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不協和音の世界  作者: ami.
8/11

8話

 出来るだけ親と顔を合わせないよう、今日も家を早く出てきて一番乗りした教室で橋津は考えていた。



 あの声の子は園田絢というらしい。


 一緒の放送委員であろう髪の長い女子が「絢!」と彼女に声をかけていた。


 つまり髪ふわふわは放送委員の園田絢だったんだ。



 次の放送は何時なんだろう?

 週番なのか?

 今度は何時聞けるのか?

 「おはよう」

 そう、そうこの声。

 スピーカーより、直接聞くほうが温度があっていい。


 え?

 体が固まる。

 今直接聞こえたけど……嘘だろ?


 思わずムクッと起き上がった。



 あの声の子、園田絢が目をまん丸の見開いてこちらを見ていたのだ。


 あー誰もいないと思っていたんだろうな。


「おはよー」

 顔を青くする彼女にとりあえず挨拶を返す。


 もっと声が聞きたい

 でも何て話しかけよう?

 えっと、女子ってどんな話が好きなわけ?


 絢のことをじっと見続ける表情は微塵も変わらないが俺はパニクっていたようだ。



 え、まじで、どうしよう?


 そんな彼の戸惑いが頂点になりそうな頃、目の前の髪ふわふわ天使が口を開いた。


 「あの橋津君てどんな音楽聴いてるの?ああたし放送委員なんだけど音楽詳しくなくて、今色々と勉強してて…」

 音楽好きな俺にとっては眉唾物の話題。


 彼女も放送委員だからか?

 それとも自分が話しやすいように、話題を選んでくれたのだろうか?


 あ、この子はあの音の響きと同じように優しんだろうな。


 「聴いてみる?」

 気づけば自分のセーフガードである別名遮断機、赤いイヤフォンを彼女に差し出しながらそう言っていた。

 いきなりの提案に驚いた様子の彼女だったが、「うん!」と返事をくれた。


 もっと声が聞けるかも……

 どんな曲がいいかな?


 とりあえず「うん」と再びイヤフォンを彼女に差し出しながら考える。


 そんな彼の様子に彼女が彼の後ろの席まで移動してきた。

 いや、自分から動くべきだっただろうか?今のは?


 冷静に見えるだろう外見と違って、俺の中身は絶賛困難真っ最中だった。


 「この3番目おすすめ」

 今一番気に入っているアルバムを選ぶ。


 この雰囲気も気に入っているし、何より彼女に合うと思ったからだ。

 気に入ってくれるといいんだけど……


 自分は何時もつけているイヤフォンをつける彼女に何故だかどきっとする。


 彼女を見ていられない。

 彼女が聴いている間ひたすら朝練励む野球部の姿を見ていた。



 「良い曲だね。このアーティストは好きなの?」

 思わぬ彼女の笑顔に胸が勝手に跳ねて驚く。


 「うん」

 何より気に入ってくれたみたいで、すごくホッとした。


「私も好きだな」


 えっ好き?

 いやいや、音楽のことだよ!

 なに過剰に反応してんだ俺!


 「そう」


 でも、もう一回言ってくれないかな


 あの曲も彼女気にいるかも?


 「あれが好きならこれもいい」

 もう一つ彼女に曲をおすすめした。


 再び朝練する野球部に目線を移すが、彼女の反応が気になって仕方ない。

 気に入ったかな?

 少しドキドキする。


 「好き?」

 気になって仕方ないから、とりあえず聞いてみた。

 「うん、この曲も好き」


 すき。


 その響きがとっても特別に思えた。


 その音が、ずっと耳に残る。


 俺も好きだ、君の声が。


 気づけば頬が緩んでいた。



 どこからともなく、喧騒が近づいてくる。

 そろそろ登校ラッシュが始まるのだろう。

 「橋津くん、おすすめしてくれてありがとう!自分でもダウンロードしてみるね」

 それを察したのであろう彼女も席を立ち上がろうとする。


 え、もっと君と……


 「CDあるけど……」

 そう思っていた橋津の口は勝手に次の約束をしようと言葉を紡いでいた。


 「えっ?」

 うわ、何言ってるんだろう俺。

 いきなりの事に彼女も驚いている。


 「貸す?」

 縋るようにもう一度声をかけた。彼女の気持ちを伺うようになってします。

 もちろん表情は微塵も動いていないが。


 「うん、ありがとう」

 そんな俺に彼女もそう返した。


 良かった。

 これでも、もう一度話せる。


「何時も早く来てるの?」

いつ持ってこようかと頭を巡らせていると、そう彼女が訪ねてきた。



これって、また朝早くきたときにって事だよな?


「うん、だからその時CD貸す」

「じゃあ来週の水曜日でも大丈夫?」



来週も話せる!


うんと返事をしながら頷いたが、自分の頬がゆるんでいないか心配だった。



メモ11: あの音の正体。

ーーーーーーーーーーーーーー

女子

同じクラス

放送委員

名前は園田絢

髪ふわふわ


来週の水曜日にCDを貸す

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