第23話 地獄の遠征に行く・9
R15作品です。
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師匠のダメさ加減を再確認してから俺は循環術式の準備に入る。
個人で循環術式を魔道具に組み込む場合には基本的に大きく2つの行程がある。
1つが術式の動作確認。
これは俺がナイフで循環術式の試行錯誤を行なっていたように、組み込む予定の術式を試して動作の確認を行う。
そして2つ目がマスター登録。
魔道具には一般的に使われる物でも、一部例外を除いたほとんどの物はマスター登録をする。
これには市販もされている魔道具の「防犯石」と呼ばれる物が必要で、魔障石が魔素の保存用に作られたように、防犯石は魔石を改良して魔素を記録・判別するように作られている。
魔素が一切含まれていない状態の防犯石に、最初に魔素を送り込んだ物がマスターとなるのだ。
以降その防犯石は、最初に送り込んだ…つまり記録した魔素以外には反応しないようになっている。
一度魔道具に組み込んだ防犯石は取り外しも基本的にはマスター以外に出来ないのだが、これを作っている魔道具商会には防犯石から魔素を抜き取る道具があるらしい。
そうする事でマスター登録をリセット出来るようだ。
魔道具は通常その防犯石を組み込めるように窪みを作ってあって、それはこの黒刀・羅刹も同じであった。
まずは組み込む術式の構築をする。
術式の構築も魔素で作り出した回路のような魔法なので、イメージに影響を受ける事は既に確認している。
イメージするのは何者にも触れられない次元の裂け目。
一切の抵抗を許さず、一切の影響を受けない薄い膜。
そして、魔素の属性がどんな属性でも発動用の属性に変わるように。
そんなイメージを集中しながら思い描く。
そうして作り上げた術式を、防犯石が嵌め込まれる部分を起点に発動するように移す。
まずはこのまま起点部分に魔素を直接流し込んで一度発動してみる。
…見た目は変わらない。
黒光りする妖しくも綺麗な刀身のままである。
試しに足元に落ちていた石に、刃の部分を当ててみる。
……おお。
わかってた事だけどこれは凄まじい切れ味だ。
石が何の抵抗もせずに刀身を素通りさせてしまった。
術式は問題なく発動している。
そして次にマスター登録をする為に防犯石を、刀の持ち手部分である柄に作られた窪みに嵌め込む。
防犯石と術式を紐付けして、魔素を流してマスター登録すれば完成だ。
「それ…凄いわね…どんな術式を組み込んだの?」
驚愕の顔をしながら師匠が問いかける。
「次元を裂いて、そのまま固定させる術式ですよ。発動させれば刀身部分は俺にも壊せないですし、ちょっと壊したり防げる存在が俺にはイメージ出来ません。師匠のエクスカリバーで試してみますか?」
ぶっちゃけ自信がある。
師匠のエクスカリバーにどんな術式が組み込まれてるのかわからないが、俺の術式を組み込んだ黒刀・羅刹なら負けないであろう。
「ん〜…やめておくわ。負けるとは思いたくないけれど、どちらの結果にせよ折角高価な素材で丹誠込めて作った武器を、私のにしろ黒刀・羅刹にしろ壊れちゃったら勿体ないじゃない?」
まぁ確かにその通りだと俺も納得する。
ていうか500万ファジーはする魔障石をぽんっと弟子にプレゼントするような人が高価な素材というなんて…これどれだけの価値があるんだろうか?
…怖いから聞くのをやめよう。
世の中知らなくてもいい事なんていっぱいあるよね?
「ふふ…ちなみにその刀の素材である黒結晶は、その重さでおよそ7000万ファジーかしらね?」
師匠が悪い笑みを見せながら見透かしたように価値を伝えてくる。
この人なんでこんなに勘が鋭いんだろう。
絶対俺が価値を聞くのが怖いと思った事がわかってて伝えてるよな?
「更に言うなら君が組み込んだ術式の価値も含めると、私にも手が出ない国宝級の価値があると思うわよ?」
え?
……国宝級?
8歳の子供にそんな物持たせちゃってもいいのだろうか?
ああでも防犯石は無理矢理外せば術式が壊れるように魔素を吸い取るんだったな。
「俺以外に使えないならそこまでの価値は流石に無いんじゃないですか?」
思った事をそのまま言う。
「魔道具商会なら魔素を抜いてマスター登録を解除出来る事は知ってる?」
「そりゃまぁ知ってますけど」
「じゃあ魔道具のリサイクルショップがある事は知ってる?」
「いや、それは知らな………まさか…マスター登録を解除してそのまま使える方法があるんですか?」
「そう言う事。基本的にその魔道具の情報は国の機密情報で魔道具商会が独占する事にはなってるんだけど、その情報を知ってる者達の中にも当然良からぬ事を考える人間もいるわけで…犯罪組織の一部なんかもマスター登録を解除出来るらしいわよ?」
ええ〜…
という事は黒刀・羅刹が国宝級の価値だと知れれば、俺は犯罪組織に狙われる可能性もあるって事だよな?
いやまあ…それはそれでいいのかもしれないな。
面倒ではあるけれど、弱者を虐げる者達が自分から寄って来てくれるわけだから探す手間が省ける。
黒刀・羅刹の価値は広まらないように隠すけどね。
だって面倒じゃん?
俺が大丈夫だったとしても、俺の周りが大丈夫かは未知数だからな。
例えば家族を人質に取られたりしたならば俺は黒刀・羅刹を差し出すだろうし。
「なんにせよ、私の弟子は強くならなきゃ自分自身が困ると思うんだよ。サーシャの件も含めて気を付けなよ?」
サーシャという神様に関しては別にしても、500万ファジー相当の魔障石に、7000万ファジー相当の素材を使った黒刀・羅刹という火種を持ち込んだ人物が何を言うんだろうか。
なんにせよ本当に気を付けよう。
「さて…転移魔法は見れてないけど黒刀・羅刹に組み込んでる術式から見て、私の弟子は転移魔法も問題無く使えるようになってる事がわかったし、そろそろ本部に戻りましょうかね」
師匠はやっと仕事をする気になったのか、お帰りの宣言をする。
「じゃあ3日後にまた会いましょうか。服の方はその時に渡すわね」
「わかりました」
「じゃあまたね」
最後に「ああ〜仕事したくない…」と呟きながら師匠は本部に戻る為、屋敷の出口に歩いていった。
やっぱダメ師匠なのね。
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