星野さん覚醒
あの楽しかった休日の余韻を、できる限り楽しもうと学校で、恵と星野さんに会うと、あの時の話で盛り上がるようにした。それで、あっという間に、一週間が過ぎた。
恵と僕は、2年1組のその後の様子が知りたくて、お昼休みに恵の友達に、いつものベンチの所に来てもらった。
僕たちは、3人で食事が出来るように売店でお弁当を買って、彼女を待っていた。
暫くして、彼女がやってきたので、3人でお弁当を開けて食べた。
そして、缶コーヒーを渡して、
「その後、状況どう?」って、恵が彼女に聞いた。
「それがさあ、以前は、彼女いじめられても何も言わなかったのに、今週から、急に声を出して、反論しだしたんだよ。私、耳が聞こえないから、言いたいことがあるなら、手話を使ってください。皆さん、手話できるでしょ。って。」
「この学校の生徒、もめてるようだとみられるとその生徒を蹴落とすために、先生に告げ口するんだよね。それに、彼女、理事長の知り合いが、あのピンクの車から出てきたのを知ってるから、慌てて、逃げ出したんだよね。」
「それを見て、クラスの他の女子が、手話で彼女と話し出して、一躍、時の人って感じかな。彼女といると、いじめっ子も手出しできないって感じ。みんな計算高いよね。」
「先生も彼女に一目置くようになったから、まあ、私も色々助かってる。」
「彼女に変わったね。って、聞いたら、恵が、彼女をしゃべるようにしたんだって?」
「さすが、裏ボス。尊敬するね。」
「いやいや、それほどでもないけど。」っと、胸を張ったのが、ちょっとだけなのは、事情を知っている僕が隣にいたから?しょうがないな、
「恵、すごいね。」とりあえず、褒めておこう。
恵は、ちょっとこちらを見たけど、僕が笑っていたので、思いっきり彼女に向かって胸を張った。
放課後、僕は、いつもの通り星野さんと図書館で勉強した。
恵は、立ち入り禁止なので、集中して勉強することができた。
6時半になったので、星野さんと図書館を出て、電車で帰ることにした。
ボスの仕事が忙しくなったのと、2週間ぐらい前から飲み始めた、お母さんの薬が効きだしたので、体調がよくなったのと、太り出したのでダイエットのために歩くようにしている。
星野さんは、ボスに会えないのが残念そうだけど、仕方が無いとあきらめているみたい。
『星野さん、最近学校楽しそうだね。いじめ、大丈夫。』昼間、星野さんのクラスメィトからは、情報として聞いてはいたけど、本人の口からも聞いておきたかった。というのも、同級生の家に同居しているという噂が立つと、またいじめられるかな?、いじめられないにしても噂が立つこと自体がストレスになると思ったからだ。
今なら、現状を知ってるのが、恵だけだし、いじめがなくなったのなら早い方がいいかな。
『いじめは、無くなったわ。それと、クラスに友達が増えた。先生も、気にかけてくれるから大丈夫。』
『だから、海人、そろそろ自宅に戻ろうと思うの。』
『いつまでも、海人のお世話になってるわけにもいかないし、それにお母さんが、心配して来週からこっちに来て一緒に暮らそうって言ってくれた。お父さんも、転勤願い出すって。』
『そうなんだ。良かった。』
『私が、手紙でこっちの事情書いたからかな?』
『いつでも。遊びに来てね。』
『おじいちゃんとおばあちゃんは、寂しがると思うけど、たぶんそうした方が、良いと思うよ。』
土曜日、星野さんは、ボスの車に荷物を載せて、帰っていった。
2週間程度だったけど、結構荷物が有ったので、星野さんが一番びっくりしていた。
『部屋が広いから、寂しくて、いっぱいぬいぐるみ持って来てたみたい。』中でも、ゴリラのぬいぐるみが一番多かった。
翌日、星野さんのご両親が、挨拶に来られた。
不安そうに、ご両親が星野さんの後ろで立ってられたので、僕が、門のところまで、迎えに行くことにした。
「いらっしゃい。星野さん。」僕は、手話を交えながら、しゃべった。
その会話を聞いて、訪問先が間違いでないことに安心したのか、
「本日は、突然お伺いして申し訳ありません。この度は、娘の玲が、ご迷惑をおかけして・・・。」
「すみません。ここでは、何なんで、どうぞ中にお入りください。」
星野さんは、ご両親の真ん中で、二人に腕を回して、僕の後を玄関に向かった。
玄関では、美香さんが、扉を開けてくれた。
「いらっしゃいませ。」
「おじいちゃんとおばあちゃんは、応接?」
「はい、お坊ちゃま。」おぼちゃまのところは、口パクで。
「祖父と祖母は、応接なのでそちらにご案内します。」
「家は、広くて古いだけなので遠慮しないで下さい。」
二人は、そのまま、応接で、祖父と祖母と一通りの会話を済ませた。
ただ、お茶出しを自分の家のようにしている娘の姿を見て、そして、手話と自分の声で会話している娘を見て、感動しているみたいだった。
そうして、1時間ほどで、星野さん家族は、帰っていった。
彼女は、今日お母さんと一緒に色々買い物に行く!と、嬉しそうに自分の言葉でしゃべっていたのが、印象的だった。
別れ際に、「いつでも、遊びに来てね。」と祖母。
「また来ます。」と言って、祖父と祖母と美香さんの手を握って、星野さんは、帰っていった。
僕も、手を出したのにスルーされた。
それを、見かねた星野さんのお父さんが僕の手を握って
「ありがとう。」と言ってくれた。
多分、娘の彼氏ではないことが、わかって安心してのことだと思う。
星野さんのお母さんは、それを見て笑っていた。




