最高な土曜日
今度は、明日香が目に涙を浮かべた。
「海人、ちょっと痩せたんじゃない?大丈夫?」
「大丈夫だよ。先週あたりから、お母さんの会社で作った薬を試してるんだ。」
「副作用として、使い始めは、体が受け付けなくて、痩せるんだって。」
「薬に体が慣れると、代謝がよくなり太りだす。そうなると、後は、食事制限で体重を増やさないようにすれば、健康でいられるって。」
「そうなんだ、よかった。」
「できれば、私も一緒に居たいな。」
「11月の修学旅行で会えるよ。」
「それで、もしできれば、冬休みは僕の祖父母のお家で一緒に勉強したい。」
「そうね。それがいいわ。帰ったら、お父さんとお母さんに相談してみる。」
「だめ!って言われたら、家出する。」
「大丈夫だよ。明日香のお父さんとお母さん優しいから。」
「部屋は、いっぱいあるから、お母さんも一緒に来てくれたらいいのに。」
「そうよね。でも、お父さんが寂しがるからって。」
「仲いいんだね。うちは、あんまり一緒にいない。」
「それでも、仲いいわよね。見てる、こっちが恥ずかしくなるぐらい。」
「会ってるときはね。」
そのまま、二人は、手をつないで庭に出て行った。
結局、トイレに入って、メイド服に着替えてみんなを驚かせようとした恵は、出るタイミングを逃して
ぐったりしていた。
この家自体が、小高い丘に建っていて、庭に出るとそのまま海に降りていけるようになっていた。
庭には、シャワーとサーフボードラックが有った。
庭に植わっているソテツがいかにも南国のイメージを醸し出していた。
僕たちが庭に出ると、京香さんが飛んできた。
「お姉ちゃん、久しぶり。」
「明日香も、綺麗になったわね。って。それどころじゃないのよ。」
「海人、何とかして!」
「星野さんに、優香をボスの彼女です。って紹介したら、急に、もっとボスに優しくしてあげてください。って言い出して。」
「本当ですか?」
僕は、そう言って、明日香の手を握りながら京香さんと一緒に、星野さんとボスと優香さんのところに向かった。
星野さんボスと優香さんの所に着くと
「星野さん、声出てる!」「ちゃんと喋ってる。」って、後ろから声がした。
みんな一斉に振り向いた。そこに、ウイッグを手にもった恵が、メイド服を来て立っていた。
「あっ、皆さん、こんにちは。海人の友達の恵です。」
友達って言うなよ。勘違いされたらどうするんだよ。明日香が、僕と彼との出会いがどういうものかを知っているのが、せめてもの救いだった。
「明日香さんも、こんにちは。今日、いらっしゃると知っていたら、もう一着、メイド服持ってきたのに。」っと言って、苦笑いしていた。
この状況で、一番びっくりしているのが、星野さんだった。
「ああ、私、喋れたんだ。そうだよね、耳は、聞こえなくなったけど、しゃべれるの忘れてた。」
「ありがとう。恵。」
「海人、手話頼む。」
「星野さん、優香さんが僕に冷たいわけではなくて、僕が忙しくて会えないだけなんだ。」
「彼女は、名前と一緒でとっても優しい人なんだよ。そして、僕は、彼女を尊敬しているんだ。」
『彼女は、とっても僕に優しくて、僕を愛してくれるし、僕も彼女を愛してます。』
『ほんとに』
「ほんとに?」だって。
「ほんとです。」
『ほんとだって。』
『じゃ、私の前で二人でキスして。』
「ほんとうなら、私の前で二人でキスして!だって。」
「未成年が、4人いるけど、気にせずやってください。」
ボスは、ちらっと優香さんの方を見た。
「しょうがないわね。未成年の3人と京香は目をつむっててよ。」
「わかったわよ。」と京香さん。
「じゃ、僕たちも目をつむってます。」
「優香さん、すみません。」
「謝んなって、ほんとに。」
そして、二人は、星野さんの前でキスをした。
ボスの、今まで見たことのないような嬉しそうな顔。
そして、みんなでおめでとう!の大歓声。
優香さんは、恥ずかしさのあまりそのまま、サーフボードを持って、海に入っていった。
当の星野さんは、おめでとう!と何度も叫んでいた。
やっと、みんなが落ち着いて、再びボスが、今度は、恵と一緒に台所に消えていった。
暫くして、優香さんが海から戻ってきた。それに、タイミングを合わせるように今度は、着飾った恵が、トロピカルジュースを配り出した。
「ボスから、皆さんに、とのことです。」
「おいしい。」とみんなが言うと、「そうでしょう」と、恵がのけぞった。
「優香さんが、僕の所に来て、今日はサーフィンやらないの?」と聞いてきた。
「ボード持ってないし、サーフパンツも持ってないから。」というと、
家の奥から、トリプルフィンのボードとかなり大きめのサーフパンツを持ってきた。
「パンツは、ボスのだけど、よかったら使う?」
「買ってあげたのに、1度も使ってないんだよね。」
「ボードは、貴方のお母さんのだからいいでしょう。」
「じゃ、お借りします。」
「手前の部屋、空いてるから着替えに使っていいよ。」
「私は、先に行ってるよ。京香もサーフィンやらない?海人も、久しぶりにやるって。」
「明日香さん、ちょっとサーフィンしてくるね。」
「優香さんも京香さんもいるから、大丈夫だよ。」そう言ってると、京香さんが近づいてきた。
「明日香、久しぶりだから海人君とサーフィンしてきなよ。水着は、私の貸してあげるから。」
「胸の所は、パッド入れれば大丈夫だから。」
「そんなの、いれなくても大丈夫です。」と明日香。思わず、恥ずかしくて、下を向く僕。
「明日香は、2番目の部屋が私の部屋だからそこで着替えて。別に、海人と一緒の部屋でもいいか?」
といった。星野さんは、何が有ったのかわからずに、恵に説明するように言ったけど『無理』と断られた。
着替えを終えて、僕と明日香は、ボードをもって海に入った。
「海の中の方が、あったかいね。」
そう言って、二人でパドリングして、優香さんの所に向かった。
「京香と思ったら、明日香さんなんだ。さすが姉妹。近くに来るまでわからなかった。」
「今日は、波が緩いから、京香は遠慮したかな。」
「海人、さっきの手話ちょっと内容違ってなかった?」
「ばれましたか?」
「まあ、ああでもしないと彼は、何にもしないからね。」
「そうですね。見かけの割に、純情ですよね。」
「でも、優香さんもボスのこと好きでしょ?」
「生意気!」
そう言って、優香さんは、先に波に乗って砂浜に行ってしまった。
「相変わらず、波に乗るのうまいよね。」そう隣の明日香に言った。
砂浜にに着くとそのまま上がって、
「お二人の貸し切りで楽しんで!私は、旦那を手助けに行ってきます。」
と言って、家の方に向かった。
「きっと、ボスの所に行くチャンスを狙ってたんだよね。」
「そうね。あの二人、お似合い!」
「京香さんには、たかしさん?そして、僕には、女神の明日香さん。」
その時、ちょうどよい波が来たので、二人で手をつない並んで乗ることにした。
お互い反対側にボードを回転させ、パドリングそしてバランスを取って立ち上がり、平行にボードを並べる。それに合わせるように、波が二人を砂浜まで運んでいった。
砂浜にいる恵と星川さんが、それを見て手を叩いて喜んでいた。
「あの二人も、姉妹みたいね。」
それから、二人でサーフィンを楽しんで、おなかが空いてきたので家に戻ることにした。
シャワーを浴びて、ボードを洗って、ボードラックに立てかけて、倒れないようにベルトを掛けた。
それから、お互いの部屋で着替えて、デッキに行くとすっかりランチの準備ができていた。
恵が、
「全部、ボスと優香さんが準備してくれた。ので、私は、給仕をします。」
そういうと、私もと言って、明日香が手伝った。
「僕も。」というと、「海人は、玉ねぎいっぱい切ったから大丈夫よ。後で、お片づけ一緒にしよう。」
と明日香。
「はい喜んで。」
ゆっくりと、土曜日の午後が過ぎていった。
そして、綺麗な夕日が、みんなを包み込みながら、海に沈んでいった。
「こんなきれいなところなら、毎週来たい。」と星野さんと明日香と僕。
「毎日、この景色が見れるのよ。」と自慢げに、優香さんと京香さん。
「この家を探してきたのは私です。」とボス。
最後に、恵が、
「私の誕生日に、こんな最高に幸せな1日を作っってくれて、皆さんありがとうございます。」と手話を、交えてお辞儀した。
「えっ、恵、今日が、誕生日だったの?だったら、もっと早くいってよ。」
「いえいえ、こんな素晴らしい誕生日パーティー無いです。」
「ちなみに、明日は、メイド喫茶で、誕生日パーティーやってますので、皆様よかったら来てください。」
「恵、ごめん、明日は、明日香を東京駅まで送っていくから無理かも。」
「えっ、東京駅から、秋葉原まで二駅なのに、冷たいな。」
「じゃ、そういうことで。」
いつの間にか、ボスは、優香さんの肩を抱いて座ってた。
それを見て、星野さんも満足そう。
僕は、明日香に会えて、ほんとに最高な土曜日でした。




