ダンジョンスタンピード
俺はすぐにこの部屋の中で水差しやオレンジジュースが置いてあるテーブルに向かった
そして、
そのテーブルで水を飲み、横にある窓から外を見た
皆は思い思いに食べたり飲んだりし始めていた、
「この料理もなかなかイケるな!」
「そうだな!
こんな味が濃くて旨い料理を食べたのはこの世界にきて初めてだよな!」
「マジいつも食ってる物がどんだけ粗悪だったかって良くわかるよなー!」
俺と同室の3人、タクトと槍士のリョウタ、拳士のナオキがデカイ声で話している
その時、
カーンカーンカーンカーンっと街中に鐘の音が鳴り響いてきた!
「なんだ?なんだ?この鐘の音は!?
火事かなんかでも起きたのか!?」
魔術師のダイがそんなことを言った直後、外から、
「スタンピードだーーーーー!!!」
「ダンジョンから魔物が溢れ出てきてるらしいぞ!」
「すぐ逃げろーー!!」
「領都の方へ逃げるんだー、早くしろー!!」
「異界人たちはどうするんだ!?」
「あいつらはは放っておけ!いてもいなくて変わらんカス共だ!
どうせ動けないだろうし、魔物の餌として置いていけば俺達が助かる確率が上がる!」
等と街の人や王国の騎士達の声が聞こえてきた
「おっ、おい!スタンピードって、、、」
「どういうこと!?私達が餌って!?」
「おい!扉は開かないし、窓もやぶれないぞ!!」
「でも、それなら魔物もこの中には入れないんじゃない!?」
部屋の中でみんなどうしていいのかわからず、立ち尽くしている
そんなみんなを見ながら、俺はその場に片膝を立てて座り、煙草に火をつけ、考えを巡らせた
「まさやくん、、
まさやくんが言っていた通りになったね!
この後はどうしますか?」
タクトがリョウタとナオキととも俺の元へ駆け寄り、指示を仰ぐ
本来であれば、こういう時にはリーダーであるタクトが皆に指示をだす
その為、皆はタクトを見つめていた
だがしかし、そのリーダーであるタクトはというと、
いつも喧嘩を吹っ掛け、罵倒して蔑んでいたはずの俺に敬語でどうしますか?と指示を仰いでいる
そんなおかしな状況をfive組の皆はただただポカーンと口を開けて見つめていた
そんな状況をみて、俺は肩を竦めつつ、煙草の煙を吐き出した
「とりあえず、全員すぐに装備を身に付けろ!
それとオレンジジュースしか飲んでないやつは今すぐ水かお茶を飲め!
毒が身体に廻って動けなくなるぞ!」
「え!?まさやくん、毒って?」
「食事の中に麻痺毒や普通の毒薬が混ざってたんだよ
男には毒薬、女には麻痺毒、
あいつらは俺たち男を殺して、女の子たちは動けなくして襲うつもりだったんだろうな、、」
俺は部屋に入ってすぐ鑑定のスキルと毒関知のスキルにより、食事に毒が盛られていることに気付いていた
その為、
領主が出ていったすぐ後に、水とお茶に液体の毒消しを注入した
毒消しの特性上、オレンジに毒消しを混ぜると効果が薄まり効かなくなってしまう為、
オレンジジュースには毒消しは注入しなかったのだ
とりあえず、全員にもう一度、毒消しを飲ませ、オレンジジュースしか飲まなかった者には念のため毒消しの丸薬を飲ませた
「これからの事を話すぞ!
とりあえず、今日着ていた物は預かる、
そして、すべて破き、ばら蒔く!
そして、
この魔物の血をこの部屋中、廊下、外とぶち巻く
俺たち全員がここで戦い、敗れ、魔物に連れ去られたり、殺されて食われたように見せ掛け、偽装する!」
「なんでそんなことを?そんなことをしてる暇があったら逃げた方がいいんじゃないの?」
「そのまま逃げたら、無事に逃げたことがバレてあとで全員探されて、見つかれば連れ戻される
そうなれば昨日までの生活に戻ることになるんだぞ」
俺は煙草を燻らせながら、女の子の質問に答えた
「この国のやつらは腐ってるんだよ!
あいつらにとって、俺達five組は使えない金喰い虫で邪魔者でしかないわけだ!
だから、
あいつらはこの辺境の遠い地のダンジョンに俺達を追いやり、薬で動けなくして、男は殺害、女の子は貴族共のおもちゃにするつもりだったんだよ
俺達はダンジョンに挑んでほぼ全滅、運良く生き残ったやつらは怪我や仲間の死が原因で身体的か精神的に動けないから、
この辺境地で静養をさせるって、他の組のやつらに嘘の説明すれば、
証拠なんてないから、他の組のやつらは怪しまず、やつらの言うことを信じて、仕方ない、自分達は死なないために頑張らなきゃって納得し、勝手に頑張るって寸法だよ!
皆そうなりたいか?」
「「「「「、、、、、、、、、、、」」」」」
俺の説明にそこにいる全員が真っ青な顔をして、ただただ項垂れていた
そんな中を俺の煙草の煙だけがゆらゆらと燻っていた