第56話 イオ第2学園に入学・11
ちょっと更新遅れちゃいました!すいません!
「すいません。師匠と約束があって来ました」
「あらハヤトくんにリアンちゃん。聞いてるよ〜合格おめでとう」
魔法騎士団本部の受け付けに、俺とリアンは居る。受け付けのお姉さんは今では顔見知りだ。
初めて会ったのは地獄の遠征前に、転移魔法をガイアス副団長に教えて貰った時だったか……その時に俺と応対してたのが、このお姉さんだった。
「「ありがとうございます」」
「それでちょっと待っててね。今ユーエ様を呼んで来るから」
そう言って受け付けのお姉さんは奥に引っ込んでいった。そのまま待つ事数分。受け付けのお姉さんが戻って来る。
「ユーエ様がこちらに来るそうだから座って待っててね」
「わかりました」
俺とリアンは受け付けから離れて、備え付けの椅子に座る。棚には師匠が作ったフィギュアが増えていた。
「お待たせハヤトくん、リアンちゃん。今日はなんだかリアンちゃん可愛らしいわね?」
「こんにちはユーエさん。今日は、その……デ、デートなので!」
「へえ〜? ほお〜?」
リアンの発言を聞いて師匠がニヤニヤしながらこちらを見る。
「ここだと話が出来ないんで早速移動しましょう」
俺はそう言って誤魔化すように歩き始めた。なんていうか……デートを茶化されるのって何と無く不愉快になるよな。
「はぁ……まったく、私の弟子はいじり甲斐が無いわね」
やれやれと言わんばかりの顔をして溜め息を吐きながらも、師匠は一緒に移動を始める。リアンも俺の横に付いてくる。
俺達は個室のある少し高級なお店で食事をする事になった。師匠いわく、防音もしっかりされているらしくてお偉いさん御用達の店らしい。
「ここ美味しいのよね〜。空気がピリピリしてる事多いからあんまり一人では来ないけど」
あ、確かにこれは美味しいかも。箸が止まらない。
「それで? 念話で言えないような事ってなんなの?」
そうだった。今日はサーシャの話をしようと思ってたんだった。
「実は…………」
俺とリアンは昨日の出来事を話す。入試が終わってフォンダ校長に『限定解除』を教える約束をした事……そしてその後にサーシャ・ナーギストと出会って魔法祭に出場しろと言われた事だ。
「ふむふむ……それで、そのサーシャに乗っ取られた白衣の女性は問題無さそうだったのね?」
「それは私から見たら大丈夫そうでした」
師匠は一言「そっか」と言って考え込み始める。しばらく考え込んだ後に、師匠は口を開いた。
「魔法祭には出た方が良いと思うわ。ていうかハヤトくん達は魔法祭がどんな物か知ってるの?」
実は知らなかったりする。
「わかんないですね」
「私も知りません」
「じゃあ教えるけど、魔法祭とは言わば『武の祭典』の学生版みたいな物ね。各学園ごとに5人のメンバーを選定して、9月から10月に掛けて東・中央・西のブロックに分けて学園同士競う……そして勝利した学園がそれぞれ東・中央・西の代表となり、魔法祭本戦に出場出来るの。イオ第2学園ならインラ帝国とオン法皇国が競う東ブロックよ」
「なるほど……武の祭典は個人戦ですが、魔法祭はチーム戦なのですね」
俺の言葉に師匠は首を振る。
「いえ、チーム戦ではなく団体戦よ。本戦は5人全ての戦闘をする決まりだけど、ブロック代表を決める予選は先に3勝すれば終わるわ」
ふむふむ……つまり俺だけ強くても勝ち抜く事は出来ないのか。
「とりあえずは学園代表を目指しなさいな。イオ第2学園なら確か……校内戦で学園序列を競っているんだったかしら?」
なんともまあ、かなり実力主義な学園なんだな。
「私も出れるでしょうか……」
リアンがそんな事を口にする。
「なんだ? リアンも出たいのか?」
「そういう訳じゃないけど……ハヤトくんに何かあるかもしれないなら、その時に少しでも近くに居た方が良いかなって」
つまり、リアンは俺を心配してるから魔法祭に出たいと思ってるのか。
「リアンちゃんなら、いい線いけるんじゃない? 限定解除も使えるし、何とかなると思うわよ」
師匠の無責任なその言葉でリアンの顔がパアッと明るくなる。
「私、頑張ります!」
……まあリアンが望むなら稽古を付けて応援してもいいかな。一緒に出れるなら俺もその方が、気が楽だしね。
「さて、じゃあ方針も決まったみたいだし……あんまりデートの時間を減らしちゃっても悪いしね。そろそろ私は仕事に戻るわ」
リアンは師匠の言葉を聞いて、顔をほっぺをピンクに染めながら照れている。
俺達3人は昼食を済ませて店を出た。
「また何かあったら念話で知らせなさいな。じゃあリアンちゃん頑張ってね!」
最後に一言、師匠はそう言って去っていく。
さて、じゃあリアンとお買い物デートと行きますか。
「あの……ハヤトくん……?」
「ん? どうしたリアン」
いざ歩き出そうとすると、モジモジしながらリアンが声を掛けてきた。
「その……て、手を繋いでも、いい?」
なん……だとっ……!?
手を繋いだまま外を一緒に歩くのか!?
まさしく……そう、これはまさしくデートなのではなかろうか? いやまぁデートなんだけども、俺の中では学園に必要な物を揃える為の買い物って意識が強かったから……そんなに意識せずに居られたけども。
「て……手を?」
思わず俺はそう口から溢してしまった。
「あっ! い、嫌なら別に大丈夫だからね? 全然気にしないで、忘れて?」
リアンが明らかに無理した顔でそんな事を言う。
ああ、俺はヘタレだな。でも仕方が無いだろう? 元コミュ障の俺がこんな素敵イベントの経験があると思うか?
しかし、ここは男になれ俺! むしろ漢になれ!!
「嫌なわけ無いだろ?」
俺は勇気を振り絞ってそう言いながら、リアンの手を握る。
ああ……転移の時にいつも握ってるけど……なんか新鮮。デートだとこんなに違う物なのか?
やべ、手汗とか大丈夫かな? ていうか訓練した後にそのまま出発したんだけど、汗臭く無いだろうか?
俺は少し緊張しながら前を向く。そしてチラッとリアンの顔を覗くと……とても嬉しそうにニッコニッコした笑顔だった。
まあリアンが喜んでるならそれでいいか……
「じゃあ行こっか?」
「うん!」
こうして俺とリアンは、入学に備えてお買い物をしながらデートを楽しんだ。リアンは終始笑顔でとても幸せそうだったな。
家に帰ると、疲れた顔をしたクラガお父様が帰って来ていた。クラガお父様は入試の警備で泊まり込みの仕事をしていたのだ。
「お帰りハヤト、リアン」
「ただいまクラガお父様」
「ただいまクラガさん」
「二人とも合格したんだってな? おめでとう。ところでハヤト……ちょっと二人きりで話がある」
ん? 一体なんだろうか?
「二人きりで?」
「ああ、二人きりでだ」
そう言いながらクラガお父様は自らの私室に歩を進める。俺も訝しみながら後に続いた。
そして部屋に着いた時、クラガお父様は口を開いた。
「ハヤト、縁談の話を覚えているか? その子がイオ第2学園に入学するらしい」
縁談!? なんだっけ……そんな話あったか!?
全く覚えがない俺は困惑した。
明日も19時〜19時20分頃に更新となります!
縁談の話を覚えてない方は第20話をご参照下さい\(^o^)/




