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尻をむき出しにしながら反復横跳びでもしたいくらい

前回のあらすじ

Aは佐竹の不在に不安と未達成感を抱えながら、一日を過ごしていた。業務に集中しようとするも、佐竹のことが頭を離れない。軽口を叩く新崎や、売上2倍の達成を求める高山からのプレッシャーに、Aは焦りを感じつつ、売上を増やすための施策をノートにまとめた。だが、どこかで佐竹の存在を意識してしまう自分に気づき、過去に部下を道具のように扱ったことを思い出す。Aは佐竹の名前をSNSで検索し、メッセージを送るも返事はなく、彼の必要性を強調したノートの写真を送った。

「正直、無理です。」


佐竹からのメッセージは予想通りだった。しかし、Aにとっては納得できる返事ではなかった。彼は諦めるつもりなど、さらさらなかった。だからこそ、Aはすぐに返信を打ち始めた。


「本当にそれでいいのか?スキルがないって言うけど、それは君自身が決めることじゃない。俺たちが作る場で活躍するチャンスを与えるのは俺たちの役割だ。適性がない?だったら、その適性の枠組みを変えていこう。」


画面を見つめるAの手は止まらない。送信ボタンを押すと、メッセージはすぐに「既読」になった。心臓が少しだけ高鳴る。返事が来るまでの1分、2分……、その時間がじりじりと過ぎていく。だが、沈黙は続いた。


やはり、ダメか――Aがそう思い始めた矢先、スマホが振動した。


「それって、どんなのですか?」


反応が来た。Aの胸の中で、再び期待が膨らむ。すかさず打ち返した。


「任せろ。詳細は電話で話すから、ちょっと時間をくれないか?」


しばらくして、電話が鳴った。出ると、弱々しい声が聞こえた。佐竹だった。


「で、話って何ですか?」


Aは少し微笑みながら、佐竹に計画を説明し始めた。


「君が営業の前に立つのは無理だってことは、俺も理解してる。でも、だからこそ俺は君に裏方の仕事を任せたいと思ってるんだ。例えば、購買促進のメールを送るとか、顧客管理をするとか、そんな事務的な作業だよ。実際、今それは営業の奴らが自分たちでやっていて、正直無駄が多いんだ。」


「……それを、俺にやらせるんですか?」


佐竹の声には疑念があったが、Aは続けた。


「そうだ。君ならやれる。話すのが苦手でも、事務作業は人前に出る必要はない。それに、もし君がこれをやってくれれば、チーム全体が効率化される。営業たちが本来の仕事に集中できるようになって、結果的に君自身の居場所もできるんだ。」


佐竹は無言だった。Aはその沈黙がただの迷いではなく、心の中で葛藤している証拠だと感じた。


「俺たちは個人事業主だから、好きに動ける。上からの命令に縛られずに、自由にやり方を決められるんだ。それに、新崎も喜ぶはずだ。彼女は自分の負担が減るだけだから、邪魔する理由なんてない。」


新崎――チームのエースであり、鋭い目つきのギャル営業マン。彼女は仕事ができるが、その分、負担も大きい。佐竹が裏方で手助けすることで、彼女のストレスも減るだろう。Aはその点を強調した。


しばらくして、佐竹は小さな声で言った。


「わかりました……やってみます。」


その一言を聞いた瞬間、Aは思わずガッツポーズをした。尻をむき出しにしながら反復横跳びでもしたいくらいだった。


「ありがとう、佐竹!後悔はさせないからな」


佐竹が再びプロジェクトに参加することを決めた瞬間、Aの心には達成感が満ち溢れていた。そして、それが結果に結びつくのもそう遠くはなかった。


佐竹は事務作業を始めると、驚くほどスムーズにこなしていった。人と話すことが苦手なだけで、細かい作業は得意だったのだ。申込書や誓約書のやり取りも、しっかりとした手順で進めていく。その結果、Aと新崎の仕事は一気に効率化された。


「佐竹、やるじゃん!」新崎は驚きの声を上げた。「こいつ、ただの使えない奴だと思ってたけど、これなら私の仕事も楽になるって!」


営業の現場は日々変わっていく。1日2件が限界だったアポイントも、3件、4件とこなせるようになっていった。それも、佐竹がメールで見込み客に迅速に連絡を取ることで、無駄な時間を削減したからだ。


そして、佐竹が担当したメール配信が功を奏し、これまで手を付けられなかった見込み客にもアプローチすることができた。これにより、チームの成績は急激に向上し、結果として前年比200%の売上を達成することができた。


約束の期限まで、あと2日のことだった。


高山は結果が出たことに驚いた様子でAに声をかけた。


「お前、無駄なことをしてるだけだと思ってたけど、意外とやるじゃないか。」


しかし、Aは高山の言葉を軽く受け流す。彼にとって、重要なのは高山の評価ではなく、佐竹が再び自信を取り戻し、チーム全体が一丸となって目標を達成できたことだった。

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