プロローグ
初めまして!ぬこ舌と言います!
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―――――刹那だった。
瞬くことなく一瞬。
私は奴に心臓を槍で穿たれた。
深紅の血が絶え間無く流れる我が身は力なく馬から落馬し、気付けば兜越しに天を見ていた。体はピクリとも動かない。それよりも次第に力が抜けていく。私は死期が近いことを理解する。
『負けた』
そう理解するにそれほど時間は掛からなかった。
戦場にいるのだ。いつかはこうなると承知していた。
だが、まさかこんなにもアッサリと負かされてしまうとは思いもしなかった。
すまない、我民達よ。ここで敗れる王を許してくれ。
我姉妹達よ。今、其方へ向かいます。どうか、不甲斐ない私を……
なんて考えるほどには私の気持ちは穏やかであった。負けたのにだ。
悔しさなどは勿論ある。しかし、それよりもこの一騎討ちに立てたことが誇らしかった。
まあ、相手が相手だ。仕方がない。何せ、ギリシア軍に置いて名を轟かせている英雄。その名はアキレウス。
そんな大物と闘えたのだ。戦士としてこれ程名誉なことはあるだろうか……
視界は段々と霞んでいく。息が荒くかといって徐々に息をする回数は減っている。
アキレウスは何やら言っているようだがどうやら耳もまともに聞こえやしない。
奴は私に意気揚々と近付き自身の勝利を讃えているようだ。
奴は私に刺さっている槍を引き抜くと私の顔を覗き込むように屈み顎に手を当てる。
『さて、顔でも拝んでやろう。このアキレウスが倒したアマゾーンの女王の顔をな!』
そう言って奴は私の兜を剥ぎ取り私の顔を見た。
薄れいく意識の中、正直奴が何を口に出すか楽しみにしていた。
『強かった』とか『脅威だった』とか『よく検討した』とか戦士としての労いの言葉を期待していたのだ。
だが、奴は私の顔を見るや否や、
『美しい……』
そんな言葉を口にした。
――――いや、違う。私は、私はそんな言葉を聞きたかった訳ではない!
私は女である前に王であり戦士だ。
私は戦士として闘い、お前に敗北したのだ。
だから、だからせめて私を戦士として労ってはくれないか!
しかし、声は出ない。
唇を動かす力さえ残っていない。
意識だけが薄れいく。
嫌だ。嫌だ!私は戦士として………
暗転していく視界の中アキレウスは心底残念そうな顔をしているのが目に焼き付いた。
またよろしくお願いいたしますm(._.)m