第20話 地獄の遠征に行く・6
R15作品です。
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ナイフで循環術式の実験を再開して1時間ほどが経った。
もうそろそろ夕御飯に呼ばれるかもしれないな。
そう思いながら俺は術式を組み込んだナイフと、普通のナイフを切り合わせてみる。普通のナイフが豆腐のようにするっと切り込まれる。
これ切れ味は最高に高いな。包丁とかに組み込んで販売したら物凄い人気が出そうだ。
お次は魔法耐性だな……何をぶつけよう?
やっぱ金属なわけだし、熱して溶かすみたいなイメージで火力を上げた火の球を近付けて当ててみようか。
火の球を出して、俺は火力が上がるイメージをする。火の球が圧縮されて大きさはコンパクトになりながらも、圧倒的な火力を内包し、太陽を小さくしたような火の球が出来上がる。
おぉふ……イメージの影響ホント凄いな。
出来た火の球をナイフに当ててみる。
お? おお? ナイフが溶けてない。これは成功したと思う。
俺が試した循環術式は簡単に言うなら「剣の刀身部分の表面を、薄く鋭利な形状に次元をズラした鞘で覆ってそのまま固定化する事」である。
まぁ試し始めた時は剣の刀身が次元に飲まれて消え去ったり、刀身が見えなくなるなどの失敗もあったのだが。試行錯誤して循環術式は完成した。
この循環術式ならそんじょそこらの物理・魔法では傷一つ入れられないだろう。俺自身も転移魔法を使わないと傷一つ入れられないと思う。
これなら団長様のエクスカリバーにも対抗出来そうだな。その確認の為に俺は別の魔法をナイフにぶつける事にする。
「限定解除!」
周囲から魔素がごっそり消える。
そして作り出した魔闘衣をナイフの形状に凝縮。魔闘衣と循環術式を組み込んだナイフを切り合わせる。
キィィィンッ
……これはビックリ。魔闘衣で作ったナイフまでバッサリ切られちゃったよ。前世での二次元文化は偉大だな……こんな超絶めちゃ強の能力を思い付くんだから。
これで実験は終了かな。
循環術式は完成したので循環術式の機能をオフにする。この循環術式は魔素を流さなければ発動しないのだ。
限定解除で身体に受けたダメージは緊急時と違って微々たるものだが、一応しっかり治癒魔法を使っておこう。
「ハヤトちゃ〜ん、ご飯よ〜」
ちょうど実験が終わった頃にメニルお母様から夕ご飯のお知らせがされた。俺は家の中に入ってメニルお母様とミレニーの3人で夕ご飯を食べる。
クラガお父様は俺が魔法騎士団で団長様と模擬戦をした日から帰りが遅くなるようになった。おそらく俺の代わりに俺が地獄の遠征に行く為の色々な雑事が通常の仕事に加えられたのだろう。
ごめんねクラガお父様。でも文句なら団長様に言ってね?
俺達が夕御飯を食べ終わってしばらくすると、クラガお父様が帰ってくる。それで一人でクラガお父様はご飯なのだ。
ここ何日かはそんな感じであり、クラガお父様の目には寂しさが見て取れる。
家族団欒の時間が仕事で減って、家庭内にヒビが入る……前世のサラリーマンの生活みたいなイメージだな。
少し可哀想だと思った俺は、食事中のクラガお父様と話す為に席に着く。
「お仕事お疲れ様でしたクラガお父様」
「ああ、ありがとうハヤト」
本当に疲れてそうな表情をしているな。そんなに俺に関する雑事が多いのだろうか?
そんな事を考えているとクラガお父様が口を開く。
「ハヤト、お前は異性に興味はあるか? 流石にまだ無いかな?」
異性に興味? ありますとも。生まれながらにありますとも。
赤ちゃんの頃のご飯の時間にはテンション上がりまくりだったくらいにはありますとも。
「それなりにあります」
少し自重してこう答えておいた。8歳の子供が異性にがっついてたらちょっと気持ち悪いと思うんだよね。
「そうか……実はハヤトに縁談の話が複数持ちかけられている。まだ早過ぎると断ってはいるのだがな……」
縁談……だと!? 縁談って結婚する為にするあれだよな?
お見合いの前段階だよな?
「中には10も年の離れた相手も居るのだが、一人ハヤトと年の近い子がいる。ハヤトさえ良ければ、その子とお友達からでも始めていいんじゃないかと思っているんだ」
ああ、なるほど。俺友達居ないもんな。俺の友達らしき者を見た事も聞いた事もないクラガお父様は心配しているのかもしれない。
だって俺中身は元高校生だぜ? この世界で生きて来たのも合わせたら25歳だぜ? 同じ年代の子供と話し合うわけないじゃん。
これは決して俺のコミュ障が原因じゃないからな? 寂しくなんてないからな?
…………ホントだよ?
なので俺はこう答える。
「お友達から始めてみたいです」
え? 言ってる事とやってる事が違うって?
こんなチャンス逃したら俺はまた彼女居ない歴イコール年齢で、息子の出番が無いままにまた生を終わらせる可能性だってあるんだぞ?
俺のコミュ障を舐めるなよ? 生涯ぼっちとか成し遂げる事だって夢じゃないからな?
「わかった、話は受けておく。まぁ地獄の遠征が終わってからになるがな」
これは生きて絶対帰らねば。俺、この遠征が終わったら婚約者候補と会うんだ。結婚するわけじゃないし、死亡フラグにはならないだろう。
……ならないよな?
なんにせよ俺に初めてのお友達が出来るチャンスである。しかも縁談って事は女の子。
可愛い子だといいなあ。
そんな事を考えながらその日は夜が更ける。
そして翌日。
循環術式を組み込む刀が届く予定の日である。俺は朝から家の中で刀が届くのを待ち続けるのだった。
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