第39話 王都に帰還する・8
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さて、リアンを連れ出しはしたけど何処で何を話そうか。
出来れば人のあまり居ない場所の方が都合がいいよな。
そうだ。
街の外に転移して地下室作って話せばいいか。
「リアン、転移して街の外で話そうと思うんだけど構わない?」
リアンはその問いに即答する。
「うん大丈夫」
よし、じゃあ行くか。
「転移」
俺とリアンは街から少し離れた森の中に転移する。
あとは土魔法でいつものように地下室を作る。
地下室作るのも慣れたものだな。
とりあえず何から話そう。
やはり頬の叩かれたような跡について聞いた方がいいだろうか?
「その頬の腫れ…昨日は無かったと思うけど、どうしたの?」
リアンは赤く腫れた頬に手を添えながら俯いた。
「家の人にやられたのか?」
「………」
「言い辛いなら無理には聞かないけれど、話してくれるなら何か力になってあげられるかもしれないよ?」
リアンは俯いたままゆっくりと喋り始める。
「………これは…お父様に…面倒な事を起すなって怒られて…」
…………は?
誘拐された自分の娘が無事に帰って来て、安心するでも心配するでも慰めるでもなく、面倒事として被害者である娘に怒った上に手を上げたのか?
その父親くそったれだな。
俺が思ってる以上にリアンは辛い環境に居るのかもしれない。
「リアンは普段どんな暮らしをしてるんだ?」
リアンはずっと俯いたまま答える。
「……いつもは…本を読んでる…たまに海を眺めに行ったり……昨日はそれで誘拐されちゃったけど…」
「ご飯とかはどうしてる?」
「…メイドさんが私の部屋に運んできてくれるよ」
つまり、一人で食べてるのか。
さっきの門番の対応を考えるに、使用人などからはそこまで酷い目では見られていないのだろう。
それでも雇い主であるリアンの親などからはリアンに対して相応の対応をするようにキツく言ってそうな感じか。
俺が顎に手をあてながら考え込んでいるとリアンが質問してきた。
「………ハヤトくんは…なんでそんなに魔素があるの?昨日の転移した時なんかもっと凄かったし」
なんで…?
そりゃまあ赤ちゃんの頃からしっかりした自我があって、訓練しまくって来たからだけど…なんて言えばいいのだろう?
転生者だからと言っても伝わらないよな。
それならまあシンプルに努力とでも言えばいいか。
「努力の結晶かな?昨日のは特殊な魔法みたいなものだけど」
リアンはその答えを予想していなかったのか、少し驚く。
そして諦めのような、祈りのような目をしながら呟いた。
「私も……私もハヤトくんみたいに強くなりたい…」
「リアンは強くなりたいのか?」
「うん……そうすればお父様もお母様も…優しくしてくれるかもしれない……」
…なるほど。
確か師匠が言ってたな。
ガナエリ家は魔眼を持ったリアンよりも、兄か弟かは知らないけど魔眼を持たない息子の方が遥かに優秀だと。
ガナエリ家は度々魔眼を持った人物が産まれる名家だとも言っていた。
そしてそれが理由でリアンは家の中で孤立しているのかもしれない。
魔眼を持ったリアンよりも優秀な息子を当主にしたい…しかし魔眼はその存在自体が希少で優秀な息子を差し置いて、大した力も無いリアンが当主になる可能性を危惧して冷遇している…こんな感じだろうか。
だから自分が強くなれば…今の環境から脱する事が出来るかもしれない…か。
そうか……この子は…俺に少し似てるのかもしれない。
…………自殺する前の俺に。
俺も力があったなら、不良に抗う術があったならば…何かが違ったかもしれない。
「……それに…魔眼なんて持ってなければ……普通の家族の一人として私も…」
そうだな。
俺もGFOなんてやってなければ、不良に目を付けられる事も無かったかもしれない。
「……ハヤトくんを見た時に私…びっくりした…こんなに強い魔素を持った人を私は初めて見た…しかもそれが私と歳の変わらなさそうな女の子で………男の子だったけど」
俺は最後の一言に対して苦笑いする。
「この人なら何とかしてくれると思ったの…私もこの人みたいになれないかなって思ったの…それほどにハヤトくんの魔素は力強く視えたの………でも……」
そう語るリアンの目には涙が溜まっていた。
「でも………今日ね…お母様に言われたの………「あんたなんて産まれて来なければ」って……ぐすっ………その時に……ぐすっ…気付いたんだ………ひっく…私は生きる事を……うぐっ……の……望まれてっ……ないんだっでっ………うわぁぁぁんっっ」
話ながら我慢出来ずにリアンは泣き出した。
俺は何も言わずにリアンを抱き締める。
……この子は………愛されて来なかったのだろう。
産まれた事を疎まれ、生きる事を疎まれ……一人孤独に耐えて来たのだろう。
どうにかしてあげたい。
でもどうすればいいのだろうか?
リアンをあの家に居させたままにはしておけない。
でも…どうするにせよ、その前にこれだけは確認しなければならない。
「リアン…君は生きたい?」
リアンは涙と鼻水で汚れた顔を俺に向けて力強く答えた。
「生ぎだぃっ!!」
「そうか…」
そうだ。
俺はリアンのような者を見捨てるなんて出来ない。
救えるのならば救いたい。
前世で救われなかった俺だけど…救いを求めなかったわけじゃない。
ずっと願ってた。
ずっと祈ってた。
自分ではどうにもならない現実に打ち負かされて諦めたつもりになってても、心の奥では希望を探し求めていた。
俺の時には結局そんな物は無かったけれど。
………でもリアンには…今、俺が居る。
俺なら手を差し伸べてあげられる。
だから…
「俺が何とかしてやる」
根拠も無く俺の口からはそんな言葉が発せられていた。
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