱいかったよね。」』
『みんなから、頼まれた。』恵は、もう声を出す元気もない。
それに、どう見ても自分用としか思えないものばっかりだ。
先生もやってきた。
「恵君、こんなには、持って帰られないから、半分ぐらい処分しなさい。」
そこに、ちょうどお父さんと港がやってきた。
「お父さん、こっち。」
「海人、元気そうになってよかったよ。ほんとは、昨日来たかったけど、抜けられない会議が有って、これなかった。」
「今日は、朝、港君から電話をもらって、それで二人で来たんだけど。」
あれ、港は?と、思ったら、星野さんとメモと手話と彼の通訳で楽しそうにしゃべってた。
「お父さん、恵がね、お土産買いすぎて、飛行機に乗れないんだけど、何とかならない?」
「二三日遅れてもよければ、こっちから送ってあげるよ。」
「だって、恵、どうする。」
「すみません。お願いします。」
「いえいえ、こちらこそいつも海人がお世話になっているので、これぐらい大丈夫ですよ。」
「海人の所に、送ればいいよね?」
「そうして頂けると助かります。」
「僕が、海人のおうちまで取りに行きます。」
「じゃ、そうしよう。」
時間になったので、点呼が始まった。
港とお父さんは、恵の荷物を持ちながら、僕たちの集団から離れた。
そして、バスに乗り込む僕たちを見送って手を振ってくれた。
このまま、空港に行って、飛行機に乗ったら、次は、また、いつもの景色に戻ると、思ったら携帯が鳴った。
明日香からのメールだ。
『あっと、言う間だったね。楽しかった。』
『僕も。』
『今度いつ会えるかな?』
『冬休み、東京に来ない?』
『一緒に、受験勉強しよう。』
『したい。』
『また連絡するね。』
『恵さんから、借りた女神の衣装知らない?』
『ぼくが、持ってる。』
『じゃあ、それ、私だと思って、大事にしてね。』
『帰ったら、洗濯して、恵に返そうと思ってたけど、やめた。』
『またね。』
『また。』
明日からは、いつもと同じ学園生活が、はじまる。
そして、修学旅行が終わった僕たちは、明日からは、何も考えずに大学の受験勉強に打ち込める時期が始まる。




