第43話 王都に帰還する・12
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お寿司屋さんで俺とリアンと師匠は食事を済ませた後、今後の予定を話していた。
「じゃあリアンもこのまま王都に連れてって、師匠と一緒に暮らすんですか?」
「そうしたいけど、私は忙しいしどうしようかしらね。リアンちゃんはどうしたい?」
リアンは俺の方をチラチラ見ながら口籠っている。
「なるほど……むっふっふ」
その顔を見た師匠はリアンの気持ちを察したのか、そう言ってニヤニヤし始めた。
俺も予想は出来ている。
リアンは出来るなら俺と一緒に暮らしたいのだろう。
俺はそうなっても構わない。
しかし……お父様やお母様に相談も無しでは決められないよな。
そう思っていると師匠が提案をしてくる。
「もしハヤトくんがリアンちゃんと一緒に暮らしてもいいと言うのなら、クラガには私から話してもいいわよ?どうする?」
ニヤニヤした顔のまま俺を見て言うその言葉は、まるで恋人を親に紹介するのに付き合ってあげるよと仄めかしてるようで少しイラッとする。
そもそも俺には妹のミレニーたんが居るし。
ああ……もう何年も会って無いかのように感じるよ……マイ・エンジェル・ミレニーたん……
早く帰ってミレニーに会いたいな。
……いかんいかん、今はそれよりもリアンの事を決めなければ。
師匠にはイラッとするけど俺はリアンと暮らす事になっても問題無い。
「俺は構いませんが、それなら王都に帰ってからお父様達に相談してからですね」
「そうねぇ……まあハヤトくんと暮らせなかった時は私と暮らしましょ?リアンちゃんはそれでいい?」
「はい!」
とりあえずリアンの今後はこれで大丈夫かな。
細かい事は王都に帰ってからで問題無いだろう。
「じゃあ今日はこれでお開きにしますか。明日は出発ですし…リアンの事よろしくお願いしますね」
そう言って立ち上がると、リアンが驚愕した表情をしてから子犬のように目をウルウルさせてこちらを見る。
それを見た師匠は微笑んでから宣言した。
「今日はハヤトくんと私とリアンちゃんの3人で寝ましょうか」
リアンはその言葉を聞いた瞬間、師匠を見て満開の笑顔になる。
「はあ……わかりました」
こんな笑顔を見せられたら断るなんて出来ないよな。
こうしてこの日は俺と師匠とリアンの3人で一夜を過ごすのだった。
もちろん同じ宿屋の同じ部屋ではあったけれど、それぞれ別のベッドで寝たよ。
俺はまだ8歳だからね。
夜が明けて俺と師匠とリアンは軽く朝食を済ませてから出発の準備として色々買い出しをしていた。
リアンは身一つでガナエリ家を出て来たから色々揃えなきゃならないしな。
そしてその買い物に俺も付き添ってるわけだが。
…………女性の買い物に付き合うってこんなに大変なのか。
師匠がリアンを連れてあっちこっちに歩き出す。
リアンに服やアクセサリーを合わせてみながら俺に見せてくるのだ。
その度に俺は「似合ってるよ」と言うのだが、似合ってると言ってもそれを買い物カゴに入れずに別な商品に手を伸ばす。
たまにカゴに入る商品もあるけれど、俺はもはや「ニアッテルヨ」と答えるだけの機械になった気分だった。
リアンの服の予備も揃え、ある程度他の買い物も終えた俺達は少し早めにペンドラ騎士団の集合場所に向かう。
着いた時には既に大多数のペンドラ騎士団メンバーが揃っていた。
「ペンドラ騎士団の騎士様がこんなに……凄い……」
そう口から溢すのはリアンである。
まあ確かに世界最強の騎士団と呼ばれるペンドラ騎士団だし、凄い事なのだろうな。
周りには野次馬のようにペンドラ騎士団を見に来る街の人達が大勢居るし。
何気なく混ざってる俺とリアンが凄い浮いてる気がする。
いたる所からひしひしと目線を感じるし。
気にしても仕方が無いけれど、少し居心地が悪い。
やがて点呼を終えたペンドラ騎士団の部隊長さん達が師匠に報告していく。
師匠の隣にはガイアス副団長も居る。
集合時間が来たのかペンドラ騎士団の面々は整列し、師匠はその前に立って口を開いた。
「皆しっかりこのアクアラで休んだ事と思う!!これからまた数日は移動だ!!魔の領域程では無いが魔物も出現する!!油断しないように!!では出発!!」
こうして俺とリアンにペンドラ騎士団はアクアラの街を出発した。
そして出発してからおよそ3時間。
問題が発生した。
すっかり忘れていたのだが……リアンは魔眼を持ってはいるけれど、それ以外は普通の女の子だ。
急いでいないとはいえ、8歳の子供が軍の行軍のような移動に耐えれるはずもなかった。
俺?
俺はほらあれだよ。
産まれた時から鍛えてるような物だから大丈夫さ。
まあ何にしてもこれは何か対策をしなければならないな。
今はまだ何とか付いていけてるが、リアンの顔は明らかに疲労の限界だと物語っている。
……仕方がない。
あの手で行くか。
「師匠、ちょっとリアンの事でお話が…」
「え?…………あ………………よく考えれば8歳の子供にはちょっと辛い行軍かしらね……」
俺の声を聞いてリアンを見た師匠はリアンの状態を察したようだ。
「まあ俺も8歳ですけどね?それはともかく、リアンは限界なので俺が転移で運ぼうかと思いまして」
俺が限定解除を使って転移すればかなりの距離を稼げる。
「でもその為には俺がペンドラ騎士団の行軍から離れられませんから、誰かリアンの護衛に付いてもらいたいと思うんですが」
転移をする為には転移先のイメージが必要になる。
それはつまり転移先を知らなければならないのだ。
つまりリアンと護衛を置いて、俺がペンドラ騎士団と一緒にある程度進んだら転移で迎えに行くという事を繰り返すというのである。
「そうねぇ……ガイアス!」
師匠はガイアス副団長を呼んで事情を説明する。
「わかりました。リアンちゃんの事はお任せください」
こうしてガイアス副団長はリアンの護衛として残る事になった。
「じゃあリアン、ある程度進んだら迎えに来るからゆっくり休むといい」
リアンは申し訳なさそうにしながらも疲労が限界に近いのか、素直に頷く。
そこからはおよそ3時間置きにリアンとガイアス副団長を転移で運びながら行軍は進んだ。
途中でたまに魔物と遭遇するのだが、ペンドラ騎士団を前にしては何も出来ずに散っていく。
そんな移動を繰り返しながら街へと赴き、数日滞在してからまた行軍をするという繰り返しが続いた。
街の滞在中は、俺とリアンでご飯を食べたり街の観光をして回ったりしている。
お店の人や街の住人には度々姉妹だと勘違いされたな。
そして……アクアラの街でリアンと出会ってからおよそ3週間が経った。
今俺達の眼前には懐かしき王都が見えている。
やっと……
……やっと帰ってきたぁぁああ!!!
ああ早くミレニーたんに会いたい会いたい会いたい会いたい。
「師匠!!」
「……なに?」
俺の決意に満ちた表情を見ながら師匠は答える。
その声には多少の呆れが混じっているが、顔は微笑んでいる。
「このまま直ぐに家に帰ってもいいですか!?」
「まあ……問題は無いけれど、リアンも連れて行きなさいな」
「わかりました!!じゃあお先に失礼します!」
そう言って俺はリアンの手を握る。
「え?え??」
リアンは戸惑いながら俺と師匠を交互に見る。
俺はそんな事も気にせずに魔法を唱えた。
「転移!」
そして転移した目の前には懐かしき俺の家。
隣にはリアンも居る。
俺はリアンの手を握ったまま、玄関を開けて家の中に入った。
そして。
「ただいま!!」
俺は家の中に響くように大きな声で帰った事を知らせるのだった。
やっと王都に到着しました!!
明日から数日は更新お休みいただこうと思います。
予定では28日の19時に更新するつもりですが、遅くとも6月6日までには必ず更新します!
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