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ローカル  作者: 不機猫
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サーフィンバトル 3

 明日香のきょとんとした無防備な顔が、かわいかった。

思わず、抱きしめてキスしそうになったけど、その前にひろしさんにハグされた。残念。

観衆から拍手が上がった。

相手チームの、助っ人のおねえさんも拍手してくれた。

ただひとり、ボスだけが不満そうだった。

相手チームの二人も砂浜に戻って来た。

そこで、プロサーファのおねえさんが、試合の結果を発表した。

「今迄のところイーブンね。」

やっぱり、2対3じゃ分が悪いか。しょうがない。

たぶん、向こうのゴリラ、いやボスの顔も立てたのかもしれない。

「そこで、提案だけど、君、私と1対1で勝負しない。」

僕をみて、彼女がそういった。

「ひろしさん、良いですか?負けるかもしれないけど。」

僕は、ひろしさんを見た。

「ほんとうは、僕がやらなきゃいけないけど、君の方が数段うまいから任せる。でも、無理はしないでよ」

「はい。」

彼女が、僕を見たときウインクしたので、何か考えが有ってそう提案したんだと思った。

たぶん、向こうのボスが、このままだと納得しないのかもしれない。

「お願いします。」

そう聞いた途端彼女は、その場で服を脱ぎだした。

えっ?明日香がすかさず僕の目を塞いだ。

「大丈夫よ。水着来てるから。」

そう言って、そのままウエットを着だした。

「はい、終了。あっと言う間に着替えた彼女は、待ちきれないというように、ストレッチもそこそこに海に入った。

僕も、慌ててその後に続いた。

きっと、この人もサーフィン好きなんだ。

沖に出てから、2人並んでいると彼女から

「君。すごいわね。高校生?」

「そうです。」

「ごめんね。なんかごたごたに巻き込んで。でも、良い波よね。今日は。」

「そうですね。」

砂浜から、ボスが叫んでる。

「はじめてください、って言ってますけど」

「じゃ、始めますか。」

2人そろって手を挙げた。敵同士なのに息ぴったり。

彼女とは、ちょっと距離をを取ってから、波に聞いてみた。

「今日は、チューブできる?」

「ちょっとわからないけど、かなり大きな波がもうすぐ来るけどそれには、乗らないで。

 その波が、引き潮になったときにもっと大きな波が来るから、後は風任せかな?」

「わかった。ありがとう。」

しばらくするとかなり大きな波が来た。

おねえさんは、素早くボードをターンするとパドリングして、その波のうねりにきれいにテイクアウトした。

「うまい。」思わず声がもれた。

トップスアンドダウンス、ボトムターン、オンザリップそしてエアリアル。

僕が、さっきやったのと同じよう様に決めてきた。しかも、僕よりもダイナミック。

しばらくして、彼女がプルアウトしたのが見えた。

砂浜では、ゴリラいや、相手チームのボスが雄たけびをあげていた。

 次は,僕の番だ。

助っ人のおねえさんが、乗った波が、引き潮になって海底を沖に戻っていくのを感じながら、さっきより大きな波が、沖からやってきた。高さは、今までの倍以上あった。

ボードを回転させて、パドリング。そして、今までの波より何倍も強い力で押し出された。

スピードがある分、安定してボードに乗れた。

壁みたいにそそりたった波に右手を当てながら横に滑っていく。

少しでも気を抜くと、そのまま波に飲み込まれそうな気迫を感じた。

更に、頭上まで盛り上がった波が僕を取り囲むように落ちてきた。

波と空が一体化しながら、僕と赤いボードの周りを取り囲む。

「どう?」

「最高だよ。僕の上の海が透けて見える。魚が泳いでる。すごい。海のトンネルみたい。」

「もっと、見せてあげたいけどこれが限界かな?うまく僕から離れてよ。」

「ありがとう。」

僕は、そう言ってスピードを上げそのチューブを抜けた。

抜けた途端、そのチューブは壊れた。

そのまま、砂浜に向かって進み、きれいにプル・アウトした。

 海に向かって、再びお辞儀をした。

それから、みんなの所に戻った。

「完敗ね。波も味方につけるんだから、しょうがない。なんか、意地悪なローカルがいるから懲らしめてほしいって言われて来たけど、違うみたいね。」

と、あのボスに聞こえるように、助っ人のおねえさんが言った。

「いや、あいつがこの浜でサーフィンするな!て言ったのは間違いねえよ。」

 とボスが言った。

すかさず、ひろしさんが、

「ごみを、散らかして帰るんなら、来ないでほしいといっただけだよ。」

「やっぱり、お前が悪いんじゃないか。お前だけ、この浜出入り禁止な。」

あの勢いのよかったボスが、しゅんとしている。

もしかして、助っ人のおねえさんが好きなのかな?

「ひろしさん、ごみを持って帰ってくれれば文句ないですよね。みんなの海だから楽しくやりましょう。」

「ああ、全然問題ないよ。」

「ちょっと台風の影響で、波も荒くなってきた。今日は、ここまでということで、

みんなで一緒にお昼食べよう。向こうの家におにぎり準備してあるから。」

今日の決着が、着くのを待っていたのか、いつの間にか集会から帰ってきた祖父がみんなに声を掛けた。

僕は、相手チームの人にも

「どうぞ、気にせず食べに来てください。僕の家なので。よかったらシャワーも使ってください。」

「おねえさんも、着替えるならお風呂場使ってください。」

何故か。相手チームのボスが僕の所に寄ってきて、

「お前、良いやつだな。俺は、恥ずかしいよ。」といって、抱きついてきた。

えっ、1日に2回も男にハグされたくない。

僕は、そのまま、砂浜を走って家に戻った。

祖父の言ったように、作業場には、おにぎりがいっぱい並んでいた。

僕は、庭に置いてあったポリタンクの生ぬるくなった水をかぶって、ウエットスーツを脱いですぐにスエットに着替えた。ウエットスーツは、水の入ったバケツにそのままつけておいた。

「おばあさん、僕も手伝う。」

そう言って、おばあさんと一緒におにぎりを作り始めた。

そのうち、砂浜から、みんながぞろぞろとやってきた。

相手チームのボスも助っ人のおねえさんとやってきた。

「ほら、ぼーっとしてないで、みんなにおにぎり配って。そのあとは、お茶も配ってね。」

僕は、ボスに言った。

彼は、嬉しそうにおにぎりの載ったお盆を、持ってみんなに配りだした。

それから、僕は助っ人のおねえさんを風呂場に案内した。

風呂場から戻ると、みんな楽しそうに会話していた。明日香も卓也とアキちゃんと楽しそうにしゃべっていた。

祖父と祖母が、僕のそばに来て、

「玲子も、いつもサーフィン仲間を連れてきて、みんなでおむすびをほおばっていたの。

懐かしいわい。」

「おばあちゃん、おじいちゃんありがとう。もしかして、こうなるのわかってたの?

だって、こんなにいっぱいのおにぎり、急に準備できないでしょ?」

そう言うと、祖母と祖父は、ニコッと笑った。

集会に行った祖父が、集会所の人に今日のバトルのことを話したら、この町の一大事ということになって、地元の人を応援するためにみんなで一緒におにぎりを作ってくれたみたいだった。

その人たちは、奥の座敷でみんと同じようにおにぎりを食べて盛り上がってるとのことだった。どおりで、玄関に知らない靴がいっぱい。

祖父と祖母も、この後そっちの集会で盛り上がるとのことだった。

そのことをひろしさんに言うと、

「ちょっと挨拶してくる。申し訳ないけど、海人君、座敷まで案内してもらえる?」

いつの間にか、相手チームのボスもそのことを聞きつけ、一緒についてきた。

僕は、ひろしさんとボスを奥の座敷に連れて行った。

「結構広いな。今度泊まりに来ていいか?」とボスが言ったので「ダメ!」と強く言った。いつ、友達になったんだよ。わけわからん。

「ここです。」

中から、みんなの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

襖をあけると、顔見知りの祖父と祖母の知り合いの人と、助っ人のおねえさんが盛り上がっていた。

さっきから、見かけないと思ったらこんなところに居た。

ひろしさんは、ちょっと緊張した顔で

「本日は、すみませんでした。お騒がせして。しかも、お昼の準備までしていただき。」

「良いよ。そんなこと気にしなくて。若いときは、色々あるさ。」と玄さんが言った。

近所のおじさんだ。そして、ボスも

「ほんとにすみませんでした。」と頭を下げた。すると、すかさず助っ人のおねえさんが、

「ほんとに悪いのは、こいつです。」とボスの頭をはたいた。

えっ、もしかしておねえさんお酒飲んでる?

今度は、ボスの方が、

「ほんとにすみません。この人酔っぱらうとこうなるんで。皆様のご迷惑にならないように連れて帰ります。」そう言って、ボスは無理やりおねえさんを連れて行った。

「また、よかったら遊びに来いよ。」と再び玄さんが言った。

「ほんとに今日は、すみませんでした。」そう言って、僕とひろしさんはボスの後を追うように襖を閉めた。

「今日は、色々ありがとう。本当に助かったよ。一時は、どうなるかと思ったけどよかった。」

「いえいえ、こちらこそ。こんないい波に乗れて本当に楽しいです。」

「みんな、いい人で良かった。」

僕とひろしさんは、そのまま、みんなの輪の中に戻っていった。

「明日香、今までサーフィンできること黙ってごめんね。」

一瞬ほほを膨らませたが、すぐに笑顔になった。

「良いよ。もしかしたら、私のことを気にして黙っていてくれたんでしょ?で、誰に教えてもらったの?」

「うちのおじいちゃん。初代波乗りのレジェンドだって。」

「ボードは、玲子さんが昔使ってたのをもらった。それで、ウエットは、お父さんのお古。」

「そうなんだ。」

その時、卓也が声を掛けてきた。

「ごめん。明日のテスト勉強そろそろ始めないとやばいから、帰るわ。」

「きょうは、ありがとう。わたしが無理に誘ってごめんなさい。」

「良いですよ。明日香さんの頼みなら何でも聞きますよ.。なあ、海人。」

「ああ。」

そう言ってから、

「じゃ、明日香もそろそろ帰りますか?勉強あるでしょ?ちょっとひろしさんに言ってくる。」

「ひろしさん、すみません。僕たち明日から期末試験。なので明日香と卓也は帰ります。」

「アキちゃんも一緒に帰る?」明日香が、ひろしさんの妹に声を掛けた。

「お兄ちゃん、明日香先輩にお礼言ってね。わたしが明日香先輩にお願いして卓也さんと海人に応援に来てもらったんだから。」

「ありがとう。今日は、本当に助かったよ。明日香さんが、海人君に声を掛けてくれたんだ。明日香さんは勝利の女神だよ。」

嬉しそうな明日香、そしてちょっと照れてる卓也。でも、なんで僕は、呼び捨てなの?

まあ、良いけど。年下に呼び捨てにされるの嫌いじゃないから。さては、明日香、変なこと教えたな。

「ということで、僕は、3人送ってきます。後は、仕切ってください。僕もそのまま部屋に戻って勉強します。」

僕は、ボスも呼んで、ちょっと3人を送ってくる旨を伝えて、後は、ひろしさんと仕切ってもらうようお願いした。

それから僕は、話し込んでる皆さんに向かって

「今日は、色々ありがとうございます。」と言って3人と一緒に外に出た。

天気は、崩れてないけど風がかなり強くなっていた。波も荒れていた。

「ほんと,海人があんなにサーフィンうまいなんて、びっくりだよ。」と卓也が言った。

「それをずうっと私に隠していたなんて、意地悪よね。アキちゃん。こんなやつ、先輩と思わなくていいから。海人って呼び捨てでいいのよ。その方が、本人も喜ぶ変態なんだから。」

「あら、明日香さん、よく御存じで。」

「だって、付き合い長いでしょ。」

「そうでした。幼稚園の頃は、よく一緒にお風呂入ってました。」

「馬鹿。あなたが、引っ越してきたのは、小学校の時でしょ。」

「ははっ、そうでした。」

「海人って、最近下品よね。田中先生見る目もいやらしいし。」

「そうそう。」と卓也が相槌を打った。

この裏切り者!と思ったけどまあいいか。

「ほんと、皆さん仲良いですね。わたしも来年同じ高校受けます。」

「来て来て。それで、みんなで海人をいじめましょう。」

「いや、そんな嬉しいこと。ぜひお願いします。」

あっという間に、駅に着いた。卓也は、丁度その時、駅に入ってきた電車に乗って帰っていった。

「じゃ、また明日。」

明日香とアキちゃんも同じ方向なので、僕はそこで2人と別れた。

「今日は、どうもありがとうございました。本当に助かりました。兄とまた、別の日にお礼に伺います。先ほどは、呼び捨てにしてすみませんでした。でも、少しも怒ったそぶりを見せなかったのは、本当に明日香先輩の言うとおり、素敵な方なんですね。これからもよろしくお願いします。」

おっと、年下に試されていたか。やばかったな。

「いえいえ。大した人間じゃないですよ。体が弱くて、小学校も明日香が、いなければいけなかったぐらいだから。」

と言って、明日香を見た。

明日香は、満足気に頷きながら、アキちゃんと一緒に帰っていった。

家に戻ると、ひろしさんとボスが仕切って、色々片づけをしているところだった。

「すみません。後は、僕がやりますから。」

と言うと、ボスが、

「いやいや、ごみは、持ち帰りますよ。この家、出入り禁止にされたら困りますから。」

「えっ、また来るつもりなんですか?」というとみんな一斉に笑った。

「じゃ、すみません。あの畳の上の粗大ごみだけは、忘れずに持って帰ってくださいよ。」

と奥の畳の部屋で気持ちよさそうに寝ていた、助っとのおねさんを指差した。

「それは、間違いなく大事に、持って帰ります。」

「よろしくお願いします。」

それから、みんなで片付が終わると、祖父と祖母にお礼を言ってみんな帰っていった。

助っ人のおねえさんはというと、これは、本当に幸せな顔をして眠っていたので、ボスが大事そうに御姫様抱っこをして車に乗せて帰っていった。

さあてと、ボードを手入れして、ウエットスーツを洗って干して、僕も勉強するかな。

打倒明日香。学年1位を目指して。


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