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【食欲】

 

 林檎は大鍋に大量に入れて焦げ付かないようにコトコトと弱火で煮れば、徐々に甘露煮になる。前世で見た料理本等の場合は水も入れていたような気がするけど、母のレシピは違った。

 水ではなく、お酒だ。確か秘蔵の梅酒やワインだったと思う。

 梅酒はこの世界で見たことが無い。

 そもそも梅の花を見たことがないし、当然梅の木も見たことがない。



「赤ワインで煮るか…」


「はい?」



 しまった。

 またもケイン様がいるのを忘れていた!



「何々、思案中?お店で出すメニューかな~?」



 お店で出す事を考えていなかったけれど、それに近い事柄です。

 とは言えず。何せ相手はお貴族様ですから!



「失礼しました。えっと、似たようなものです」



 林檎、私に林檎を!

 なんて言う色気の無い事柄を考えていたのですよ、とも言えない。


 好奇心旺盛な顔付きで、「美味しいもの?良かったら食べてみたいな」と笑いながらさり気なく食べたいアピール。

 うぬぬぬ…その顔付き、流石元攻略対象者。

 ヤバい、目の前にイケメンがおる。


 ふ~…落ち着きなさい、レナ。

 そう、考えるのよ。

 今は前世では無いの、この世界には無いモノがあるのよ。



「凍らすことが出来ない…」



 ガッデム!ナンテコッタイ!

 そう、凍らす技術が無いってこと。

 魔法ならあるけれど、そんな希少な相手は庶民には滅多に無い。

 そして、かき氷には氷が無いと、いや、凍らす技術が無いと出来ない。



「凍らす?出来るけど?」


「は、い?」



 今、私の横から天の声が聞こえたような気が!


「水と風の魔力を持っている人がいれば出来るよ?」


「なんですと!」



 そう言えば乙女ゲームの説明で、複合魔法とか何とかで氷の魔法って出来るとか何とか。お陰で乙女ゲームのヒロインちゃんが氷魔法属性を持っているものだかと、好奇心旺盛な高位貴族達の接触が始まる、だったかな。


 …うろ覚えだけど。

 異世界転生して自分の事柄に振り回されてそれどころでは無かったから、乙女ゲームの最初の設定とかよく覚えていない。名前さえ出ないモブで、気が付いたら貴族の変態の妾の身分。

 唯一有り難かったのは、正式設定にも無かったかも知れない白い結婚状態だったこと。…最も、相手は幼児の私にも手を出して来そうになったヤバい奴だったわけだけど。



「時間は掛かるだろうけど僕は風の魔力があるし、オルフリオは水の魔力がある。僕等二人が居れば出来るね」


「やった!これで出来る!」



 おっしゃ、解決ー!!

 美味しい料理の為ならば元攻略対象者だろうが酷使しちゃう!


 右手で握り拳を作って…あ、いや、人前だからその場でやった!と言うだけで留めておきます。いや~ヤバい、これ以上恥ずかしい過去は増やしたくは無いのです。

 今十分作っている気がしないでもないけど。



「所で、何故急に凍らすことになっているの?」



 …すいません、その理由は私の食い意地が理由です。前世でのかき氷…シャーベットな気がしないでもないけど、食べたいのですよ、冷たい氷菓子が。



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