ファーストキス
次の週の月曜日、僕は、いつものように朝からサーフィンをして、それから着替えて学校に行った。
朝礼では、田中先生が、いつものように夏休みの注意事項を説明していた。
旅行等に行く場合は、事前に学校に届けるとか何とか。
普段と何も変わらない。
ちょっと違ったのが、ウインクしながら「山田くん、聞いてる?ちゃんとメモ取りなさいよ。」
と突然言われたところ。
たぶん、周りのみんなに言いたかったのを、ぼくを使って注意したのかな。
「わかりました。」と言ってメモを取り出したので、周りのみんなもメモを取り出した。
いつものように、授業を受けて、卓也とお昼を食べてしゃべっていると明日香が近づいてきた。
先日のバトル以来、明日香は、卓也とも仲良くなった。
「ねえ、海人、サーフィンいつ教えてくれるの。」
「明日香、クラブは?」
「夏休みは、火曜日と木曜日と土曜日が午前中、それと日曜日はお休み。」
「あと、合宿があるみたい。」
「じゃ、今度の土曜日の午後でもいい?」
「大丈夫。」
「じゃ、ちょっと涼しくなる16時に僕の家に来て。」
「わかった。」
そう言って、明日香は戻っていった。
「明日香さんも、サーフィンやるんだ。」
「うん、そうみたい。」
「僕が、サーフィンで溺れたら助けてくれるって。」
「頼もしいね。」
「卓也、ごめんね。先週の金曜日偶然駅で明日香と会って、家まで手をつないで送って行った。」
「へえ、そうなんだ。よかったね。」
「それより海人、アキちゃんは、この学校受けるんだよね。夏休み家庭教師いらないか、聞いといてよ。」
「えっ、わかった。」
最近、明日香とも気さくにしゃべってると思ったら、好きな人が変わったのかな?
まあ、良いか。アキちゃんもかわいいし、ひろしさんもいい人だし。
次の土曜日。16時に明日香がやってきた。
僕の家で、2人とも水着に着替えた。
明日香は、白い肌と引き締まった体によく合う真っ赤なビキニにだった。
僕は、おじいちゃんのロングボードを頭の上に乗せて、2人で砂浜まで下りて行った。
2人は、明日香のおねえさんに教えてもらったストレッチを始めた。
「なんか、懐かしいね。」
「砂浜も、海も何も変わらない。変わったのは、僕と明日香の身長。」
「大人になったわよね。わたしたち。あの時、海人に助けてもらわなかったら、今ここにいなかったかもしれない。」
「ぼくも、あれから明日香に助けてもらわなかったら、今、ここにいなかったかもしれない。」
2人は、お互いを見て笑った。
「ということで、今日は、この長いボードでサーフィンします。」
「これは、静かな波の時に乗るボードです。僕は、スローなこっちの方が、最近のお気に入りです。」
「明日香、リーシュコードを足に付けて。外れないように、しっかりね。」
「これでいい?」
僕は、砂浜に片膝をついて、明日香の白いきれいな左足にまかれたリーシュコードを動かしてみた。
「大丈夫。しっかり止まっている。」
僕は、それからボードを持って明日香と並んで海に入っていった。
そして、腰の所まで水に入ったところでボードを反転させた。
「明日香、ボードに乗ってみて。押さえておくから。」
明日香は、僕の言ったとおりボードに乗った。
「合図したら、パドリングして波に乗ってね。乗れたら、そのまま海岸までいってね。立たなくていいから。」
「わかった。」
ばくは、小さな波を二つ、やり過ごした。
「明日香、次のに乗るよ。」
小さくうなずく明日香。
「よし。パドリング。」
僕は、波に合わせてボードを押し出した。
2~3回パドリングをして彼女はその波に乗って海岸に向かって進んでいった。
何故か、明日香の足の裏に見入ってしまった。
再び明日香は、そのボードを持って僕の所にやってきた。
「こんどは、ボードの上に立ってみて。焦らなくていいから、ボードが安定したら立ち上がって。」
ぼくは、ボードの向きを変えながら、明日香に言った。
体幹のしっかりしている明日香なら、すぐに立てるようになるはず。
「わかった。」
そして、明日香は、ボードに寝転んだ。
今度も、波を2つやり過ごして、
「よし。パドリング。」
僕は、波に合わせてボードを押し出した。
きれいなパドリング。そして、安定したボードに初めてとは、思えないぐらいスムーズに両手を広げて立ち上がった。
「凄い、明日香。すぐにボードの上に立てるなんて!」
それから、同じことを2~3回繰り返して、安定してボードの上に立てるようになった。
「明日香、ちょっと休もうか?」
そう言って僕たちは、砂浜に上った。
「結構、汗かくから、水分を取らないと熱中症になるよ。」
そういって、僕は、明日香にスポーツドリンクを渡した。
「ありがとう。ほんと、のど乾いた。でも、楽しいね。」
「うん。」
「部活は、どう?大変?」
「大丈夫。進学校だから、そんなにハードじゃないよ。」
「海人、今度は、一人でやってもいい?」
「良いよ。じゃ、ぼくは、ここで見てるよ。」
「どの辺から乗ればいいかだけ教えて。」
「わかった。ポイントに着いたら合図するね。」
明日香は、ロングボードを持って、海に入っていった。
砂浜から、20mぐらい離れたところで、僕は、明日香に声を掛けた。
「その辺から、乗ってみて。」
「わかった。」手を振る明日香。
沖の波を見て、明日香はボードの向きを変えて、飛び乗りそしてパドリング。
ボードが波に押されて安定するの待って、夕日を背に立ち上がり、そして微笑みながら両手を広げて僕のところにまっすぐ進んでくる。
僕はそれをみて、思わず立ち上がり明日香のところに走っていった。そして、彼女を抱きしめた。
「海人、どうして泣いてるの。」
「明日香が、海から僕の所にきた女神さまに見えたんだ。うれしくて、涙が出てきた。もう、悩まない。きみが、好きだ。一緒にいたい。」
それから、2人は、ボードに並んで座り、海に浮かんで夕日を見ていた。
「明日香、キスしていい?」
彼女は、何も言わずの目をつむって、僕の方に顔を近づけてきた。
僕は、明日香の肩を抱いて、そっと口づけをした。
それから、僕たちは、何もなかったように砂浜に上って、来た時と同じようにボードを頭にのせて帰っていった。
それから、シャワーを浴び、服に着替えて、ぼくは、明日香を家まで送っていった。
「おばあちゃん、ちょっと明日香を送ってくるね。」
2人は、小学生のころのように手をつないで歩いた。
ちょっと違うのは、あのころは、いつも明日香に引っ張られて歩いていたけど、今は、並んで歩いている。
「今日は、楽しかったね。」
「うん。でも、明日香とサーフィンが、できるのは今日が最後だと思う。」
「僕、医大を目指したい。今日、明日香とずうっと一緒に生きていきたいという気持ちが、はっきりした。だから、明日から猛勉強する。」
「直したい病気が、あるんだ。」
「わかったわ。でも、会いたくなったら行くよ。」
「良いよ。いつでも来て。明日香は、僕の女神さまだから。」
「明日香、1つ聞いていい?」
「なに。」
「明日香も、僕のこと好きだよね。」
「ばか。好きに決まってるでしょ。」
「ありがとう。」
そのまま、僕たちは、いろんなことを話してたら、あっと言う間に明日香の家に着いた。
「じゃ。また、連絡するね。」
「わかった。」と言いながら、しばらく手を離せなかった。
『明日香。帰ったの?』と,言うお母さんの声が聞こえたので、やっと手を離した。
「じゃあね。」
彼女が、家に入るの見届けてから回れ右をして帰った。




