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2/22

【没落】

 

 拉致されてから数年経過してしまって。


 私は逃げ出す前にゲシュウに捕まってしまったのだから仕方ないと腹を括るような性分では無いため、徹底抗戦をして見事に勝ち取った。


 何をしたかと言うと、ロドリゲス家の没落を狙った。




 ふは、ふははは。


 ま、偶然なのですけどね。


 私自身には大した力も無いただの小娘ですし。




 親父が『アレ』で『コレ』なので、残念ながら我が家の三姉妹は全員学校も行ったことが無い。多分末っ子のオルブロンも行かせて貰えていないだろう。


 とすると、四姉妹全員になる。


 そのために残念ながら学が無い。



 かわりと言ってはなんだけど、アレイ領の領民が皆同情的で色々と教えて貰った。


 文字とか数字とか計算とか地理とか、歴史とか生活のアレコレとか。本当に細かな事を色々と。恐らく同情心いがいにも、今後のことを考えて知恵を付けて貰おうって魂胆もあったのでは無いかと思っている。その証拠に、幼いながらも何故か【話術】とかコミュニケーション能力を極端に上げられた気がする。



 つまり何が言いたいのかと言うと…



 媚びた!


 徹底的に媚びた!


 習った話術フル活動させた!



 無論ロドリゲス家のゲシュウ相手ではなく、この小屋…妾を二人も住まわせて居る割にはどうみても小屋だろ?しかもオンボロの。と言ったほうがいいぐらいにお粗末な住まいなのだけど、そんな場所に心配そうに様子を見に来てくれる、優しいロドリゲス領の地域の住民達!ご近所様達!及びロドリゲス家に仕える家臣達に!



 何てことはない。


 十代前半のお子様な幼女。


 つまり私を捉え、ロリコン変態ゲシュウが不在の内に様子を見に来る侍女。そして使用人達の中から特に良心の呵責を持っていそうな人、もしくは少しでも心を痛めていそうな近隣の人に狙いをつけ、数年に渡ってじっくりコトコト。



 鍋で時間を掛けて煮詰めるようにし、言葉の端々からロドリゲス家のというか、長男ゲシュウ個人の不正を把握。


 時間が掛かるのは承知で何度も身の危険を伴ったけれど、と言うか危険が自身の【貞操】という意味での危険だったからまぁ、アレだ。うん。


 ゲシュウ以外は未成年って事で誰もソッチ方面では手を出して来なかったし、一応妾と言う身分もあるから…ま、まぁ、貞操は守ったけどね?残念ながら姉であるデュシー姉さんは既に奪われた後でしたが。



 くそぅ…



 余計に私怨が籠もってしまったのだけど。


 …デュシー姉さんが産んだ一人娘、ティナちゃん(女の子)がゲシュウに似ず、とても可愛いので許そう。

 あ、やっぱ許すのは無しの方向で。


 だって姉である乙女の柔肌を強引に…以下略。


 八つ裂きにする方向で。





 そんなワケで見事に不正を暴き、尚且つ自身のフリにならない様に、更に実家のアレイ家の現状を王家に報告。



 理由は私達姉妹の現状。


 つまり、違法な『妾』状態のこと。


 この国では『人身売買』は違法であると、確りと法律で定められている。


 無論コレにはカラクリがあり、『売られる』者が同意されていれば別なのだが、親兄弟が借金のカタに本人の同意が無い状態で『売られる』のは違法とされている。



 つまり、ゲシュウも私の父であるカルロスも法律違反を犯している。



 更には未成年である子供を、当人の同意も無く『妾』にする場合は【白い結婚】が義務付けられている。


 はい、これも違法状態であります。


 恐らく父であるカルロスが私達姉妹に【学】を学ばせなかったのは、変に知恵を付けて「違法だ!」と騒がないようにするためだったのだろうね。


 残念ながら知恵付いちゃいましたけどね?





 さて、と。


 諸々と違法行為の書状を書き上げる。


 ちなみに場所は当然姉と住むあばら家では無い。


 うっかり見付かってしまう恐れがあるし、何より落ち着いて書状が書くことが出来無い。


 それならばと、心配してくれた心優しい商業ギルドのお姉様(勿論話術フル活動)方の温情により、ギルドの一室を借りて書面を書き上げた。



 だけどさ。


 ただの妾状態の私の訴え等誰が聞き届けると言うのだろう?


 更には何処に出せば良いのよ…



 諸々手詰まり状態じゃないのさー!



 どうしたものかと思っても妙案が浮かばず。ならばと、商業ギルドのツテを頼って王都に居るはずのジーニアス兄さんに連絡を取るために手紙を送った。






 …ら。




 ……とても驚いた。



 何がって『ガルニエ伯爵』様になっていたからーっ!


 何故!?何がどうなってそうなっていたの!?


 えええ?血縁関係があったって!?


 何でも母親の血筋にガルニエ伯爵家の血が入っていたそうで。王家からの打診、更にはこれまでの功績を認めて騎士団に所属していたジーニアス兄さんをガルニエ家当主として認め、伯爵様になったのだとか。


 あれ、えっと、血筋ならディラン兄さんとかも当主になるのでは?とか思っちゃいましたけど、この当主になるにはカラクリが存在しているみたいで。『功績』を得ないと王家から認められないと…。


 それってもしかして、長男カイデン対策?


 いや、どうなのだろう。




 で、まぁ。


 ソコで気がついちゃったのですよ、私。


 とっても遅れてだけど。



 そう言えば乙女ゲームの設定で、ジーニアス兄さんってば伯爵家当主になるのでした…




 実生活色々ヤルこと多すぎてすっかり忘れていたよ!


 と言うか己の貞操という身を守らねばならなくて脳内から忘れ去っていたよ!


 ナンテコッタイ。





 そして。


 兄さん、ジーニアス兄さん。


 届いたお手紙、無茶苦茶ヨレヨレなのですけど。


 もしかして泣きながら書いた?最後のジーニアス兄さんの名前の筆跡の所、涙零しまくったのか滲んでいますが、文字ぃ…。


 そう言えばジーニアス兄さん、小さい時の記憶を辿ると泣き上戸だったような気が…。


 何度も実家に居たときに見た気がする。


 すっかり忘れていたけどさ。



 それにしても伯爵家か。


 しかも兄さん、第二王子の『近衛騎士』ってスゴすぎ………


 エリートじゃないですか!


 見事な大出世!




 ん?と言うことは…使えますよね、コレって。





 そんなワケでサクっとロドリゲス家の不正を、王家、直接的にはこの国の第二王子が後ろ盾になってジーニアス兄さん。今はガルニエ伯爵が暴き。


 ついでにデュシー姉さんと私、レッティーナの二人もの実の娘を借金のカタに引き渡した実父であるカルロスを王家は激しく問いただし。


 ついでに出るわ、デルワ。


 ボロボロとカルロスのヤラカシタ、アレイ家乗っ取りも世間様に広がり…



 なんと我が父親であるカルロス、王家から認識されていない偽領主だったらしい。


 本来ならアレイ領で実権を握っているのは、私の実の母モーリー。


 なのに、なのーにー!


 カルロスは許可なく勝手にアレイ領の一部の土地を換金。隣領であるロドリゲス家に売り、更にはカルロスの実家の借金を勝手に此方側、アレイ家の借金として帳簿を勝手に改竄。


 つまり、本来ならアレイ家に借金は無かったのだ。




 オイ!


 それって!


 売られた私達姉妹は一体何のためにっ!!!






 気がついたら父カルロスは領地から居なくなっていた。


 家にあった一部の荷物が無くなっていたので、国外逃亡したのでは無いかと言うのが世間様では流れている。



 法律で禁止されていることをしまくった罰はカナリ重いらしいからね。


 生涯強制労働か、首チョンらしいですわお父様。


 あ、今は元か。


 現在は正式に母モーリーとは離縁となっている。



 更には逃げ出したことに憤怒状態らしい国王様が、国外も込みで指名手配指示を下したそうだ。しかも賞金まで出して。


 賞金首稼ぎが大喜びの値段らしいので、早々に観念して欲しい。


 なんなら私の前に来てもいいのよ?


 今までの分を念入りに籠めて、顎に盛大に連打パンチを打ち込んで、その後確りと賞金ゲットさせて頂きますので。






 さて、もう一つの心配の種なのですが。


 父親のコピー状態だった、長男カイデンのこと。





 この度吟遊詩人として旅立ってしまいました。





 最初聞いた時「はい?何の冗談?」と、我が耳を疑いましたよ?


 長男は諸々と精神に変調をきたしてしまったようで、ある朝「吟遊詩人になる!」と、下手くそな縦笛を手に握り締めて旅立ってしまったらしい。


 いや、あんた跡継ぎじゃなかったっけ?


 そんなワケで、現在アレイ家の当主は母であるモーリー。そしてその手伝いとして次男のディラン兄さんが次期当主として学び始めているらしい…。


 嫌らしいけど。


 しかしディラン兄さん、次期当主って。


 もしかしてカイデン、何かやらかして王家に報告されて追い出されたのでは無いのだろうか?つい邪推してしまう。




 それにしても、何故そこで縦笛…。


 さらに何故吟遊詩人。


 チョイスおかしくない?そもそもカイデン、お前音痴だろ…。


 楽器も唯一奏でられたのが縦笛だっただけで、決して上手くは無かったと思うぞ?


 更には、詩…


 オルブロンに「変」って言われた言葉を詩にして歌ったりしないよね?


 もしウッカリ町で見掛けても、知らんふりしよう、そうしよう。




次の更新は3月3日の予定です。

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