不思議な話、怪談未満 伍 ー波打つブラインドー
深夜のオフィスで起こった出来事です。
唯一の目視できた事象のような気もする、少し不思議な思い出です。
私は直接的な現象をほぼ目の当たりにしたことがない。
その私の思い出す限りで唯一の現象についてお話ししたい思う。
結婚して間もないころ、東西線沿線の自社ビルに通勤していた。
ビル2F、エレベータの真ん前、スタックのすぐ隣にいてエレベータ前通路のすぐそばにいた。
一列四席、ひと島八人が八島六十四席あって奥に医務室のベッドがあったのを覚えている。
ある日一人で作業をしていたが、徹夜になってしまい自分の島の照明だけつけていた。
深夜二時ぐらいと思うがフロア右手奥から金属が触れ合うような小さな音が聞こえた気がした。
断続的にシャラシャラというような音が聞こえる気がする。
君が悪いので自席のすぐ隣の柱についていた照明を全部付けた。
誰もいないし、見えるのは無人の座席と大きなガラスを覆ったブラインドのみである。
これは空調か何かの音だなと思って作業を続けていた。
しばらく作業を続けていると、だんだん音が大きくなってきて目をやると、右手奥からブラインドが波を打って徐々にこちらにやってきてるのが分かった。
背筋が凍り、パニックになって椅子から立つことができない。ブラインドの波うちは左奥にいって再度右に戻っていった。
静寂が戻ったが自分は極度の緊張状態にあった。
すると右の島のほうから軋み音がする。
もう泣きそうになって、カバンと手荷物をもってそろそろとエレベータに向かって後ずさりすると、だんだん自分の島に軋み音が近づいてくる。
「何かいる!見えないけど何かが近づいているんだ、逃げないと」
自分の島の場所から軋み音が聞こえた瞬間、逃げ込み先のハズのエレベータが「チン」と言いながら扉が開いた。
恐怖にかられながら後ろを向くと人影があり、叫ぼうとすると、
『おー徹夜か、頑張るなぁ。飲んでて終電のがしちゃったから奥の医務室で寝るからあとよろしく!』
と先輩が話しながらエレベータから医務室に向かい近場の照明を落としてしまった。
気がそがれてしまい、周りをみるがもう音はしない。ブラインドも動かない。
いつでも逃げられる準備をして作業を続けたが、恐怖のあまりさっさと終わってしまった。
金曜日から土曜日にかけての徹夜だったので、外が明るくなり、始発電車にのって這う這うの体で家に帰った。
何か憑いているかもしれないので、家に入る前に妻に背中に塩をまいてもらった。
翌週別の先輩に話をしてみると、「そういう現象はしらんな。二階の窓ガラスの外側に手形がびっしりついていたのは聞いたことがあるけど」と教えられ、二度と徹夜はしないと心に誓ったものである。
結局後から似たような噂も聞かなかったし、そのビルは売却されたので似たようなことは起こらず勤務先変更となった。
私としては、とても怖かったわりに、空調の自動点検か何かでブラインドに風があたり音がしたと結論付けた思い出である。
ストリートビューで見ても該当のビルは見つかりませんでした。
遠い昔のお話です。




