修学旅行前日
その日は、朝から、2年生の教室だけ、ざわざわしていた。
恵に関しては、どの服を持っていこうかしらと、朝から、教室の中をぐるぐる回っていた。
僕はというと、グループわけで決まったメンバーと向こうでの過ごし方の打ち合わせをしていた。
最大の問題は、恵がこのグループのリーダーだということだ。
「リーダー、うろちょろしないで、打ち合わせに参加してよ。」
「とりあえず、初日と最終日は、グループ行動になるんだから。」
僕の隣の北村君が、恵に声を掛けた。
北村君は、恵とはよく話をしていたけど、僕とは、今日初めて会話する。
「わかった。今、行く。」
「北村君は、恵と仲いいの?」
「そういううわけじゃないけど、中学から、一緒だから、気心が知れてるって感じかな。」
「メイド服を着たりしないから、その辺は安心してくれ。」
「山田君は、随分恵と親しそうだけど。」
「いや、憑りつかれたと言ってほしい。」
「わかる。」そう言ったのは、北村君の隣の酒井君。
「でも、憎めないし、変なところで頼りになるんだよね。」
「人数合わせにちょうどいいっていうか、どんなことを頼んでも嫌って言わないんだよね。」
「もしかして、器がでかい?」
「いや、何にも考えてないんだと思う。」
「今も、このグループのリーダーなのに、仕事してないし。それに、予定決まってないのこのグループだけだし。」
「リーダー、勝手に決めるよ。」
「初日は、水族館がいいかも。」
「ハワイ特有の生物も見れるって。」
「山田って、海のもの好きだよね。」
「だって、僕の名前、海の人って、書いて、海人だから。」
「名は、体を表す。」っと、恵が帰ってきた。
「じゃ、初日は、眠いし、暑いとこ嫌だから、水族館で決まりね。」
「二日目は、どうする?」
「ごめんね。二日目はちょっと用事がある。」
恵の方を見るとにやにやしてる。
「じゃ、二日目、三日目は、自由行動っと。」
「4日目の最終日は、ホノルルの街中散策。」
「まあ、そんなところでしょう。」
「じゃ、これで、先生の所に予定表出しとくね。」
「ハワイじゃ、四人部屋なんだよね。」
「どんなところかな。」
「今から、楽しみだよね。」
それから、ホームルームが、はじまり、注意事項等の説明が有った。
「それと、最後に必ずパスポートを持ってくるように。心配なら、今から先生が預かっておく。」
「パスポートと着替えが有れば、それなりに楽しめる。」
「最後に、恵、旅行かばんは、スーツケース各自一つ。重量オーバーの場合は、そのまま、羽田のコインロッカーに預けるからな。」
「えっ、そんなの聞いて無い。」
「もう一度、パンフレットを読んでくれ。明日は、13時に学校集合。それから、バスで羽田に向かいます。送れたら、自分で羽田まで来るように。以上」
僕は、その日も図書館で勉強していると、星野さんが、やってきた。
『明日、何時の電車に乗る?』
『11時過ぎの準急かな。とりあえず、早めに来て、学校でご飯食べようと思ってる。』
『じゃ、私も同じ電車に乗る。やっぱり、一人じゃ不安だから。』
『わかった。僕も、一緒に行く人がいた方が安心。』
その夜、明日香に電話した。
「今晩は。」
「明日だね。準備できた?」
「ばっちり、と言いたいところだけど、何を持っていこうか悩んでる。」
「大丈夫だよ。もしもの時は、お父さんの所から借りるから。」
「そうなんだけど、何を着ようか悩んでるの。」
「ハワイは、あついから、Tシャツかな。それと、スコールがあるから、着替えは、多めの方がいいかも。防水のウインドブレーカーか、ポンチョがあると便利かも。」
「そうじゃ、無くて、お父様の所に行くのにどうしよう。」
「それなら、先日、京香さんの所に着て来た、ノースリーブのワンピースがいい。あれ、かわいかった。」
「そうね、あれにする。私もあの服好きだから。」
「明日は、学校から、バスで羽田。」
「でも、遠いから、朝早いのよね。海人の学校は?」
「お昼に集合して、そこから、やっぱりバスだね。」
「パスポート忘れないようにしないと。」
「そうだね。明日、空港で会えるといいね。」
「じゃ、お休み。」
「おやすみなさい。」
僕は、明日もっていく荷物の最終チェックをした。
パスポートとそれと、お母さんのお薬。
ちょっと多めに持っていくかな。




