第38話 王都に帰還する・7
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魔眼の少女リアンを誘拐犯から助けた日の翌日。
俺は師匠と昼食を食べに、あるお店にきていた。
昨日お刺身に感動した話をしたところ、師匠のオススメの店に案内されたのだ。
そして俺は驚愕する。
これは…まさか……寿司!!
お米が一口大に握られており、その上にお刺身が乗っている。
俺の喉は無意識にごくりと鳴った。
師匠の顔をちらっと見ると、ドヤ顔をしてこちらを見ている。
何とも憎たらしいドヤ顔なのだが、これはドヤ顔も許せるかもしれない。
平たい小皿には醤油のような見た目の液体もある。
いざお口へと!
俺は醤油らしき液体を寿司に付けて口に運んだ。
思わず動きが固まった。
そしてポロっと箸をお皿の上に落としてしまう。
これは…まさしく…寿司!!
「ふっふ〜んどうよ?」
師匠がドヤ顔のまま問い掛ける。
「まさか…寿司を食べれるとは思ってませんでしたよ…それに醤油まであるなんて驚きです」
俺が素直に話すと満足したのか、師匠も食べ始めた。
俺も一心不乱に食べ始める。
寿司をある程度満喫してからゆっくりしていると師匠が昨日の誘拐事件の詳細報告を求めてきた。
俺はありのままに話す。
ちなみに誘拐犯をロープで繋いだまま引き摺った話をした時は師匠も少し苦笑いしていた。
そして、リアン・ガナエリの名を聞いた時に師匠の表情が一瞬変わった。
やはり何かあるのだろうか?
「師匠、リアンには何かあるんですか?」
師匠がどう答えればいいか考えるように目を瞑る。
「………ガナエリ家については知らないのよね?」
もちろん俺は貴族に興味も無いし、俺の家であるヴァーチ家では次の当主がヨガル兄の予定だから俺は他貴族を覚える勉強もして来なかった。
なので素直に頷くと、師匠は話を続ける。
「あの家は魔眼の持ち主が度々産まれる名家なんだけど……何の因果かしらね…今の代のガナエリ家では魔眼を持った娘よりも魔眼を持たない息子の方が遥かに優秀らしいのよ」
ああつまり貴族のお家騒動ってやつか。
「それで…まあ…ガナエリ家では娘が居ない者として扱われているらしいのよね…詳しくは私も知らないんだけど」
リアンが居ない者として扱われている?
つまり当主も含めて一家でリアンの存在を認めていないという事か?
「どうにかしないんですか?」
師匠は苦い顔をする。
「衣食住全て問題は無いのよ…ハヤトくんの話を聞いた限りだと誘拐されたのもたまたまみたいだし、ガナエリ家の誰かが魔眼の少女を邪魔者として誘拐の依頼をしたとかだったら何とか出来たけれど…現状はどうしようもないわね」
なるほど…しかし…
俺はリアンの去り際の横顔を思い出す。
あの顔は何処かで見た事がある気がするんだよな。
何もかも諦めて絶望してるような…苦しくて堪らないのにどうしようもない現実の中で生きているかのような…そんな横顔。
何処で見たのだろうか?
思い出せない。
リアンはまた会おうと言っていたな。
少しガナエリ家に顔を出してみるか。
「ガナエリ家って何処ですかね」
師匠が目を見開いて俺を見る。
そして微笑ましい物を見るような眼差しで口を開く。
「冒険者ギルド前を右に進んで海沿いに進んでれば砂浜に面した大きな屋敷があるんだけど、そこがガナエリ家よ」
「ちょっと行ってみます」
「そう……何かあれば私の名前を出してもいいわ」
そう言って師匠は席を立つ。
「じゃあ私はもう行くけど、明日の集合時間までには全部終わらせなさいよ?」
そう。
明日ペンドラ騎士団は次の街に向けて出発する。
「わかってます」
師匠は再度微笑んでから店を出ていった。
俺もそろそろ出るか。
支払いは師匠がしててくれたみたいだ。
このままガナエリ家に向かおう。
俺は師匠に教わった通りに道を歩いていった。
すると砂浜に面した一際大きな屋敷が見えてきた。
なんか砂浜もセットで見ると、プライベートビーチを持った豪邸って感じの屋敷だな。
そのまま門の前まで歩いていく。
すると門番が立っていた。
「すみません、こちらはガナエリ家で合ってますか?」
「合ってるよお嬢さん。何かご用かい?」
「リアンさんに会いに来たのですが、いらっしゃいますか?」
リアンの名前を聞いて門番の表情が少し険しくなった。
「リアン様にどのようなご用で?」
この険しい表情の理由はなんだろうか?
誘拐された直後だから警戒してるのか?
いやしかし…違和感がある。
何か都合の悪い事でもあるかのような…何があるのだろうか?
ここはなんて答えるべきだろう。
友達ですと言っても会わせては貰えなさそうな雰囲気だよな。
…あ。
師匠の名前出しちゃえばいいか。
師匠も多分こういう事態を何かしら予測して、名前を出してもいいと言ったのだろうし。
「昨日の誘拐事件に関してペンドラ騎士団の団長であるユーエ・スフィアから、再度事情を直接聞いてくるように指示されました」
「君みたいな少女が…かい?」
門番は疑いの目を向けてくる。
「こう見えても団長の直弟子ですし、男ですよ?」
「……男?」
門番は俺が男に見えないのか、じっくりと観察している。
「何か身分などを証明出来る物はありませんか?」
身分か。
流石に貴族として此処に居る訳じゃないし、あの指輪は出さない方がいいよな。
冒険者ギルドで貰ったギルドカードとかでダメかな?
俺は魔道具の袋からギルドカードを取り出す。
「これではダメですか?」
門番にギルドカードを手渡す。
門番はギルドカードのチェックを始める。
「ハヤト・ヴァーチ…ランクはD…クエスト達成数0……ん?0??」
何か問題があっただろうか?
「君…どうしてクエスト達成数が0なのにDランクなの?」
ああそれか。
俺は冒険者ギルドアクアラ支部での出来事を説明する。
「なるほど…わかりました。ただいまリアン様をお呼びしますので少々お待ちください」
どうやら納得してもらえたようだな。
それにしてもわざわざリアンを呼ぶというのはどういう事だろうか?
普通ならこのような来客ならば屋敷の中に招き入れるものだと思うけど。
少し待っていると門番と一緒にリアンが中から歩いてくる。
リアンは俺を見付けて一瞬嬉しそうな顔をした。
しかし、その頬には赤い腫れが見える。
昨日はリアンに暴行の跡などは無かったはずなのだが…まさか家族にやられたのだろうか?
俺の前まで来た門番が口を開く。
「お待たせいたしました」
これは二人きりで話した方がいいだろうな。
「すいません。門の前で話すのもアレですし、リアンさんと少し歩いても問題無いですよね?」
門番は少し悩んだが、問題無いと答える。
「じゃあ行こうか」
そう言って俺はリアンの手を握った。
「うん」
そして門番には聴こえないようにリアンは耳元で囁く。
「…会いに来てくれてありがとう…」
その声が俺には、救いを求める声に聴こえた。
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