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プロローグ

R15作品です。


Twitter始めました!

@akira_kouno0918


面白い!先が気になる!と思って下さる方は良ければブックマーク・感想・レビュー・評価よろしくお願いします。

「よし……完成!」


 俺は橘一輝13歳、中1だ。




 今何をしていたかというと現在世界的に大人気MMOゲームであるジェネシスファンタジアオンライン・通称GFOで魔法構築を終わらせたところだ。




 ピロリーン


『メッセージを受信しました』




「お?」


 どうやらGFOでメッセージが届いた。




「えっと……」


『来月にクラン初オフ会を予定しています。イッキーさんも良ければ参加しませんか?』




 イッキーとは俺のゲーム内ネームである。ていうかオフ会?




 GFOは魔法と創造力の世界。


 魔法構築・魔物との戦闘・クエスト・競売を利用した対人アイテムトレード・ボスレイド(集団ボス戦)・対人戦・建築や農業、果ては結婚制度まであり、他にも色々と自由度のかなり高いゲームである。




 その中でも俺は魔法構築に関しては少し……いや、かなり有名人である。




 そして俺が所属するクランはアットホームな空気が強く、初心者も上級者も仲のいい素晴らしいクランだ。




「ついにこのクランもオフ会か」




 さてどうしようか。自慢じゃないが俺はコミュニケーション能力が低い。


 しかし俺は有名人な事もあり、このクランの顔役の一人でもある。




「……しょうがないなぁ」




『了解しました! 参加させていただきます!』


 ピロリーン


『メッセージを送信しました』






 ……今思えば俺の人生はここから狂い出した。






 翌月オフ会に参加した俺は目を疑った。


 オフ会のメンバーの一人に、話した事は無いが同じ学校の同級生が居たのだ。




「え? いつきくん?」


「お? 知り合いですか?」


「え……まぁ同級生なんですよ」


「ほうほう!いつきという名前から察するに……もしやイッキーさんじゃないですかね?」




 俺の正体が秒でバレた……


 いやまぁこんなわかりやすい名前を文字っただけのゲームネームならバレるよな。


 その日のオフ会での俺は終始コミュ障を発揮したまま終わりを告げた。




 問題はここからである。


 まぁコミュ障も問題ではあるけれど。




 俺はGFOで有名人である。


 そりゃもう物凄い有名人である。




 その有名人の正体は俺だという事が、学校中のGFOプレイヤー達に瞬く間に広がってしまったのだ。






 GFOは大人気ゲームであり、当然プレイヤーの中にはこういう人種達も居るわけで……




「よういつき〜。お前イッキーなんだって?」


「ちょっと俺ら金に困っててさぁ。貸してくんね? もちろん返すアテはねぇけど!」


「「ぎゃっははは」」




 学校では有名な不良達に目を付けられてしまった。




「おっ、お金なんて……ないよ……」


「そんなのは関係ねぇよ」


「そうそう」


「お前イッキーなんだろ? ならGFOで魔法構築して貸し出しすればかなり稼げんだろ」


RMT(リアルマネートレード) くらい知ってるよな?」




 なるほど……ゲーム内通貨やアイテムをRMTリアルマネートレードで現金にしろって事か……いや無理だろ。


 確かに俺ならネームバリューもあるし、そこそこのお金を作れるだろうが、それをやったら俺のアカウントが消去されてしまう可能性が高い。




「いや無理だって! そんな事したら俺のアカウントが……」


 ゴッッ




 痛っ……


 鼻を擦ったら手が赤黒く染まっていた。どうやら俺は殴られたらしい。




「いいからさぁ。やってこいや……なぁ? これ以上痛い目を見たくねぇだろ?」


「わかってると思うけどチクッたらこんなんじゃ済まさねぇからな」


「とりあえず来週に2万な」


「……わっ、わかっ……た……」






 こうして俺の地獄が始まった。


 しばらくするとGFO内で俺がRMTをしているという噂が流れ始める。


 当然俺みたいな有名人がRMTをやってれば競売に付きっ切りの商売人プレイヤーなどが不自然な金の流れを何度も目撃するだろうし、RMTをする取り引き相手達もGFOプレイヤーであるから当然そのうちそこからも情報は漏れる。




 噂が広がれば通報が集まるのが自明の理である。


 俺のアカウントは運営に消去された。




「そりゃそうだよな…でもまぁこれでやっと……」




 しかし一度味を占めた不良達が俺みたいな都合のいい金ヅルを手放す事はなく、今までとは違いGFOを度外視して、より直接的に金をせしめるようになっただけである。




 俺は親に適当な理由を付けてお金を貰ったり、親の財布からお金を隠れてくすねたりもした。




 しかしRMTをしていた頃よりも出せるお金は少なくなって、暴力と陰湿な嫌がらせが徐々に増えていった。




 そんな生活も高校に入るまでの我慢だと思っていたのだが、俺の人生はとことんハードモードらしい。




 たまたま俺をいじめていた不良達の一人が俺と同じ高校に入学して、その不良は新しくその高校で別な不良達と仲良くなったのである。




 そして人が多少変わっただけの変わらない生活……いや、高校生になった事で暴力のレベルがワンランク高くなり、中学生の頃より凄惨な学校生活となった。




(憎い憎い憎い憎い悔しい悔しい殺したいほどに憎い……でも殺すのは恐い……殺した後の俺の人生とか……親にも迷惑かけてしまう……それも今更か……ごめん母さん……ごめん父さん……)




 俺は限界が来ていた。


 ほどなくして不登校になり引きこもりとなった俺は、ゲームで培ったプライドの高さ故に親にも何も言えずに居た。



(………………死のう……)




 憎悪と恐怖と後悔と自分の不甲斐なさに対する悔しさと、親に対する罪悪感と将来への不安とが飽和した結果である。




 こうして俺は17歳の夏に自ら命を絶った。






 ………………絶った……






 …………絶ったわけだが……これはなんだ?




 目の前にはドラム式洗濯機のような機械と、そこに入って回る人間と、その機械を操ってるであろう真っ白な翼の生えた美少女が見える。




「あれ〜? あなた意識があるみたいですね〜」


「あの、すいません……ここは何処だとか、あなたは誰ですかとか、色々聞きたい事もあるんですが……その機械ってなんですか……?」




「ん〜? この機械はですね〜人の魂をお洗濯して真っ白にする機械なんですよ〜」




 お洗濯……だと……!?


 俺も今からあれに入るのか!?!?




「あぁ先ずは自己紹介させていただきますね! 私は人間の言うところの女神様です! えっへん」


「は……はぁ……」


「それでですね〜えぇと……」


(バサバサゴソゴソ)


 猟奇的な洗濯機? の横に積み重なる書類の山から何かを探しているようだ。




「あったあった……ふむふむ、橘一輝さんですね! あなたは自殺……おぉっふ……随分と酷い青春でしたね〜」


「あ〜まぁ、ですね……」




(ふむふむ……本当に酷い人生ですね……あそこで自殺しなかった場合の未来も……これはなかなか凄惨な人生予定ですね〜……どうしましょうか……おや? これは……なるほど……だから意識が……)






 何やら自称女神様は書類をじーっと眺めながら考え込んでいるが、俺はどうなってしまうんだろうか。


 あの猟奇的な洗濯機? の中に入れられるのは勘弁である。






「……決めました! 一輝さん! あなたさえ良ければその記憶を持ったまま転生しませんか?」


「はっ?」


「本来ならばこの女神様自慢の全自動洗濯機で、魂の中にある記憶やら何やらぜ〜んぶ綺麗さっぱり落としてから、元の世界に転生させるのですが……一輝さんにピッタリであろう世界があります!」


「ええっと……つまり俺はその洗濯機に入らずにそのまま新たな人生を始められるって事ですか?」


「はい! ただし元の世界では私のような存在などの情報を流してはいけない決まりがあるので、今までとは全く違う別な世界での転生となりますが!」




 つまり異世界転生か……しかし俺が俺のままで新たな人生をやり直せるのは魅力的である。


 自殺をしてしまったが本当に死にたかったわけではないし、もっと色々やりたかったし、恋もしたかったし…我が息子の出番は当然なかったわけだし……




 しかし先ずはどんな世界か聞いてからだ。


 ハードモード安定のクソゲーのような世界なら嫌だし。




「ちなみに、俺がやり直せる世界ってどんな世界なんですか?」


「一言で言うなら一輝さんがやっていらっしゃったゲームにあるGFOのような世界で……」


「よし転生します!!」


「まっ、迷わないんですね……あはは」




 GFOの世界!?


 キタコレ!!


 やっと俺にも運が向いて来たんじゃないかな?

 おっと……これだけはお願いしなければ。




「すいません! 出来れば生まれ変わるなら男のままがいいのですが……それは大丈夫ですか?」


「問題ありません」




 女神様はニコッて微笑みながら答えてくれた。




「実はここって女神以外は心の声もダダ漏れだったりするんですよね〜」




 なん……だと……!?


 さっき俺は息子の事を……




「はい! 考えてましたね!」


「ぐぼぁっ……じゃ……あの……転生お願いします……」




 恥ずかしいぃぃぃ!!






「わかりました! それでは橘一輝さん。あなたの新たな人生に幸多からん事を願います」




 突然意識が朦朧として来た……




「……頑張ってください」




 最後にそう聴こえたような気がして、俺は意識を手放した。


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