帰宅
都内をボスの車がスムーズに走り抜ける。
東京タワーを見ながら、祖父母の家に向かう。
やっと落ち着いた彼女が、
『すみません。1度自宅に戻って、着替えを取りに帰りたい。』
「ボス、すみません。彼女の家にちょっと寄ってもらえます?」
「住所は、世田谷区の3号線のコンビニのそばだって。」
「了解。」
しばらく車を走らせて、コンビニに着いた。
『ありがとう。ちょっと待ってて。』
僕と、ボスは、そのコンビニの駐車場で、いつものように、二人は、ボディガードになりきって、缶コーヒーを飲みながら、車の傍らで、きょろきょろしていた。どう見たって、不審者でしょう?
暫くして、彼女が戻ってきたので、アイスココアを渡して、三人は、車に乗り込んだ。
そのまま、車を走らせ、30分もかからずに、僕の家に着いた。
『結構、近くなんだね。』
『ここが、僕の家だよ。』
と言って、彼女をエスコートした。
「ボスも、来て。」
彼女も、ボスの人柄が分かったみたいで馴染んでいた。
玄関を開けると、美香さんと祖母が出てきてくれた。
さっきのコンビニで、待っている間に事情を説明しておいたのだ。
そして、食事も2人分多く作っておいてもらった。
『さあどうぞ。遠慮しないで。海人の祖母です。』って、祖母が手話で彼女に伝えた。
彼女は、僕の祖母が、手話を話せるのに驚きながら
『すみません。お邪魔します。』と挨拶した。
「海人、彼女を2階の部屋に案内して。」
「おばあ様、彼女も今日は、不安だと思うから、一緒の部屋で寝てもらってもいい?」
「私は、いいけど、彼女は大丈夫?」
「ちょっと聞いてみる。」
そう言って、僕は、彼女の方に向き直って、
『今日は、一人で寝れる?もし、よければ、僕の祖母に一緒にいてもらってもいいけど?』
『大丈夫です。』
『じゃ、私は、貴方の隣の部屋で休むことにするわね。何かあったら、いつでも来てもらっても大丈夫だから。』
そう、祖母が、彼女に伝えると彼女は、祖母の手を両手で握って、嬉しそうにうなずいた。
それから、祖母は、
みんなに視線を向け手話をしながら、「おなかが空いたから、食事にしましょう。」と声を掛けた。
「おばあ様、先に彼女に部屋を案内してきます。荷物を置いたら、すぐに食堂に行きます。」
そう言って、僕は、彼女に
『部屋に、案内するからついてきて。』そう言って、ぼくは、以前、明日香が止まった部屋に彼女を案内した。
一目その部屋を見るなり、彼女は気に入ったようだ。
『すごい、こんなお部屋、私が使っていいの?』
『どうぞ、僕の友達もいつも使ってる部屋だけど。』
『さあ、食事にしましょう。』
そう言って、僕は、彼女を食堂までつれていった。
ボスは、すでに祖父につかまって、晩酌の相手をさせられていた。
「ボス、今日は泊まっていってよ。」
「それで、明日の朝、僕と星野さんを学校まで、送って。」
「今日のやつらに、僕たちには、ボスがついてることを見せて、近寄らないようにするから。」
考えとしては、子供っぽいかな?と思いながらも、彼女を安心させたいと思った。
まあ、学校に行けば、恵と僕で何とか出来るかな?ちょっと、頼りないけど。
その日の夕食は、祖父も手話を話したので、彼女も違和感なくしゃべっていた。
むしろ、ボスのほうが、異邦人のようだった。
それから、祖母に彼女と一緒にお風呂に入ってもらって、その後に僕とボスがお風呂に入った。
「ボス、ありがとう。今日は、助かりました。」
「坊ちゃんの役に立てて、光栄です。」
「ボス、背中流すよ。」そう言って、僕たちは、年の離れた兄弟のようにお風呂を楽しんだ。
翌日、ボスの車に乗って、僕と星野さんは学校に向かった。
学校に着くと正門の所で降ろしててくれるのかと思ったら、ボスは、そのまま守衛の人に手を挙げて中に入っていった。
「ボス、大丈夫なの?」
心配になって、ボスに聞いたけど笑ってるだけだった。
校長か、理事長の車しか止まったところを見たことが無い、校舎の車寄せにそのまま入っていった。
車が、止まると中から理事長が出てきて、丁寧にボスに挨拶をしていた。
僕と星野さんは、その後ろでぼおっとしていると
「昨日のうちに、理事長に話はしておきましたので、何かあれば、いつでも私をお呼びください。」
思わず、僕は、ボスに抱き付いた。
「ありがとう、ボス。これで、僕たちをいじめる奴はいないね。」
「当然です。」
『星野さん、何かあったらボスがすぐに来てくれるって。』
そう、伝えると星野さんも、恥ずかしそうにボスの手を両手で握ってお辞儀した。
後は、このことを恵に伝えれば、学校中に情報が流れる。
これで、星野さんも大丈夫かな。
「坊ちゃん、すみません。この後、理事長と別のお話がありますので、今日はここで失礼します。」
そう言うと、ボスは、理事長と一緒にその建物の中に消えていった。
『さあ、星野さん、教室に行きますか?』
以前は、僕が、明日香に手を引っ張られて学校に行ってたのに、今度は、僕が、誰かの背中を押して学校に行かせる日が来るなんて、思ってもみなかった。




