第16話 地獄の遠征に行く・2
R15作品です。
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地獄の遠征の詳細説明から翌日。
俺は庭で循環術式の構築に四苦八苦していた。
まだ武器自体は届いていないのだが、届く前に構想だけでも終わらせておこうと思って、庭で手頃な安物のナイフで試していたのだ。
目の前には鋭利な断面図を見せて壊れたナイフや、魔法によって大破したナイフの残骸達が転がっている。
俺が武器に求めたい性能は、魔法と物理の両方に対応可能で燃費がいい万能性の高い武器。そんな便利な武器にする為に、まず真っ先に求められるのが強度だと思う。
しかしこれがとても難しい。属性相性を抜きに考えても、魔法障壁ってのは強度を超えた威力の魔法に破られる。
勿論注いだ魔素が多ければそれだけ強度は上がるのだが、しかしそれでは燃費が悪過ぎる。
物理障壁に関しても似た事が言えるが、更に魔法は面の攻撃が多いのに対して、物理は一点に威力が集中しやすい為に魔法障壁よりも燃費が悪い。
まぁそもそも魔法使いの多くは近接戦闘になる事を避けるような戦法を好むらしいので、魔法障壁と違って使用頻度は少ないはずなのだけれど。
しかし団長様は接近戦を選んでいた。団長様の魔道具と思われるエクスカリバー。
あれは物理と魔法どちらも兼ね備えた上で、威力を一点に集中させるのにとても適した形状なんだと思う。
それにエクスカリバーのあの光量。単純な魔力値だけであそこまではならないはずなのだから、何かしら特別な術式が組み込んであるのだろう。
魔力値は術式に注ぐ魔素量の事で、注げる魔力値は自分の保有する魔素限界におおよそ依存する。
エクスカリバーがどれだけの魔素を込めて発動する剣なのかは知らないが、団長様は俺の倍ほどの魔力値を持つらしいので魔素タンクも俺の倍はあるはず。
つまり。もし模擬戦で限定解除を発動して魔力値を底上げし、魔闘衣を発動してなかった場合。
俺が魔法・物理障壁の展開を選んでいたならば確実に防げなかっただろう。もしもあれが命を賭けた実戦で、俺があそこで選択を間違えていたならば死ぬ可能性があったというわけだ。
そう簡単に死ぬつもりが無い俺は考えた。それはもう必死に考えた。
考え始めたのは昨日の夜だけども。
俺がエクスカリバーに対抗出来るのは現時点で限定解除のみで、あれは負担の大きい奥の手である。限定解除を使うとぼろぼろになって、その後はしばらく俺は使い物にならない。
魔物の領域でそれは自殺行為だろう。俺に今必要なのはお手軽に使えて、攻守共に優れる「何か」なのである。
そこで活路が見えてくるのが循環術式を組み込んだ魔道具なのだ。
「ハヤトにぃお昼ご飯出来たからママが呼んでるよ〜?」
俺がナイフを眺めながら考え事をしているとミレニーが呼びに来た。
「わかった、今行くよ」
俺がそう答えると、ミレニーは俺が実験してて壊したナイフ達を見つける。
「ハヤトにぃなんでこんなにナイフさん達壊れちゃうの?」
ん? そりゃ硬さが足りないんだろうけど、何て説明しよう?
「硬くないからだよ」
俺は何の捻りもなくそのまま言った。
それを聞いたミレニーが首を傾げながら答える。
「どうして硬くないと壊れちゃうの?」
そりゃまぁ物理法則とかで……いやここは簡単に言おう。物理法則とか色々よく覚えてないなんて事はないけどな。
……ホントだよ?
「ミレニーは転んで膝を擦りむいたりしたら痛いかい?」
「うん」
「それは擦りむいた膝が柔らかくて、地面が硬かったから痛くなるんだよ」
「そうなんだぁ〜」
ミレニーは納得した顔をしながらウンウン頷いている。
「じゃあお膝さんを擦りむかないように、転ばなければ安心だね」
「そうだね〜」
なんか話変わってないか? まぁミレニーはニコニコしてるしこれでいいか。
…………ん? 転ばなければ安心?
それはつまり、当たらなければどんな攻撃もどうと言う事は無いってやつだよな。
でも当たらないなんて事は難しい。そりゃそうだよなって話なんだけど……なんか引っ掛かる。なんだ?
「ハヤトちゃ〜んミレニーちゃ〜ん、ご飯よ〜」
屋敷の中からメニルお母様の声が聴こえてきた。
「ハヤトにぃ行こ?」
「あぁ」
ミレニーに引っ張られて俺とミレニーは屋敷の中に入る。お昼ご飯をミレニーと俺とメニルお母様で食べながら、俺は何が引っ掛かるのか考えていた。
……あぁそうか。この世界は物理法則なんて物とは別に、魔法がある。
俺は魔法がありながらも物理法則に当てはめて考えていた。
そうだよ。この世界は魔法があるんだよ。
さっきまで俺はどうすれば強度を上げられるのか、どうすれば斬れ味を上げられるのか。
そんな事ばかり考えていた。だから視点を変えよう。
どうすれば確実に防げるか、どうすれば確実な攻撃を与えられるか。
視点を変えた俺は前世の知識を思い出していく。思い出す内容は、ゲームや漫画にアニメ。
理想はどんな攻撃も防げて、どんな防御も破壊する……そんな物を思い出していく。
そして見付けた。前世の記憶の中から最高の攻撃方法と防御方法を。
それは時空を切り裂いた結界と攻撃。これを魔法で再現可能ならば……この世界なら転移魔法が一番近いか?
転移魔法の原理は確か……高魔力を注ぎ込んだ道を作り出し、その入り口と出口を固定した術式を作る。そこまでは俺も知っている。
しかし、肝心の術式内容が俺には想像が出来てないのだ。なにせ転移なんて魔法のなかった前世では出来なかったのだから。
しかしこの世界には転移があり、団長様は転移が使えるよな。
あの人もう俺の師匠らしいし、会えるかわからないけど転移魔法について聞きに行ってみるか……
こうして俺はお昼ご飯を食べ終わった後、師匠である団長様が居るであろう魔法騎士団本部に向かう事にした。
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