一章『王女様と異世界』4
読んで頂きありがとうございます!m(__)m
今回は前に上げた第五話とは違います。
前に読んでくれた方はお手数ですが前回を読み直して頂けると幸いです。
大男は暫し悶絶したのち体を小刻みに震えながら小鹿のように立ち上がると私の方へ振り返った。
怒りに震えているのかとも思ったがそんなことは杞憂で単純に、
『今の蹴りいい蹴りだった!』
と親指を立てて少し涙目で誉めてくれた。
だが、何故だろうか。
誉めてもらえたのに嬉しいとは全く思えないのだ。寧ろ、先程の攻防の脱力感が半端ではなく、労いなどどうでもいいとさえ思った。
『とんだ喜劇だったな。楽しませて貰ったぞ』
ハーデス様はこの状況をなりより楽しんでいるようだ。
もう、心を読めるとかどうでもいい。思ったこと全て吐き出そう……
この神様、性格悪い!私が助けてって言ったのに滅茶苦茶楽しそうだったし!心読めることをいいことに私の辱しめるし!もう、最悪だ!
私は口には出さずにただハーデス様を睨んだ。
ハーデス様はやはり聞こえているようで肩を竦めて嘲笑うようだった。
ハーデスは一つ咳払いをし、話を切り換える。
その頃には大男は痛みが惹いたのか金的を押さえてはいなかった。
『では、お前が待ちに待った男の紹介でもしてやろう。こやつは気づいていると思うがお前の父、戦神アレースだ』
我が父、戦神アレース。
戦を司る神で、ハーデス様と同じオリュンポスの十二柱の一柱だ。
だが、私はもっとこう戦の神であるのだから勇ましい姿を想像していたのだがどうだ。
これではただの変態親父だ。娘に抱き付きあまつさえ私の腹に擦り寄せてくるとは……
私の中の父親像が崩れて完全に父というものに嫌悪感しかないのだが……
父上は何が嬉しいのか和やかに手を振って来る。私は知らん顔で無視を決め込んだ。
『貴様が遅れた理由などあえて聞かん。どうせお前のことだ。天界で一つ暴れたのだろう』
『ガハハハ、バレていたか。アキレウスめを殺そうと思い下界に降りようとしたらゼウスに止められてな。暫し言い争いなった』
と父上は笑いながら経緯を話した。
全知全能の神ゼウス様と言い争っていただと………?それは下手すれば大事になっていたのでは?
『全くだ。貴様は娘のことになると見境ないからな』
ハーデス様は呆れながら頭を抱えた。どうやら同じことが何度かあったらしい。
我が姉ヒッポリュテーのことだろうか。それとも他の姉妹達のことだろうか。
それにしても意外というか、父上は放任主義だとばかり思っていた。少し意外な一面を垣間見た気がする。
少し見直したがあえて口にはしない。父上が調子に乗りそうだ。
『さて、ようやく本題だ。アレース、ペンテシレイアに会わせてやったのだ。そろそろ理由ぐらい言ったらどうだ?』
ハーデス様は唐突に本題に切り込んだ。
どうやら父上は私に会う意外にも理由があって呼び寄せてみたいだ。
『なーんだよ。もうちょっと娘と駄弁らせてくれねぇのか』
『馬鹿を言うな。今特例でこうして会わせているのだ。本来ならあり得ないのだぞ?』
『そうだな、ゼウスにバレたら何言われるかわかんねぇもんな……仕方ねぇ』
と言うと父上は真面目な顔付きになり私を見た。
私は父上でもこんな顔も出来るのかと少々驚いた。
『ペンテシレイア、転生してみる気はねぇか?』
『え?』
私は父上が今何を言ったのかわからなかった。
読んで頂きありがとうございます!m(__)m
今回は少しギリシア神話についての解説を一つ
アレースはオリュンポスの十二柱の一体で、戦を司る神で災厄をもたらすとされている神でもあります
性格は大雑把だったらしく頭もそんなによくなく軍神なのに人に負けたこともあったそうです
今回はここまで
また次回もよろしくお願いいたします!m(__)m