第28話 地獄の遠征に行く・14
R15作品です。
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流石は魔物の領域と呼ばれる北の魔大陸。
俺と師匠は奥に向かって歩いているのだが、奥に進めば進むほどに魔物と遭遇する。
そして遭遇した魔物は俺と師匠に瞬殺されてから死体処理の為に燃やされる。
これはなかなかにハードだ。
休む暇が無い。
倒して歩いて直ぐまた魔物と遭遇するのだ。
「大丈夫?」
疲れた顔をする俺に師匠が声を掛ける。
「大丈夫ですが…休む暇もありませんね」
「今からそんなんじゃこの先保たないわよ?」
そんな事を言われてもどうすればいいのだろうか。
「もっと手を抜きなさいな。一体一体に全力で攻撃してるからそんなに疲れるのよ」
言われてみれば確かに全力だった気がする。
「グガァァァッッ」
おっとまたか。
魔物と遭遇して俺は動き出そうとすると師匠に声を掛けられる。
「力を抜いてやってみなさい」
「わかりました」
俺は力を抜いたまま黒刀・羅刹を魔物の首に向けて振り抜く。
よく考えればこの切れ味に力なんて必要無かったな。
魔物の首はストンと落ちた。
「それでしばらくは大丈夫そうね…さて、先に進むわよ」
師匠と俺はまた歩き出す。
2時間ほど魔物を倒しながら奥に向かって歩いただろうか。
明らかに空気というか、魔素がとても濃く感じるようになってきた。
「この辺りから魔物の強さが格段に上がるから油断しないでね?じゃあここから東の海に向かうわよ」
「了解」
そう言って歩き出した直後。
突然師匠が俺の方向に火の魔法を無詠唱でぶっ放す。
突然過ぎて反応出来なかったのだが、その魔法は俺の横を通り過ぎて何かに当たって爆発した。
振り返るとそこには虎っぽい見た目の魔物が爆散している。
「油断しない」
師匠は一言そう言ってから再度歩き出す。
油断しているつもりは無かった。
無かったのだが、慢心はしていたかもしれない。
背後に居た虎型の魔物に俺は気付いていなかった。
師匠が居なければ俺は一撃を受けていたかもしれない。
気を引き締めていかなければ。
こうして本格的に間引きを始める俺と師匠だったが、ここからがまさに地獄だった。
魔物の強さは本当に油断出来ないレベルで上がったし、師匠が東の海に向かって進むペースもかなり上がってほぼ常時魔物と戦闘してる。
ギリギリついて行けるが、こんなペースで一ヶ月も進むのだろうか?
正直俺には無理だと思う。
夜になっても魔物との戦闘が続く。
もう派手に広範囲で強力な魔法でも使ってしまえばいいのではないだろうか。
じゃないと休む事すらままならない。
「広範囲殲滅魔法とかで一掃したりしないんですか?」
疲労がピークに来ていた俺は思わずそう聞いていた。
「私一人ならそれでも良かったけど、ハヤトくんの考えてる結果にはならないわよ?」
「どういう事ですか?」
「派手な魔法を使うと魔人に補足されて襲われるのよね」
なるほど…八方塞がりか。
「心配しなくてもそろそろ休むわよ」
まじでか。
ここまで来て鬼に見えていた師匠が美しい慈愛の女神様に見えてくる。
本当にキツかった。
いや、まじで。
何時間ずっと戦ってたんだって話だよ。
負傷は治癒すれば問題無いけどさ。
精神的な疲労が酷い。
「この辺がいいかしらね」
そう言って師匠は木に囲まれた中に少し存在する平らな地面に、土魔法を使って深くて一部屋ほどの広さの穴を地面に作る。
「中に入りなさいな」
俺は言われるままに中に入る。
師匠も中に入ってきて、土魔法で蓋をしてしまった。
蓋をしてから師匠が光魔法で部屋を明るくする。
ああなんでこんな簡単な事に俺は気付かなかったのだろうか。
地下に部屋を作れば休めるよな。
俺はこんな事すら思い付かないほどに切羽詰まっていたのだろう。
「明日も今日と同じように進むから、今日はもうこれを食べて早く寝なさい」
師匠が干し肉と乾燥した野菜と塩に、魔法で作ったお湯を淹れただけの簡易スープを手渡してきた。
シンプルだけど意外と美味しいかもしれない。
少しだけ塩気が強く感じるが、今ならそれも逆に美味しく感じる。
なんにせよ今日は疲れた。
明日からまたこの地獄が始まるのか。
地獄の遠征とはよく言った物だと一瞬思ったが、俺の場合は本当に地獄に居るのかもしれないな。
もう休もう。
早く休んで明日に備えなければ。
こうして俺は眠りに就いた。
・・・ユーエ・スフィア視点・・・
この子は本当に規格外ね。
私のペースでも結局最後までついてこれた。
魔物との戦闘に関してもなんら問題無い。
むしろこの年齢でこれだけ戦えるのが驚異的である。
流石に疲れたのか、私の弟子はもう寝てしまったみたいだね。
こうして寝顔を見ると、先程まで一緒に戦っていたとは思えないくらいに可愛い。
この子って本当に男の子なのだろうか?
寝てる今なら確認しても大丈夫ではないだろうか?
どうやって確認するかって?
勿論少し…ほんの少し下に履いている服に隙間を作って覗けばいいだけだよ?
という事でこっそり近付いて手を伸ばす。
………ちゃんとある。
何がとは言わないが、ナニがある。
こんなに可愛いくても男の子なんだね。
さて…確認する物もしたし、私も休もうかしら。
(この子を決して死なせてはいけませんよ?)
「誰だ!」
なんだ今のは。
頭の中に直接語り掛けるような声が聴こえた。
…………
返事は無い。
…まさかサーシャの言っていたハヤトくんを見ているかもしれないという神とか?
返事が無ければ確認のしようもない。
死なせるなと言ってくるという事は、今の時点では敵では無い存在なのだろうか。
……警戒しても無駄だろうな。
その気になれば私など容易に殺せる存在なのだろう。
考えるのをやめて私は今度こそ休む事にした。
明日も19時更新となります。
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