友人の不純異性交遊を止めようとしたら、いつの間にかミイラ取りがミイラになっていた件
「んでさ俺、バイトはじめようと思うんだぁ」
昼休みの時間、友人と弁当を食べていると、そのうちの一人が声高らかに言った。
「だっていつ可愛い女の子とデートすることになるかわからないだろぉ!?お金を貯めて備えておかないとさぁ」
「お前声うるせーよ!てか、できてから考えろよ、そんなもん」
「あはは、頑張れ〜」
二人のやりとりを眺めていると、それとは対照的に黙々と弁当を食べる きみ に気づいた。
「時透くんはアルバイト考えてる?」
違うクラスなのに、いつも隣で弁当を食べている時透くん。俺の質問にうーんと唸り小さな声でぽつりと呟いた。
「お小遣い欲しいけど‥勉強もあるし大変なのはいやかな。楽に稼げるのがいい‥おじさん相手のやつとか」
「エッ!!?!!?」ガタッ
「?なんだよ炭十郎、でかい声だして」
「あっ、いっ、いやなんでもない!すまない!」
友人をなんとか誤魔化して時透くんに向き合う。
「と、時透くん、おじさん相手ってどういう‥まさか危ないことではないよね‥?」
「‥‥‥もしそうだって言ったら?」
「本気で言ってるのかい?駄目だよ、そんなこと絶対にしたら‥!」
「‥炭十郎には関係ないもん」
「時透くん!!!」ガタッ
「?だからなんだよ?炭十郎?どうした??」
「あっ、ごめん、なんでもない!・・はぁ」
唇を尖らせて外方を向いている時透くんに、俺はどうしたものかと深くため息をついた。
----------------
「今日は特売か、急げ急げ‥あれっ?」
帰宅後、俺は駅前のスーパーへ行く途中に見知った姿を見つけた。
「炭十郎?なにしてるの?」
「時透くん、お昼以来だね。俺はスーパーに行く途中だけど‥時透くんは‥?」
「僕は‥‥‥‥
待ち合わせだヨ。‥‥‥おじさんと」
“おじさん”。その言葉を聞いて昼休みの時透くんの爆弾発言を思い出した。
「時透くん、まさかお昼の‥!?あっ、どこいくの!?」
携帯に目を落とすと、俺を無視して歩き出してしまった。
「ホテルで合流に変更になったから」
「ホ、ホテル・・!?待って!!時透くん!!」
ホテルで集合だなんて‥やはり不純異性交遊だったか。あれ程危険だと言ったのに、友人の過ちを止めなくては!
時々ちらちらと後ろを確認する時透くんを引き止めようと必死に追いかけた。
「なんで追いかけてくるの?炭十郎」
「駄目だよ!お金のためにこんなこと‥考え改めるんだ!」
しばらく歩くと、時透くんは派手な外観の建物の中に入って行ってしまった。話で聞いたことしかないけど、ここがラブホテルと呼ばれる場所なのか・・。一瞬躊躇したが思い切って飛び込んだ。
「炭十郎に関係ないでしょ。僕がなにしようが」
「関係なくない!時透くんが危険な目に合うかもしれないのに見て見ぬ振りはできないよ」
薄暗い空間の中、時透くんはパネルでなにかを操作してすばやくエレベーターに乗り込んだ。俺もすかさず後を追う。
「ついてこないでよ。炭十郎になにかあっても知らないからね」
重い扉を開けて部屋に入ると、大きなベッドが視界に入ってゾッとした。こんな密室空間で知らないおじさんと二人きり、お金を貰って何をするつもりなんだ!
「時透くん、今すぐ帰ろう!相手には俺から断るから、早くここを出よう!」
「‥‥」
ピンポーン
時透くんの腕を掴んで部屋を出ようとしたそのとき、玄関のチャイムが鳴った。来た。待ち合わせの相手が来た。ビシッと言ってやる!未成年淫行ですって!
「あの、すみませんが!時透君は‥!」
勢いよく扉を開けた。
「あっ、お待たせしました〜。こちら、ご注文のセーラー服です。ごゆっくりどうぞ〜。」
バタン
「‥‥」
渡された袋を持ったまま、玄関で呆然とする俺。その背後から黒い影が忍び寄る。
「炭十郎、そこまで言うなら分かったよ。おじさんと会うのは止めるね。もうこんなことしないから」
「え?あ、ああ、そう、考え直してくれてよかったよ。ところで、セーラー服が届いたんだけど‥これは」
「さぁ、なにしよう炭十郎」
「え?」
「こんなとこまでノコノコついてきて、炭十郎の方が危ないんじゃない?もうこんなことしないようにしっかり覚えないとね‥?」
この後、セーラー服を着た時透くんとめちゃくちゃした。もちろん特売は買えなかった。