第44話 新しい家族・1
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俺は帰ってきた。
あの地獄の遠征から生きて帰って来たのだ。
俺が大きな声で発した帰宅の言葉を聞いて、直ぐにミレニーが部屋から出て俺を発見する。
「ハヤトにぃ!お帰りな……さ……ぃ?」
ミレニーは俺の隣に居るリアンを凝視する。
そのまま視線は俺とリアンを繋いでいるしっかりと握られた二人の手に移る。
そしてミレニーは再度俺を見て一瞬泣きそうな顔をしたかと思ったら、とんでもない事を叫びながらリビングの方に走っていった。
「ママ!!!ハヤトにぃがお嫁さん連れて来た!!!」
どうやら俺は早く帰還を伝えたいがあまり、転移する時にリアンの手を握った後にはリアンの事が頭から抜け落ちていたらしい。
「あの……そろそろ手を……」
リアンが頬を染めてモジモジしながら声を掛けて来たので俺は手を離す。
正直俺もちょっと恥ずかしい。
まさか手を繋いでる所を見ただけで、ミレニーがあんな事を口走るとは思いもしていなかった。
メニルお母様を呼びに行ったミレニーは、メニルお母様の手を引っ張りながら直ぐに戻ってきた。
「あらあらまあまあ。ハヤトちゃんお帰りなさい。ところでそちらの可愛らしいお嬢さんはどうしたの?」
メニルお母様はとても嬉しそうに微笑みながらリアンの事を聞いてくる。
「この子はリアン・ガナエリと言ってーーーー」
俺はアクアラでリアンが誘拐された事件と、ガナエリ家でのリアンの扱いを見過ごせなかった俺が師匠に頼んでリアンを引き取ってもらった旨を説明する。
ちなみに師匠の3千万ファジーを使って引き取ったという部分は上手くボカして話した。
師匠は貸したつもりなど無いのだろうけど、俺はキッチリお返しするつもりなのだ。
無利子無期限の出世払いだけどな。
「なるほど。ハヤトちゃんは偉いわね!じゃあリアンちゃんはこれからユーエ様と暮らすのかしら?」
その言葉を聞いて俺はリアンの顔を見る。
リアンは突然に話を振られてあたふたしながらも自らの希望を口にした。
「あっあの!そのっ……で、出来ればハヤトくんと一緒に暮らしたいですっ!」
傍から見ればまさに愛の告白である。
リアンの言葉を聞いたメニルお母様は先程よりも嬉しそうな微笑みを浮かべながら俺とリアンの顔を見る。
「あらあら。これは本当にハヤトちゃんはお嫁さんを連れて来たのかしらね?」
茶化すように言うがその顔は緩みに緩んでいる。
それに対して隣のミレニーはふくれっ面を浮かべていた。
まさか……ミレニーたん?
嫉妬してくれているのかい?
そんな顔をしているミレニーたんも本当に可愛い。
ああ俺の可愛いミレニーたんマジ天使。
このままミレニーたんを見続けていたいが、今はリアンの話をしなければな。
……あとでいっぱいミレニーたんを愛でよう。
俺はそんな決意を胸に抱いてから話し始めた。
「リアンはお嫁さんとして連れて来た訳じゃないよ。師匠は何かと忙しいだろうし、ちょっと……いや、結構脳筋なところがあるし……何よりもリアンにはこれから家族の温かさを知ってもらいたいんだよね」
これは俺の願望でもある。
リアンはガナエリ家で孤独に生きて来た。
家族の温かさを知らずにこれまで過ごしたはずだ。
師匠は優しい人だから出来る限りリアンと一緒に過ごすようにしてくれるだろう。
それでも師匠は独り身で、ペンドラ騎士団の団長という地位を持った忙しい身だ。
リアンに寂しい思いをさせてしまうと思う。
それならば新しい家族として誰かが傍にずっと居られるヴァーチ家で暮らす方が、リアンには良いと思ったのだ。
「ハヤトちゃんは見違えるように成長したわね。ママ嬉しいわぁ。言葉もずっと余所余所しい敬語だったけど、それも今は身近に感じるし……よしわかったわ!パパに相談してからじゃないと決められないけど、ママも一緒に説得してあげる!」
言葉遣い……気にしてなかったけど余所余所しかったのか。
しかしそこでふくれっ面をしていたミレニーはリアンを見ながら口を開いた。
「……ハヤトにぃは私のだからねっ!……でも、私もパパを説得するの手伝う」
ミレニーもリアンのガナエリ家での家庭環境は聞いていた。
だから嫉妬しながらも、俺とメニルお母様のようにリアンを心配したのだろう。
俺のミレニーたんは慈愛に満ちた女神様のようだ……兄として誇りに思う…………ミレニーたんマジ天使だわ。
「……ありがとう、ございます」
メニルお母様とミレニーの言葉を聞いたリアンはずっと張り詰めていた緊張が溶けたのか、安心したように顔を緩めてお礼を口にした。
その顔を見たメニルお母様はリアンを優しく抱き締める。
「気にしないで?今からリアンちゃんも家族なんだから」
「…………はい」
「もう私の娘なんだから敬語も使わないの」
「は、……うん」
「これからいっぱい甘えていいんだからね?」
「…………うん……」
リアンの頬には涙が伝っていた。
そこには思わず見惚れてしまうほどに満面で可愛らしい笑顔をするリアンの姿があった。
メニルお母様がリアンをしばらく抱き締めて頭を撫でていると、ミレニーが何かを思い出したのか口を開く。
「そういえばママ、ご飯大丈夫?」
そこでメニルお母様も何かを思い出したのかハッとした。
「ミレニーちゃんナイスよ!」
そう言ってリアンから離れてリビングに走って行った。
残された俺とリアンとミレニーの中で、ミレニーが最初に動き出す。
ミレニーはリアンに近寄り、リアンの手を握る。
「私達も行こ?きっともう直ぐご飯だから」
この子は本当に優しいな。
「うんっ!」
リアンも素直にミレニーの手を握り返して答える。
二人が歩き出すのに合わせて俺もリビングに移動した。
キッチンで夕飯を作っているのであろうメニルお母様から声が届く。
「ご飯はもうちょっと時間掛かるから3人で先にお風呂入ってらっしゃい。ハヤトちゃんとリアンちゃんは長旅で汚れてるでしょう?」
確かに長旅で俺もリアンも大分汚れている。
しかし、3人で……だと?
……まあ俺とリアンは8歳で、ミレニーは7歳だから問題無いと言える……のか?
……いや、ここで迷うべきではない!
ここまでの思考に要した時間は僅かに0.2秒。
俺が赤ちゃんの頃から鍛え上げた肉体には脳も含まれるのだ。
「は〜い」
他の二人が言葉を発する前に俺はすかさずメニルお母様に向けて返事をした。
ミレニーたんは妹だからまだ問題無いと思って、よく一緒にお風呂に入っていたものだ。
そこにリアンが加わった時に、もしも俺が一緒にお風呂に入る事を拒否した場合どうなるか?
おそらくはミレニーたんと一緒にお風呂に入れるポジションがリアンに奪われるだろう。
そしてそれは今後ずっと続くのだろう。
そんな事があってたまるか!
俺はまだミレニーたんと一緒にお風呂に入るんだっ!
こうして俺達3人は一緒にお風呂に入った。
ちなみにリアンは俺をチラチラ見ては少し顔を赤くしていた。
……許せリアン。
これもミレニーたんと一緒にお風呂に入る為には仕方が無い事だったのだ……
お風呂を上がって着替えた俺達3人がリビングに戻ると、ご飯の用意が終わっていた。
そこで玄関の扉が開く音と、2ヶ月振りに聞く声が響いた。
「ただいま!」
クラガお父様が帰ってきた。
明日からまた19時更新となります。
おそらく明日の更新で幼少期編が終わり、明後日から新しい舞台になると思います!
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