リフレッシュ
ボスの車に3人が乗って、途中の駅で恵をおろして、そのまま星野さんと僕は、祖父母の家まで送ってもらった。
ボスは、僕たち二人を降ろして帰っていった。
僕たち二人は、ボスを見送ってから、家の中に入った。
玄関に近づくと、美香さんが玄関を開けてくれた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
星野さんは、頭を下げた。
美香さんは、彼女の方に向かって、バインダーノートを広げた。
【お風呂にします?】【食事にします?】と声を出しながら。
彼女は、それを見て、ニコッと笑って
【お風呂にします?】に指をさした。
美香さんは、指でOKマークを作った。
それから、彼女の部屋に一緒について行った。
部屋の前に着くと美香さんは、僕に
「部屋の前で、待ってます。」と伝えてくださいと僕に言った。
僕は、『部屋の外で、美香さんが待っているので準備が出来たら出てきてください。』と伝えた。
『海人は?』
と、聞かれたので
『じゃ、僕も一緒にお風呂に入る。』といったら、恥ずかしそうにしたから、
『そこは、馬鹿って、頭をはたくんだよ。』『僕の方が、恥ずかしくなるでしょ。』
そう伝えると、彼女は、にこって笑った。
良かった。だいぶ落ち着いてきたみたい。
『僕は、おなかすいたから、先にご飯食べる。』
と、彼女に言って、
「美香さん、僕は、ご飯食べる。」
「おじいちゃんとおばあさんはもう食事済ませたの?」と聞いた。
「これからなので、一緒にどうぞ。」
「わかった。じゃ、二人の面倒は僕が見るから、彼女よろしく。」
「承りました。」
そうこうして、あっという間に金曜日になった。
学校からの帰り道に、ボスが、僕たちに向かって、
「明日、もしよかったら、息抜きで優香の家に、皆さんで遊びに行きませんか?」
「海人も、たまには息抜きが必要でしょう?」と、言った。
僕が、星野さんに説明する前に、恵が
「行きます。」と返事した。
最近は、恵もこの車に乗るようになった。
僕は、星野さんに
『ボスが、息抜きで海の家に遊びに行きませんか?て、言ってる。そしたら、恵が、行きますって。星野さんも行く?』と伝えた。
『僕は、行きたい。』と伝えた。
『じゃ、私も行きたい。海、初めて。』
『ほんとに。』
『だって、誰も誘ってくれなかった。』
『そうなんだ。』
「ボス、行きます。」
「了解。じゃ、明日、8時に迎えに行きます。」
「恵、どうする。」
「じゃ、いつもの駅でピックアップしてください。」
「了解。」ボスが、そう答えた。
『明日、楽しみ。』
『星野さん、今日もご両親にメールで、明日海に行きますって、連絡しておいてね。』
翌朝、ボスが、僕達を迎えに来た。
そして、大きなキャリングケースを持った恵を、いつもの駅でピックアップした。
「恵、その荷物、何?」
「内緒。」
『内緒だって』僕は、星野さんに伝えた。
それから、ボスは、外房線とすれ違ったところで大きなスーパーマーケットに車を止めた。そして、いっぱい食材を買い込んだ。
「もしかして、お母さんも来るの?」
「すみません。玲子さんは、今日は、仕事が忙しくてこれないのでごちそうしてあげてね。とおっしゃってました。」
「ということで、私が、腕を振るいます。海人、手伝ってくれる?」
「わかった。」
「海人、料理も出来るの?」
「結構、得意だよ。」
こんどは、恵が、星野さんに
『今日のお昼、ボスと海人が作るんだって。』と伝えた。
それから、しばらく走ると海沿いの道に出た。
星野さんは、ずうっと海の方を見ていた。
『これが海なのね。』独り言のように手を動かした。
優香さんと京香さんの棲家に着いた。
僕たちは、二人に挨拶した。
『こちらが、優香さんと京香さん。』
「星野さんと、恵です。」と二人に紹介した。
それから、僕とボスは、食材の入ったクーラーボックスを台所にもっていった。
優香さんは、ボスにウインクするとそのまま、ボスの車でどこかに出かけた。
「優香さん、どこにいったの?」って、ボスに聞くと、「さあ?ビールでも買いに行ったのかな?」
京香さんは、星野さんと手話で会話していた。
恵は?と言うと、キャリングケースをもって、トイレに閉じこもった。
「海人、着いた早々で悪いけど食材の準備手伝ってくれる。」
そう言って、台所に入っていった。
「今日は、ハワイアン料理。」
そういうとボスは、手際よく準備を始めた。
「香辛料は、現地の持ってきた。」
「材料は、さっき子さんおものを買ったから、後は、味と香りを調整しながら、作っていく。」
「そして、ハワイをイメージしながら、フライパンとクッキングナイフで調理する。」
「最後は、デッキのテーブルに並べて、完成。」
「やっぱり、ハワイアン料理は、外で食べないとね。」
「このおうち、ボスが探してきたんでしょ?」
「ウッドデッキも広くて、いかにもハワイって感じだよね。」
「まあ、でも、本物のハワイに比べると雰囲気だけ一緒だね。」
「海人は、玉ねぎのみじん切りお願い。」僕は、10個以上ある玉ねぎ皮を剥いて、ひたすら、泣きながら、玉ねぎを切っていた。
そしたら、優香さんが帰ってきた車の音がした。
車のドアの閉まる音がした。あれ、1つ多かった気がするけど。荷物を降ろす音かな?
台所に、誰かが、入ってきた。
「海人。」と僕を呼ぶ声。
振り返るとそこに、ノースリーブの真っ青なワンピースの明日香が立っていた。
「もう、海人って、どうして私に会う前に泣いてるの?」
僕は、右手に包丁、そして、左手に玉ねぎをもって立ち尽くした。
「海人、まずその物騒なもの降ろしてくれない。」
慌てて、玉ねぎと包丁をまな板の上に置くと、再び明日香に向き合った。
そして、そのまま明日香を抱きしめて、わんわん泣いた。
知らない間に、ボスと優香さんは庭に出て行った。
「もう、海人、相変わらず泣き虫ね。」
「違うよ、これは、玉ねぎの所為だよ。」と見え透いた言い訳をした。
「昨日、優香さんから電話があって、今日海人が来るから、おいでって言われて、飛んできた。」
「そうなんだ。」
「会えると思ってなかったから、びっくりした。」
「それに、図書館の彼女もいっしょに来てるって聞いて、お友達になれないかなって思って。」
「今、外で、京香さんと話してるよ。」
「紹介するね。」
そう言って、僕は、明日香の手を握った。




