第5話 男の娘な俺は誘拐される・1
R15作品です。
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@akira_kouno0918
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魔法の勉強を本格的に始めた俺は8歳になった。
色々と興味深い書物が多くて大変有意義な3年だったと思う。
そういえばヨガル兄は12歳でイスタラ王都立騎士養成学園という学園に入学した。
俺が住んでるこの国、軍事国家インラ帝国には大小様々な学園があるが、その中でも一際大きな学園が二つある。
1つがイオ国立第2魔法学園。
もう1つがイスタラ王都立騎士養成学園。
ちなみにイオ国立第2魔法学園と兄弟校である、イオ国立第1魔法学園はインラ帝国の南に位置する魔法国家オン法皇国にある。
イオ第1・2魔法学園はインラ帝国とオン法皇国の共同経営らしい。
これらの大きな学園には冒険者ギルドも関わって経営しているのだが、今は割愛しよう。
学園には12歳から通う事が出来る。
仮にも貴族家である俺の家ならば選択肢は二つ。
イオ第2学園か、イスタラ騎士学園かである。
ヨガル兄は次期当主として魔法騎士を目指す事もあり、イスタラ騎士学園に入る事になった。
イスタラ騎士学園は全寮制で規律を重んじる学園らしい。まさに軍人を目指す為の学園ってイメージを持ってしまう。
全寮制という事もあって、ヨガル兄はたまにしか家に顔を出さない生活が始まった。
俺はというと、魔法の本格的な訓練を毎日重ねている。今ではもう一人で図書館に本を借りに行って、家で勉強する。図書館でそのまま勉強する時もある。
また、魔法の実験の為にこっそりと街の外の森に行ったりもたまにする。そして今日も森に行っていた。
魔物はほとんど出ない安全性の高い森である。
そう。安全性の高い森であるはずである。
しかしこの状況はなんだろうか?
俺は椅子に縛られている。手は椅子の後ろで、足は椅子の足にピッタリくっ付くように縛られている。
そして口には声を出せないように、口元に布を詰められた上で縛られている。
鼻が詰まったらかなり不味そうな口封じだ。
いや、冷静に息を吸えるか試したら布の隙間から吸えた。しかしこれは俺だから大丈夫だっただけで、他の子供なら確実にパニクって、口では上手く息を出来ないだろう。
泣いて鼻水が溢れればかなりヤバかったはずだ。
とりあえず記憶を整理しよう。
俺は魔法の実験の為に森に行った。森の入り口辺りで冒険者風のおじさんに話しかけられた。
「お嬢ちゃんこの辺はお嬢ちゃんみたいなの一人だと危ないよ?」
そして俺はこう答えた。
「慣れてるんで大丈夫です」
そして問題はここだ。
「おじさんみたいなのも居るからね」
俺は突然冒険者風のおじさんに口を塞がれて、そのまま眠らされた。
恐らく水と風魔法の応用魔法であるミストスリープを直接鼻から吸わされたのだと思う。
ミストスリープは睡眠効果のある霧を発生させる魔法で、比較的簡単な魔法ではあるけれど欠陥がある。
それは鼻に作用して睡眠を誘発するという事だ。
しかも少量では効果が薄く、匂いもあって途中で口呼吸をすれば、多少の眠気は出てもなんら影響が出ないのである。
そもそもがミストスリープは人を相手に想定していない魔法なのだから当たり前でもあるのだが。
元は狼型の魔物から集落を守る為に作られた魔法だと書物で読んだ気がする。
狼型の魔物がとても好きな匂いをしてるらしい。
詠唱が無かった事を考えるに、離れた場所から魔法を使われてたのか?
なら複数人による計画的な犯行?
はい。
というわけでね。
俺誘拐されちゃいました。
油断したわ〜。
俺は男だからこういう事を全く警戒してなかったわ〜。
結構な頻度で女の子だと間違われてる俺であるけど、前世が男だし。
なんなら今もちゃんと男だし。でも見た目が女の子だからこういう警戒もしとくべきだよな〜。
まぁ過ぎた事はもうしょうがない。
さて現状確認である。
まずここは何処か?
正解は森の中にある使われなくなった小屋である。
元は木こりなどの休憩所として使われてたっぽいけど、ここの近場の木はあらかた刈り尽くされていて不要になり、そのまま放置されたっぽい。
ちなみに俺が魔法を試したりする場所もここの近場である。
根こそぎ木が刈り尽くされて、丁度いい大きな岩場もあったりして魔法の実験としてはとても便利なのだ。
おーけー場所はわかった。
次に今の時間は?
小屋の扉の隙間から見える明るさ的に夕方に差し掛かってる辺りか。
余談だがこの世界の時間は1日24時間の一年間は385日の12ヶ月である。
1週間が8日の一月が32日で、年始めの1日だけ世界的な休息日となっている特別な1日なのだ。
おーけー場所も時間もわかった。
次に俺を誘拐した冒険者風のおじさんは何処だ?
目に見える範囲には居ない。
という事で俺は魔法を使う事にする。
使う魔法は地面サーチ。
これは俺が独自に作った索敵魔法である。
原理はそんなに難しくなく、地面に少し工夫をした水溜りを作る魔法で、簡単に言えばその水溜りからある程度の範囲内にある振動を察知する。
そしてその振動の方向と大きさ、不規則性などから、動いている物の動向を察知可能なのである。
ちなみに俺の趣味で、まるで水溜りがソナーレーダーのように見える風に作った。
この魔法の欠点として、地面に繋がっている部分にしかレーダーは反応しないのと、ある程度静かな場所でなければ振動同士が水溜りに辿り着くまでにぶつかり合って正確な判断が不可能になる。
ちなみに何故この魔法をチョイスしたかというと、最悪直ぐ近くに俺を誘拐した人物や見張りが居て、万が一たまたま俺を確認しに来た時の事を考えたのだ。
この状況で足元に水溜りがあったら、お漏らしだと思うよね?
見つかってお漏らしをしたと思われる事に関してはあえて触れない。
人には触れてはならない事の一つや二つや三つや数十はあると思うんだ。
さて、これで周りに動く人間が居るかどうかがわかる。
仮に近くに居ても動いてさえ居なければ、こっそり拘束を解いた後なら全く問題にならないと思う。
なのでまずは地面サーチを確認。
……よし。
近くには動く者無し。
俺はそのまま縛られているロープを静かに火の魔法で焼き切る。
勿論少しでも火傷しない為に、縛られている肉体の表面は土魔法でコーティングした。
こうして俺はひとまず自由の身になれたわけだが、さてどうしてくれようか。
弱者を虐げる理不尽なクズが俺は嫌いだ。
前世の命を投げ出す出来事もあってか、憎いとさえ思っている。
まぁ俺は弱者ではなかったわけだけども。
自分で言うのもなんだが、俺はもうかなり凄い魔法使いである。
そんじょそこらの魔法使いには負ける気がしない。
それは3年の図書館通いによる勉強で学んだ知識から、自分の強さの位置を大雑把に判断した上での自信である。
まぁ油断してこんな事になってるから説得力は皆無なんだけども。
ていうか眠らされてる間に殺されたりしなくてマジでよかった。
……想像したら少し怖くなった。
誘拐犯許すまじ。
さてどうしてくれようか。
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